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仙台や松山でも同性パートナーシップ証明制度導入を求める動き、徳島ではファミリーシップ証明にも制度拡大

2021年02月22日

 全国60超の自治体に拡大し、すでに人口カバー率が30%を超えている同性パートナーシップ証明制度ですが、この2月も、全国各地で動きが見られました。
 

 仙台市男女共同参画推進審議会は2月3日、市が策定する新たな「男女共同参画せんだいプラン」(21~25年度)の在り方に関する答申をまとめ、同性パートナーシップ証明制度の検討を盛り込むよう求めました。
 答申によると、新プランは基本目標に「あらゆる分野における女性の多様な力の発揮」など7項目を掲げ、新たに「男性による男女共同参画の推進」を据えて父親の子育て力支援などの取組み例を示したほか、LGBTQ支援策も重視しています。性の多様性に関する市民や企業、学校における理解促進や当事者の相談事業に取り組むことや、同性パートナーシップ証明制度の検討も求めました。制度創設を望む声は、パブリックコメント(意見公募)でも複数上がり、昨年10月、性的マイノリティに関する政策提言に取り組む市民団体による制度創設の陳情書も提出されています。
 審議会会長の高浦康有東北大大学院准教授は会合で「男性や性的少数者に着目するなど多様な主体に目を向けたプランになる。パートナーシップ制度は、市内の当事者の実情に合った形で実現できるよう、今後も議論を深める」と語りました。
 答申は3月19日に郡和子市長に提出され、市は年度内に新プランを策定する予定です。
 東北ではまだ青森県弘前市でしか認められていませんが、仙台で実現すれば、大きなはずみとなることが期待されます。


 愛媛県松山市では、LGBTQやその支援者の方たちが同性パートナーシップ証明制度の実現を目指す会「カラフル松山」を発足させました。月に1度の勉強会を開きながら、松山市での同制度の実現をめざして活動します。
 代表は、市内でバーを営む佐伯太一さん。3年前から交際している同性パートナーがいます。「一番心配なのは、彼氏が病気になったり事故に遭ったりしたとき。今のままでは赤の他人として、何も知らされない。それがさみしい」 
 物心ついた頃から同性に惹かれることを自覚していて、中学3年生の時にお母さんがゲイ雑誌を見つけたため、「実は男にしか興味ない」とカミングアウトしましたが、お母さんは車で家を飛び出して一晩帰らず、2週間ほど口をきいてくれなかったといいます。「大阪で働いていたとき、ニューハーフバーとかゲイバーに行ったことがあった」というお父さんが、「そういう人もいるよね」と寛容な態度で、お母さんとの仲を取り持ってくれたそうです。
 佐伯さんがパートナーの方と出会ったのは、自分のお店を開くために松山のゲイバーで修業していたときで、2018年2月頃からおつきあいをしているそうです。昨年1月、香川県三豊市で四国初の「パートナーシップ宣誓制度」が導入されたことを知り、「勇気づけられたし、彼氏とも『松山にも、できたらいいね』と話した」そうです。しかし、愛媛では制度導入に向けた話が聞こえてきませんでした。「声をあげる人がいなかったんだと思う。『あれば使いたい』と思っていた私も、誰かがやってくれると思っていた」
 昨年、知人に誘われてカラフル松山に参加することを決めました。「制度を利用したがっている人はたくさんいるよと示したかった」
「夫婦別姓がいい人や、結婚はしない人。いろんな家族の形がある。自分の性的指向に関わらず、誰でも使える制度の方が伸びしろを感じる」
「本当は結婚がしたい。できない以上、『ままごと』みたいでも制度で関係を認めてもらいたい。だから松山での制度導入は、とりあえずの目標。みんなで勉強しながら、できるところまでやりたい」

 
 徳島市では1日から、「徳島市パートナーシップ宣誓制度」を拡充し、同居の子どもも家族と認める「ファミリーシップ」の届け出など、新たに7項目を増やしました。自治体でのファミリーシップの導入は兵庫県明石市に次いで全国で2例目です。子どもが手術を受ける際の同意や入退院の手続きなどができるようになります。ほかにも、市営住宅の入居申込みや納税証明書の発行、市営墓地の使用・承継、救急搬送証明書の交付、被災証明書の交付などの行政サービスを利用できるようになったそうです。


 札幌市では16日、当事者支援や啓発活動に取り組む市民団体「にじいろスマイル」が、同性パートナーシップだけでなくカップルの子どもとの親子関係も証明する「ファミリーシップ証明制度」の導入を求めて市に要望書を提出しました。
 にじいろスマイルの田中純代表は「同性カップルだと、子どもが病院にかかる際にパートナーが連れて行けなかったり、幼稚園のお迎えが拒まれたりするケースがある。いろんな家族の形があることを知ってほしい」と語ります。
 今春、署名も提出する予定だそうです。

 
 同じ北海道の帯広市では、「帯広市に同性パートナーシップ制度をつくる会」(国見亮佑代表)が同性パートナーシップ認証制度の制定を求める要望書を市に提出しました(国見亮佑さんは「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告でもあります)
 2月19日、国見代表ら同会の6人が市役所を訪れ、田中敬二副市長に、賛同する389筆の署名とともに要望書を手渡しました。

 

 一方、同性パートナーシップ証明制度は自治体によって、カップルが2人とも同じ自治体に住んだり同居したりしていないと利用できない要件になっているところもあり、改善を求める声が上がってきています。 
 朝日新聞「パートナーシップ制度、実情とそぐわず 自治体で要件差」によると、福岡市に住む女性(仮にAさんとします)が昨秋、市に問い合わせたところ、申請できないと断られました。Aさんの同性パートナーが市外在住で、市の申請条件である「2人の市内在住もしくは転居予定」に該当しないことが理由です。お二人は、市が発行する宣誓書受領証(パートナーシップ証明書)を利用して金融機関の住宅ローンを共同で組み、市内の新居で同居することを検討していましたが、パートナーシップ宣誓ができず、計画がストップしたそうです。Aさんは「市外であろうが、パートナーに変わりないのに」と語ります。
 山口県で初めて制度を導入する予定の宇部市は申請要件をさらに絞り、「市内での同居もしくは同居予定」とすることを検討しています。市人権・男女共同参画推進課は「法律婚に準じた形で考えている。婚姻では住民票を一緒にすることが一般的だ」と説明しています。北九州市も同様の申請要件となっています。
 一方、大阪市や熊本市、宮崎市、福岡県古賀市などでは、カップルのうち1人が市内在住であれば申請できます。
 渋谷区と虹色ダイバーシティが実施している全国調査によると、最も制度利用者数が多い大阪市では、宣誓した272組の4分の1にあたる69組が、カップルの片方が市外に住んでいるそうです(1月20日時点)。市人権企画課は「親に同性との同居を知られたくないので、住所を一緒にしないカップルもいる。当事者の気持ちに寄り添って制度を考えた」としています。古賀市人権センターも「単身赴任などの事情はよくあること。多様な生き方を応援したいので、制限を設けていない」としています。

 LGBT支援法律家ネットワークの一員で、「レインボー山口」の事務局長である鈴木朋絵弁護士は、家族や職場にカミングアウトしていない方も多く、同居すると周囲に気づかれる可能性もあるため、つきあっていても一緒に暮らすのが難しいケースもある、特に人口の少ない地方は、うわさになったり不審がられたりするため、慎重な人が少なくないと指摘します。そもそも同じ地域で出会うことが難しく、別の地域でパートナーを見つける方もいます。
 鈴木弁護士は「双方が同じ市に住むという要件は利用者を制限している。使いやすいよう柔軟な制度設計をしてほしい」と訴えています。

 人口の少ない地域でなくとも、介護が必要な家族と同居していたり、経済的な事情で実家を出ることができなかったり、そもそも不動産屋で断られたり、様々な事情によって、同性パートナーと一緒に住むことができない方たちがいらっしゃると思います(世間が男女のカップルや法律婚の夫婦と同じくらい同性カップルを当たり前だとみなし、祝福し、支援するくらいになってはじめて「法律婚に準じた形で」同居を要請することができるのではないでしょうか)
 この「2人とも同じ自治体」「同居」要件は、Aさんのケースのように、二人で一緒に生活設計していこうとする際の障害になることもあり、看過できない問題です。早急に制度の見直し・改善を実施し、要件を緩和していただくよう、お願いしたいところです。



 
参考記事:
性的少数者支援へ「パートナーシップ制度」検討を 仙台市男女共同参画審が答申(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20210204khn000022.html
パートナーシップ制度の実現求めて「カラフル松山」発足(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP2D6QNMP29PTLC024.html
札幌市にファミリーシップ制度を 市民団体が要望書「いろんな家族の形認めて」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210222/ddl/k01/040/033000c
パートナーシップ 行政サービス、徳島市が拡充(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210221/ddl/k36/010/263000c
帯広市に同性パートナーシップ認証制度を作る会 市に要望書提出(十勝毎日新聞)
https://kachimai.jp/article/index.php?no=526885
パートナーシップ制度、実情とそぐわず 自治体で要件差(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP2J66WBP1NTIPE01L.html

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