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【東京五輪】史上初めてトランスジェンダーの選手が五輪でプレー、なでしこジャパンと対戦したカナダのクイン選手

 東京五輪はトランスジェンダーの選手が初めて参加する大会になりましたが、そのなかの一人、サッカー女子カナダ代表でノンバイナリーのクィン選手が、札幌ドームで7月21日に開催された予選リーグでなでしこジャパンと対戦し、五輪の試合に初めて出場したトランスジェンダー・アスリートとなりました。

 
 カナダ女子代表DFのクィン選手は、21日に行われたなでしこジャパンとの試合に先発出場し、73分までプレーしました。クィン選手は2016年のリオ五輪にも出場し、カナダ女子代表として銅メダルを獲得しています。
 
 クィン選手は2020年、トランスジェンダーであることをカムアウトし、プロナウンはthey/them(ノンバイナリー)であること、出生時につけられた女性名を破棄し、単にクィンと名乗ることを表明しました。
 BBC Sportのインタビューでクィン選手は、「私が自分が何者であるか自覚したとき、とても怖くて、この先サッカーを続けていけるかどうか、私の人生に未来があるのかどうかわかりませんでした」と語っています。
「あなたが自分のような存在をメディアや周囲に見つけられないとしたら、本当に苦しいと思います。私はプロサッカーの世界に身を置いてきましたが、同じような存在を見つけることができませんでした」
 クィン選手がカムアウトを決意したのは、東京五輪でトランスアスリートとしての可視化に貢献したいと思ったからだそうです。
「それが、私がカムアウトした理由の一つです。五輪は可視化という点で巨大なプラットフォームです」
「最初の、実在するトランスアスリートになれればと思うし、後に続く人たちが出てきてくれたらうれしいです。トランスアスリートにドアが開かれることを望みます」
「人々が、そうすることが安全だと感じられるのであれば、カムアウトできるようになったらいいと思うし、彼らのために安全な場所を作りたいと思っています」
 クィン選手はチームメイトからも受け入れられ、女子サッカー界で競技を続けることができています。そして今回、晴れてカナダ代表として東京五輪に出場することができました。
 
 クィン選手は21日の試合の後、インスタグラムの投稿で、こう語っています。
「史上初のトランスオリンピアンとして競技したこと。どう感じたらよいかわかりません」
「ラインナップや認定証に(女性名を書かず)クィンと書かれているのを見て、誇りに思います」
「世界の(無理解の)せいで、私より前に、自身の真実を生きることができなかったオリンピアンがいたことを知り、悲しく思っています」
「私は変化に対して楽観的です。立法府の変化、ルール、構造、考え方の変化です」
「私はたいてい現実を把握していると思います。スポーツへの参加を禁止されているトランス女子。オリンピックの夢を追求しようとして、差別や偏見に直面しているトランス女性たち」
「闘いはまだまだ終わりません。私たち全員がここに来られた時に祝福したいと思います」
 

 
 今大会ではほかにも、ウエイトリフティング女子ニュージーランド代表のローレル・ハバード選手や、自転車競技BMXフリースタイル女子のアメリカ代表補欠のチェルシー・ウルフ選手といったトランスジェンダーの選手が来日しています。

 JOC理事の杉山文野氏は、東スポのインタビューで、「トランスジェンダーの元アスリートとしては非常に喜ばしいこと」と歓迎しています。
 そのうえで、ローレル・ハバード選手が「男子として生まれ、他の女子選手と比べると骨格の違いや筋力差が生じることも考えらえれるのではないか」との質問に対し、「体が小さい男性もいれば大きな女性もいますよね。平均すれば男性のほうがフィジカルは強いかもしれませんが、絶対的というわけではありません。身体的特徴だけではなく、裕福な国と貧困国でも状況は違う。何をもって「公平」「不公平」と言うのかは、もう少し多角的に見る必要があるのではないでしょうか」と答えています。
「五輪憲章はあらゆる差別を禁止しており、一定の属性の人がスポーツ界から排除されてはならない。その点と競技における公平性の両立をどう担保するかなのですが、少なくともローレル・ハバート選手は現行のルールを守って出場を決めたわけで、その個人に対して卑怯とかずるいという目を向けるのは筋違いであり、あってはいけないことだと考えます」

 順天堂大スポーツ健康科学部の野口亜弥助教も、ハバード選手の参加を「不公平だ」とする声について「選手はIOCが定める基準を満たして出場するので個人に非はなく、選手を批判すべきではありません」と述べています。
「五輪の第1回大会が1896年にアテネで開催された時、参加は男性しか認められず、1900年にパリで行われた第2回大会から女性の参加が認められましたが、ごく少数でした。IOCが「女性にふさわしい」とみなした競技だけ女子種目として実施されたのです。つまりスポーツ界は「女性不在」でスタートしています。男性のみで行なわれていた五輪に女性の参加が認められるようになりましたが、いずれもシスジェンダーの男性・女性が大前提となっていたのではないでしょうか。このような状況においてトランスジェンダー選手が、どのような形で参加していくかをやっと議論できるようになったと言えるでしょう」
「トランスジェンダー選手はずっと前からいて、ハバード選手が東京五輪の代表となったことで存在がクローズアップされたに過ぎません。やっとその存在が可視化されたにもかかわらず、ハバード選手を否定すれば、論議する機会を失います。トランスジェンダー選手が参加できない既存の仕組みで競技をするならば、スポーツ界の発展が止まってしまうと思います。「もともと男性だった女性が出場しては困る」「女性の中に男性が入ってくるな」と批判するのではなく、「今、議論を始めるべき時だ」と理解してほしいのです」
「先駆者となった重量挙げのハバード選手が責められ、排除しようとする動きが見えています。しかし、自認する性別のカテゴリーで五輪出場を目指すことはアスリートとして自然な望みです。ネット上では個人への中傷などを見かけますが、ハバード選手を「スポーツ界が進化するきっかけをくれた」と受け入れ、感謝すべき存在と考えたいと思います」

 


参考記事:
初のトランスジェンダー選手として東京五輪出場、なでしこジャパンと対戦したDFクインが心境綴る「誇りに思う」(超WORLDサッカー!)
https://web.ultra-soccer.jp/news/view?news_no=400282
Quinn: Canada's transgender footballer on being 'visible' and playing at the Olympics(BBC Sport)
https://www.bbc.com/sport/football/54233946
東京オリンピック、LGBTQアスリートの出場が史上最多に。開会式の旗手には6人(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/lgbtq-athletes-are-tokyo-olympics_jp_60fa246ce4b0158a5edef433
【東京五輪】JOC杉山文野理事が激白「トランスジェンダー選手を批判するのは筋違い」(東スポ)
https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/3448500/
トランスジェンダー選手を「不公平」と排除せず 競技ごとに論議スタートを(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/wakabayashitomoko/20210722-00249289

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