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衆院選×LGBTQ、テレビや新聞はどう報じたか(1)

 衆院選公示から1週間が経ちました。衆院選特集で、今回の選挙は史上初めて同性婚やLGBT平等法が争点の一つになった衆院選ですとお伝えしましたが、この間、テレビや新聞などのメディアでも連日のようにLGBTQの権利と選挙をからめた報道がなされています。地方紙でも(LGBT新法の時と同様に)同性婚の実現を訴える社説や当事者に寄り添う記事が掲載されていて、全国的な世論のうねりを感じさせます。そうしたニュース・記事をまとめてご紹介します(日付順。すでに衆院選特集でお伝えしているような各党の公約を比較した記事は割愛いたします)
※とても長くなりそうですので、いくつかに分けてお送りします。
 
 
 10月15日の西日本新聞「「多様な性」に鈍い政治 同居、結婚、就職…生きる中で壁多く」では、「男性同士だから」という理由で同性カップルが入居を断られたケースをきっかけに、管理会社や家主を粘り強く説得し、これまでに100件以上の入居を実現させたという福岡市・三好不動産の原麻衣さんをフィーチャーしています。原さんは業界の風潮を打破したいと思い、5年前に自身もバイセクシュアルであることをカムアウトし、セミナーを開催、支店には多様性を象徴する「レインボーマーク」を掲示したといいます。原さんは「認知が広がっても、差別は全然なくなっていない」と語ります。
「理解を促すためのLGBT法案の国会提出は見送られ、一部議員からは「種の保存に反する」など差別発言が相次いだ。福岡市の支援団体の三浦暢久さん(44)は指摘する。「差別に苦しみ、将来に絶望する人がいる。当事者を守る法は命に関わる問題だ」
「先進7カ国(G7)で同性婚などを整備していないのは日本だけという」

 10月18日には日本記者クラブの党首討論会が行なわれ、選択的夫婦別姓とLGBT理解増進法案、それぞれの法案の来年の通常国会への提出に賛成するかどうかを尋ねられ、どちらについても、自民党を除く8党の党首が一斉に手を挙げたなか、岸田首相だけが手を挙げなかったことが報じられました(日経新聞「夫婦別姓・LGBT、自民はいずれも慎重 党首討論会」、朝日新聞「夫婦別姓とLGBT法案で岸田氏孤立? 公明からも「自民は合意を」」、東京新聞「「選択夫婦別姓」8対1の光景に 9党首の討論会、岸田首相だけ手を挙げず」、中日新聞「夫婦別姓、自民以外「賛成」 LGBT法案も首相、保守派に配慮」など)
 
 10月19日の東奥日報「衆院選、あなたにとっては「○○選挙」? 青森県民に聞く」では、県内の様々な方に、政治に何を求めるか、今回の選挙に何という名前をつけるかをインタビューして紹介。登場した8人のうちの1人、八戸学院大学2年の工藤花瑚(かこ)さんが、「日本ではLGBT(性的少数者)に対する理解が進んでいない」「自分の性に悩む人が暮らしやすい社会になってほしい」と語っていました。工藤さんは日本の未来を考えた政策を進めてほしいという思いから「未来見据え選挙」としていました。

 10月20日の山陽新聞「衆院選 岡山県内でも期日前投票始まる 投票所入場券なくても受け付け」では、期日前投票を行なった方の声を紹介。岡山市北区の自営業の女性(50歳)が「若者やLGBTなど誰もが生きやすい世の中になることを期待して投票しました」と答えていました。

 10月20日、朝日新聞の衆院選連載「問われる民意2021」第14回「LGBTや夫婦別姓は票にならない? 少数者の問題にしたのは誰か」では、松岡宗嗣さんへのインタビューが掲載されました。LGBT新法をめぐる動きを踏まえたうえで今回の選挙の意味が実に的確に述べられていて、今回の衆院選関連記事のなかの白眉とも言うべき、圧倒的に素晴らしいコメントでした。
 まず、「今年6月、「LGBT理解増進法案」を提出できないまま国会が閉会したときに、「選挙で変えるしかない」と発信しました。自民党内での反対意見が大きな要因でしたが、選挙での争点になるでしょうか」と問われた松岡さんは、「さまざまな調査では、LGBT差別禁止や同性婚に賛成する人が多数です。ただ、その賛成は『別に自分とは関係ないからいいよ』というもので、選挙の判断基準にするほどの賛成ではないのではないでしょうか。数としてはどうしても少数者の問題となってしまうテーマを、大きな争点とし、選挙結果に反映することは難しい面があるのは確かです」「そもそも憲法が基本的人権の尊重をうたっているのに、多数派のためだけの多数決になってしまい、少数者の人権が保障されていない今の政治状況は、民主主義が体現できていない。そのことが問題であることが、大前提としてあります」と答えました。「それでも、いまの社会の仕組みでは、国会が動かなければ制度や法律は変わりません。そのためには、意識を持って取り組んでくれる候補者を一人でも多く国会に送り込まなければいけない。やはり、選挙が重要です」「マイノリティの問題は、自分とは関係ない『一部の特殊な人の問題』とされがちです。でも、本当はそうじゃないと思うんです。結婚制度一つとっても、『個人が自由な選択が奪われ、不利益を被る社会でいいのか』という社会の構造の問題です。そうやって、自分事として考えてもらえるようになれば、大事だと思う人は増えるのではないでしょうか」
 「これまでの間、問題を「マイナーにしてきた」のは誰なのでしょうか」という質問に対しては、「政治とメディア、そしてその中心にいるシスジェンダー・異性愛の年配の男性、彼らマジョリティーの関心のあることが『社会の問題』とされてきました。ジェンダーやセクシュアリティの問題も同じです。選挙で投じた一票には『なぜこの人や政党に投票したのか』は書かれません。だから、権力側が設定した大きなイシューの陰に隠されてしまう」「マイノリティとマジョリティは『少数派』『多数派』という『数』の問題と思われがちですが、パワー、権力の問題でもあると思います。その証拠に、女性として生きている人は社会の約半分なのに、『オンナコドモの話』は長い間主流の争点ではありませんでした。パワーバランスの不均衡が、マイナーなイシューにしてきたという認識が必要です」と語っていました。
 最後に、「松岡さんたちが議員への説明や署名運動などに取り組んだにもかかわらず、理解増進法案は国会に提出されなかった。政治に絶望しませんか」と問われた松岡さんは、こう答えました。「反省点があります。それは、『理解増進法』でもいいという妥協は、結局、性的マイノリティーの権利を保障するつもりはない、一部の政治家の『多様性への関心』のアピールに利用されただけだった。それに自分も加担してしまった」「自民党の中で話を聞いてくれる政治家が貴重な存在だったことは確かですが、結局『理解増進』すらまとめられなかったことは、シビアに見なければいけないと考えています。選択的夫婦別姓が何十年たっても導入されないように、このままでは差別禁止法も同性婚の実現も遠いでしょう。実現可能な範囲で妥協をしながら進めていくことも必要ですが、選挙での選択をする時期だと考えます」

 同日の静岡新聞「争点をあるく④ ジェンダー平等【漫画×みんなの選挙しずおか】」では、性別適合手術を受けなくても戸籍の性別を変更できるよう求めている浜松市在住のトランス男性・鈴木げんさんのことが漫画で紹介されていて、素晴らしかったです。社会部の市川幹人記者は、「鈴木げんさんは「僕らの声が形になり生きる希望につながる」とも語った。国民の声を社会変革につなげることが政治の役割だ」と、漫画を手がけた塚田雄太さんは、「私はこれまでジェンダーに関する話題に関心が薄く、テレビや映画で見聞きする程度でした。今回、トランスジェンダーの鈴木げんさんの思いや苦悩を直接聞き、社会をもっとより良くできると感じました」と語っています。

 10月22日の読売新聞福島版の衆院選連載28「【未来の1票】性的少数者の女性 LGBT人権保障して」では、いわき市在住のパンセクシュアル女性がフィーチャーされていました。中学生の頃、同性の先輩を好きになったけど誰にも打ち明けられなかった、東京の大学に進学し、初めて仲間と出会い、カミングアウトできた、卒業後はNPOに就職して全国の自治体や学校で研修を行なっていたが、2年前にいわき市に戻ったとのこと。「LGBTは生産性がない」と発言した国会議員に地元の友達がSNSで賛同していたのを見て、「いわきではLGBTについて知る機会や理解できる場所がない」と感じ、団体を設立したそうです。彼女は「LGBTが安全に生きられる法整備が必要です。差別を禁止し、同性婚を認めるなど、人権を保障してほしいです」と訴えました。

 同日の富山テレビ「衆院選 候補者の主張を比較…「同性婚」と「消費税」 富山県内選挙区」では、「今年3月、札幌地裁で、同性婚を認めない民法の規定は「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反するという判決が国内で初めて出されました。性的マイノリティへの社会的な認知が進むことや、先進国を中心に外国でも同性婚を認める動きが出てきていることを踏まえた判決で、今後、国内でも同性婚の法制化についての議論が加速するとみられます」としたうえで、県内の候補者だけでなく、同性婚についての街の声をレポート。自営業(50代)は「反対する立場ではないな。個人の自由だと思うので」と、専門学生(20代)は「めちゃくちゃ賛成。別によくない?って感じですね」と、契約社員(40代)は「これから多様化の時代なので、ちゃんと(法制化)した方がいいのかな」と、会社員(20代)は「偏見とかなくなりそうなんで、認められた方が」と答えていました。全国でも最もLGBTに不寛容だと言われる北陸の富山でも、賛成の声のほうが多かったです。

 同日の毎日新聞高知版「焦点・衆院選の課題 /上 性の多様性 国主導の法整備を」では、高知市の「パートナーシップ登録制度」第1号カップルとなったレズビアンの30代女性のことが紹介されています。パートナーと長く一緒に暮らすなか、周りの人たちが結婚していくと焦りが増し、何か二人の関係を示す形がほしいとの思いが強まり、「日本では同性婚が認められていない」という事実が段々と受け入れられなくなっていき、最終的に相談したのが古くからの友人でトランス男性の宮田真さんでした。3人で話し合い、2018年9月に高知市内で署名活動を始め、偏見の根強さに直面しながらも、2018年にNPO「レインボー高知」を設立し、啓発活動にも力を入れ、そして2019年12月、高知市議会でパートナーシップ制度創設を求めた請願が採択されたのでした。彼女は「渋谷で(同性パートナーシップ証明制度が)できてから時間がたっていたので、言わなくても高知で作ってくれるかなと思っていた」といいます。地方では、導入できる制度にもそのスピードにも限界があると身をもって知りました。だからこそ国が主導して制度や法律を整備することを求めています。「国には影響力があるので法案を通してほしい。急に同性婚を認めるのが無理なら、まずは理解増進でもいい。国にはそれをする義務があると思う」
 
 10月23日の東京新聞「<この声を 衆院選>性の多様性 当たり前の権利認めて」では、さいたま市のパートナーシップ宣誓第1号となった稲垣晃平さん&立崎聖也さんカップルがフィーチャーされていました。お二人は2015年7月に同居を始め、翌年、家族に見守られて結婚式を挙げました。しかし、法律上の婚姻はできず、市に制度ができるとすぐに申し込んだといいます。稲垣さんは、パートナーシップ制度には限界があり、法的に婚姻を認めてほしいと願っています。コロナ禍でその思いが強まりました。カップルのどちらかが感染して入院した時に「家族ではない」と面会を認められない不安があります。治療や手術への同意は、互いに署名する権利があると公正証書を作成して備えているものの、費用は十万円を超えました。証書があっても医療機関がすぐには応じない懸念もあります。また、二人の親や親戚は関係を理解していますが、そうではない場合、パートナーが亡くなっても葬儀で喪主を務められず、参列さえできない可能性があります。相続も法的には他人扱いです。「婚姻関係なら当たり前の権利が認められない不条理。稲垣さんは「特別な制度を求めているわけではない。(異性婚カップルと)同じスタートラインに立てないのは、おかしくないですか」と問いかける」
 埼玉大の渡辺大輔准教授(セクシュアリティ教育)は、「困難に直面している人がこの瞬間にもいる。性別にかかわらず好きな相手と結婚できる制度や、性的少数者への差別を戒め人権を保障する法律を、早急に整える必要がある」「当事者だけでなく、性的少数者をめぐる社会的課題を理解する人たちも政治に声を届けることが重要だ」と述べています。

 同日の福井新聞「マイノリティの課題は票にならない? 衆院選の今、LGBTQや外国人が思うこと」では、福井でドラァグクイーンとして活躍する花華院姫子さんの「自分はオープンだが(保守的な)福井では、告白すると大変な面もある。いじめにもつながる」というコメントや、福井出身のかずえちゃんの「少数派だからこそ、社会にもっと認知してもらう必要がある。性を表明するかどうかは個人の問題だが、自分の性を打ち明けられない社会は、やっぱりおかしい」という声が紹介されました。

 10月24日のTBS「【衆院選2021】意識高くなくてもいい。自信なくてもいい。若者に投票のすすめ【政治をSHARE】」では、若者の政治参加をリードする「NO YOUTH NO JAPAN」の能條桃子さんが「私は「選択的夫婦別姓」とか「同性婚」をリトマス紙だと言ってます」と語っていました。「若者の多くが賛成してるものに対して、反対だって言い続けてる候補者って、きっと強い思いがあって、若者の意見よりも自分の意見を優先しますって人じゃないかなって」
 
 10月25日、琉球新報の「社説[[2021衆院選]多様性の尊重] 実現したい社会の形は」では、ジェンダー平等と並んでLGBTの課題について論じられていました。
「この夏、開かれた東京五輪・パラリンピックでは、LGBTなど性的少数者であることを公表した選手が史上最多となった。
 電通の調査では、日本で暮らす11人に1人が性的少数者に当たると推計される。
 多様な性の在り方が可視化され、意識が高まる中、衆院選では性的少数者の人権をどう守るかも大きな論点となっている。
 立憲民主、共産などの野党は公約に性的少数者平等法の制定を明記した。
 自民はLGBTへの理解増進を目的とした議員立法の制定には言及するが、公約では差別解消を明示していない。
 党首討論会で、関連法案を国会に提出するかと問われ、手を挙げなかったのは岸田首相1人だけだった。
 先の調査で当事者の7割がカミングアウトしにくい社会だと答えていることを重く受け止めたい。」

 同日の下野新聞「男女格差、差別解消に注目 「ジェンダー・マイノリティー」分野で若者世代 #しもつけ選挙どうする」では、30代以下世代へのアンケートの結果が発表され、「LGBTQ(性的少数者)やジェンダーに関する差別をなくすべきだ」を選択した人が47.8%、「同性婚の法制化を進めるべきだ」は40.0%と、いずれも40代以上より10ポイント以上高かったことがわかりました。宇都宮市の30代女性からは「同性婚や選択制夫婦別姓について議論が進まないことが悲しい。自分が自分らしく生きられる権利を尊重してくれる社会を作ってほしい」という意見が上がっていました。

 同日の現代ビジネス「「同性婚が欲しい」の声。高齢者も、地方も、こんなに温かく受け入れていた」では、松中権さんが金沢市パートナーシップ宣誓制度第1号カップルで焼き鳥屋さんを経営しているお二人の心温まるエピソードを紹介していました。「お店に来る常連のお客様はもちろん、本当に数えきれない方々から、『おめでとう!』と声をかけられたり、お祝いされたり。初めて、自分たちが二人で生きてきたことが周囲からも認められたような感覚で、心から嬉しい思いです」。また、お店の仕入れに近江町市場に行った時、いつもの豆腐屋さんに入ったら、おばちゃんが笑顔で迎えてくれて、「ニュース見たよ! おめでとう!」と声をかけてくれて、「あ、ちょっと待って」と奥の冷蔵庫のほうに行き、いつもがんもどきや厚揚げなどオマケをくれるので、今日は何かな?と期待していたら、ばっと開けた冷蔵庫の中から、なんと、大きな花束を持ってきてくれて、「あんたらが幸せで、わたしも嬉しいわ。わたしにとっても誇りやわ」と言ってくれたんだそう(感涙…)。松中さんは、「世の中にはすでに同性同士であっても「幸せなパートナーシップが認められること」への理解が、加速度的に深まっているのです」と語ります。
 では、国会はどうかというと、2021年2月の菅首相による答弁は「…極めて慎重な検討をする必要がある」と述べられるのみ。それどころか、6月の通常国会において、LGBTQ+に対する差別をなくすための法案が提出されるかどうかのタイミングで、一部の自民党議員からLGBTQ+に対する極めて差別的な発言がなされ、結局は法案提出にも至りませんでした。10月18日の日本記者クラブでの党首会談では、選択的夫婦別姓とLGBT法案について賛成の手をあげなかったのは、自民党の岸田文雄総裁のみでした。「この、世の中と国会の間にある大きなギャップを埋めていくために、「同性婚」に関して、3つの可視化が必要なのではないかと考えています」として、松中さんは、世の中と国会の間に確かに存在するギャップ自体をきちんと社会に対して可視化していくこと、国会議員や候補者に対して「自分自身の同性婚に対する意向が明らかに有権者からチェックされている」という事実を可視化すること、「同性婚」を選挙のひとつの争点として可視化することで、LGBTQ+の当事者やその周りの方々に対して、「同性婚」を求めることは、法の下に平等である国民のひとりとして、当たり前の権利であると伝えていくことだと語ります。これらの思いが「マリフォー国会メーター」に込められています。
 最後に松中さんは、ハーヴェイ・ミルクが暗殺される少し前に行なったスピーチを紹介しています。
「希望がなければ。同性愛者だけでなく、黒人、アジア人、障害者、高齢者、マイノリティである私たちすべてが、希望がなければ、諦めるしかない。希望だけでは、生きていくことができないとはわかっているが、でも、希望がなければ、生きていることの価値がないんだ。あなたが、あなたが、あなたが、みんなに希望を与えなければいけない」

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