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【東京五輪】高飛び込みのトム・デイリー選手「私はゲイで金メダリストですと言えることを誇りに思います」

2021年07月26日

 7月26日、水泳の男子シンクロナイズドダイビング10メートル高飛び込み決勝で英国のトム・デイリー&マティ・リーのペアが金メダルを獲得、トム・デイリーが4度目の五輪でついに金メダルに輝きました(おめでとうございます!)


 トム・デイリーは2008年、14歳のときに英国最年少で北京五輪に出場し(7位入賞)、「飛び込み王子」と騒がれましたが、アイドル的な人気へのやっかみから学校でのいじめに悩まされ、転校を余儀なくされたといいます。また、性的指向に関してネット上でひどい中傷にさらされた時期もあったそうです。しかし、2012年の地元ロンドン五輪では様々な重圧に耐えて見事、高飛び込みで銅メダルを獲得しました。翌2013年には、「噂や憶測」に歯止めをかけたいという思いから、バイセクシュアルであること、現在男性と交際していることをYouTube上のファン向けビデオ・メッセージでカムアウトしました。「理想とする世界だったら、こんな動画を発表することもないだろう。だって(同性との交際には)何の問題もないからね。でも最近メディアで間違った書かれ方をしてすごく腹が立った。フラストレーションを感じた。正直であることは僕の信念でもある。父はいつも、僕の幸せが自身の幸せだと言ってくれていた。そして今、僕は最高に幸せだ。母も応援してくれている。友達も家族もみんなすごく応援してくれていて、本当にうれしい」。このカミングアウトに対してカイリー・ミノーグが「感動しました」とコメントするなど、各界のセレブが称賛の声を寄せました(このときのg-lad xxのニュース記事で、「アメリカのグレッグ・ローガニス選手、オーストラリアのマシュー・ミッチャム選手といったオープンリー・ゲイの金メダリスト(二人とも飛び込み競技の選手)のように、ぜひ金メダルを穫ってほしいですね」と申し上げましたが、ついに念願の金メダルに輝いたこと、本当によかったです。お祝い申し上げます)
 2015年、トム・デイリーは映画『ミルク』の脚本で第81回アカデミー賞のオスカーを獲得したダスティン・ランス・ブラックと婚約しました。二人の交際は2013年の夏にスタート(つまり、カムアウトした際の交際相手は、ダスティンだったのです)、トムの「一目惚れ」だったそう。「彼に会ったときの気持ちはそれまで体験したことがなかった。彼は僕を安心させてくれて幸せな気持ちにしてくれる。こんなに幸せだったことはないよ」
 2016年、トム・デイリーは史上最多の53名のオープンLGBTQの選手の一人としてリオ五輪に出場し、シンクロ高飛び込みで銅メダルを獲得しました。
 そして2017年にダスティン・ランス・ブラックと結婚し、2018年には代理母出産で男の子を授かり、幸せいっぱいな様子が伝えられました。
 トムは2019年、日本政府観光局(JNTO)の英国向けキャンペーンに起用され、来日して東北4県を回って青森のねぶた祭りなどを体験・レポートしましたが、その際、日本のLGBTQを支援したいという気持ちで(ラグジュアリーなホテルでの宿泊を断り)福島・裏磐梯でゲイカップルが営む『BANDAI LAKESIDE GUESTHOUSE』に1泊してくださっています。ゲストハウスのオーナーのGENTAさんは「自分はセレブだ、有名人だという偉そうな感じが全くなく、とてもフレンドリーで礼儀正しく、なにより笑顔の明るい好青年でした」と語っています。トムは夫のダスティンのために日本酒をお土産に買って帰ったそうです(詳細はこちら
 
 そんなトム・デイリーが26日、結婚や出産を経て初の五輪出場で、念願の金メダルを獲得、表彰台の頂上に立ち、涙を流して喜びました。
 会見でトムは「「私はゲイで、金メダリストでもあります、と言えることを信じられないくらい誇りに思います」と語りました。
「若い時は自分が何者かになれるなんて思いませんでした。性的マイノリティが受け入れられると思ってなかったから。金メダリストになった今、『あなたは何にだってなれる』と示すことができました」
「OUTしたアスリートという点では、この大会では過去最高のオープンリーLGBTQの選手が参加しています。私は2013年にカムアウトしましたが、若い時はいつも孤独で、周りと違っていて、居心地の悪い思いをしていました」
「私はずっと、社会が求めるように善良に生きられないという思いを抱えて生きてきました。私は今この時も孤独を感じているあらゆる若いLGBTQの人たちに、孤独じゃないと伝えたいです」
 3歳になった息子・ロビーくんについて尋ねられると、「最も素晴らしい、人生を変えるような出来事です」と答えました。「本当は東京で見てくれたらよかったのですが…。早く帰って会いたい。ギュッと抱きしめて、金メダルのお祝いを一緒にしたいです」
 会見の最後にトムは、「出自や性的指向などに関係なく、演技によってジャッジされる。スポーツは美しい」「著名な選手が自分のストーリーを伝えていけば、人々の意識を変えることができると思います」と語りました。
(素晴らしいコメントですね!)

 
 トム・デイリー選手はこの後、8月6日に男子高飛び込み予選に出場し、無事に予選を通過するでしょうから7日に男子高飛び込み準決勝と決勝に臨むことと思われます。5月に東京アクアティクスセンターで行なわれたW杯では優勝していますので、こちらでも金メダルが期待されます。応援しましょう。


 
参考記事:
いじめ、同性婚を経て 飛び込み「王子」が期待する東京五輪の意義(産経新聞)
https://www.sankei.com/premium/news/210516/prm2105160010-n1.html
【東京五輪】 競泳男子ピーティが英の金メダル1号 飛び込みのデイリーと自転車も金(BBC)
https://www.bbc.com/japanese/57969545
「私はゲイで、金メダリスト」 英国飛び込み選手が会見で語った半生(朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASP7V76JBP7VOIPE036.html
<紡ぐ、選手の物語 担当記者の視点> トーマス・デーリー/吉田麻也/三宅宏実(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/118621
Gay Diver Tom Daley Wins First Gold Medal, Vows to 'Carry On'(Advocate)
https://www.advocate.com/sports/2021/7/26/out-diver-tom-daley-wins-first-gold-medal-vows-carry

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