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衆院選×LGBTQ、テレビや新聞はどう報じたか(2)

2021年10月28日

 衆院選特集で、今回の選挙は史上初めて同性婚やLGBT平等法が争点の一つになった衆院選ですとお伝えしましたが、この間、テレビや新聞などのメディアでも連日のようにLGBTQの権利と選挙をからめた報道がなされています。地方紙でも(LGBT新法の時と同様に)同性婚の実現を訴える社説や当事者に寄り添う記事が掲載されていて、全国的な世論のうねりを感じさせます。そうしたニュース・記事をまとめてご紹介します(日付順。すでに衆院選特集でお伝えしているような各党の公約を比較した記事は割愛いたします)
※とても長くなりそうですので、いくつかに分けてお送りします。
 
 
 10月26日の河北新報「性と姓、法的に保証を 議論の機運高まるも政治の英断なく」では、「レインボー・アドボケイツ東北」「にじいろCANVAS」の代表で今年7月にパレードを開催した小浜耕治さんがフィーチャーされていました。LGBT新法の国会提出が見送られた件について小浜さんは、「また仕切り直しか」と落胆、「多様な性の在り方を議論する機運は、これまで以上に高まっていた」と悔しがったそうです。20年ほど前、パートナーの手術に同意できず、パートナーの姉にサインを頼んだ経験から「異性と同性。なぜ差があるのか」と語ります。パレードではレインボーカラーのTシャツ姿で、ぬいぐるみと「どこにでもいるよ 隣にいるよ」のプラカードを持ち、商店街を練り歩きました。手を振り、応える人もいたものの「ほとんどはパレードの意味を理解していない様子だった」と振り返ります。「私たちの存在を無視せず、認めてほしい」
 選択的夫婦別姓にも関心を寄せ、「これらの問題が注目される選挙になればいい」と争点化に期待するとともに「お題目で終わらないよう『選んだ側』としても、ものを申していきたい」と語りました。

 同日の朝日新聞デジタル連載「私たちの現在地 2021衆院選記事」第9回「思い出の森ができあがる頃 同性婚を望む2人が描く未来」では、三重県伊賀市の加納克典さん&嶋田全宏さんカップルが登場していました。全国で3番目に同性パートナーシップ証明制度を実現した伊賀市に移住したお二人は、「周囲は男性2人暮らしの家をどう見るだろうか、うまく溶け込めるだろうか」と不安でしたが、杞憂に終わりました。「ご近所さんは夕食をお裾分けしてくれ、地域の集まりで自然に話しかけてくれる。「倒木の撤去」や「屋根裏に迷い込んだネコを下ろすのを手伝って」など気軽に2人を頼って訪ねてきてくれる。本当にうれしかった。嶋田さんは「伊賀に来て、人生で初めて『夫夫』として暮らせている。感謝しかない」と話す」
「ただ、やはり、望むのは結婚だ。パートナーとして病状説明の立ち会いや手術の同意も全ての病院でできるわけではなく、相続には公正証書などを作成しておく必要がある。異性カップルの婚姻とは同じではない現状が依然としてある。加納さんは「特権を求めているわけではない。ただ、不平等を直して欲しいだけなんです。性的マイノリティがいることを前提にした政治をしてほしい」と話す」
 裏の畑に植えられている一本の木は、加納さんが嶋田さんの誕生日に贈ったプレゼントです。畑には、これからも機会ごとにいろいろな木を植えるそうで、数十年後にはお二人にとっての思い出の森ができあがる予定です。「その頃までには、自分たちの存在が当たり前の世の中になっていることを願っている」

 同日の毎日新聞「衆院選・私の争点 同性婚できない女性カップル「夫婦の権利なぜないの」 日米に大差」には、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告となっている京都の坂田麻智さん&テレサ・スティーガーさんのカップルが登場しました。お二人は友人を通じて2008年に知り合い、2013年には京都の町家を一緒に購入し、愛犬も一緒に暮らす大切なわが家になりました。しかし、ローンを共有名義で組むことが難しく、自宅は坂田さんの単独名義になっています。国内で法律婚関係にないため、坂田さんが先に亡くなると、テレサさんは自宅を相続できません。仮に遺言書による遺贈などで住み続けることができたとしても、配偶者控除を受けられないため、多額の相続税を払わなければなりません。お二人は「結婚していれば夫婦に当然のようにある権利が、なぜ同性同士というだけで私たちにないのでしょうか」と語ります。
 米国籍のテレサさんのビザの問題もあります。結婚すれば取得できる配偶者ビザは取得できず、結婚3年で申請できる永住権も申請できません。就労ビザで入国していたテレサさんは「働けなくなったら麻智と一緒に日本にいられなくなるというのは恐怖だった」と語ります(今は永住権を取得できているそうです)
 坂田さんは20歳の頃、お母さんに女性が好きだと伝えました。「若いし病気みたいなものじゃないの?」と返され、「女手一つで自分を育ててくれ、理解のある母には受け入れてもらえると思っていただけに、ショックは大きかった」といいます。だからこそ、法制化を強く願っています。「法律で認められれば、同性愛に悪いイメージを持ってしまっている世代にも影響すると思う」「世論の同性婚への理解は着実に広がっている。世の中の動きに合わせて感覚をアップデートしてもらいたい」
 
 同日の京都新聞の「社説:共生社会 多様性の尊重へ議論を<衆院選10・31>」では、このように論じられています。
「立憲民主、共産、れいわ新選組、社民の4党は共通政策として性的少数者への差別を禁止する「LGBT平等法」の制定を訴え、国民民主党も同様の立場だ。日本維新の会などは同性婚の法制化も掲げる。
 自民もLGBTへの理解促進を目的とした議員立法の速やかな制定を実現するとしている。
 現実社会での差別や当事者の不利益をどう取り除いていくか基本的な視座が欠かせない。
 多様性は、さまざまな見方や議論を生み出し、社会や経済の活力となり得る。その尊重は世界のスタンダードになりつつある。
 各党には、目指す共生社会の姿を明確に語ってほしい。」

 同日の山陰中央新報「未来への選択 21衆院選(3)同性婚 自分らしく生きるために」では、「結婚の自由をすべての人に」訴訟の寺原真希子弁護士へのインタビューが掲載されました。

 同日の朝日新聞「一票の重み、若者が考えるヒントに 町の本屋さんに聞いたオススメ」では、「隆祥館書店」の二村知子さんが『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』を読んで、「法律や規則は変わる」と教科書に書いてあることに衝撃を受けたと語っています。「日本では法律は守るもの。時代に合わなくなれば、『おかしい』と声を上げていいという教育がされていない」「日本では校則で下着の色や髪形まで決められることもあり、変えるのは簡単ではない。ましてや選択的夫婦別姓や同性婚など法律の改正を求める声が高まっても、国会ではなかなか議論が進まない」「小学生のうちからこんな教育がなされていたら、若くても『社会を動かすのは自分だ』と思えるはず」 

 同日の南日本新聞「〈あたしの全てがあたしのために〉マイノリティーの思い歌うソングライター。少数派を切り捨てれば何も残らない。「誰もが対等に」願い込める1票【U30のまなざし 衆院選鹿児島】」では、バイセクシャルのシンガー・ソングライター、よしむらさおりさんがフィーチャーされていました。「二つのスカート」という同性への片思いをつづった歌を歌うなかで「今のままでいいのか」と疑問を持つようになり、当事者団体の活動も知り、「政治と社会の仕組みが生きづらさを作り出している」と気づいたそう。2作目のアルバム『palette』」で「こんな社会になってほしい」と歌に願いを込めはじめ、新曲「これでいい」では、誰もが対等な人間で、自分のために自分の人生を生きていいと歌っています。同性婚や選択的夫婦別姓が衆院選の争点に挙げられるなか、依然として否定的な候補者が少なくないことに対し、「二つの問題の根っこは同じ。女性や性的少数者の方を向かなくても大丈夫だと思われている」「少数派を全て切り捨てれば、後には何も残らない。切り捨てない政策を掲げている党に投票する」と語りました。また、鹿児島市の「パートナーシップ宣誓制度」に関して「理解が進んでおらず時期尚早」とする意見が出続けていることに対し、「まずは人権侵害の現状を是正すべきだ。制度が先で、理解が進むのはその後」と語っています。

 同日の福井新聞「特集 福井の選挙 若者600人に聞きました!もしも総理になったら…「学び」「仕事」の改善に切実な声」では、福井新聞社が30歳未満の方たちにアンケートをとった結果が公表されました。「同性婚を認める声が相次ぎ、多様性を認め合う社会を理想とする傾向が強かった」といい、U30世代がジェンダー・ギャップ解消や新しい家族の在り方への関心が強いことが明らかになりました。

 同日の琉球新報「<社説>21衆院選 多様性 社会の在り方が問われる」では、選択的夫婦別姓やLGBTQの問題が「これからの社会の在り方に関わる問題でありながら、前国会で決着がつかなかった。各党と候補者は立場を明らかにして、有権者に選択肢を示してほしい」と述べられました。
「国際レズビアン・ゲイ協会によると、2020年末までに28カ国と台湾が同性婚を法制化している。こうした世界的な流れをくみ、LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案が前国会で提出直前まで来ていた。
 法案は国や地方自治体の努力義務として、性的少数者への国民の理解を増進する施策実施を定めている。与野党の実務者で提出を合意していたが、自民党内の一部保守派が異論を強く唱えた結果、前国会で提出を見送った。
 選択的夫婦別姓もLGBT法案も、ボールは国会にある。次の国会で制度の在り方を論議し結論を出さなければならない。このため、今回の衆院選の結果は、議論の行方を左右する」

 同日の毎日新聞佐賀版「思いを託す’21さが・衆院選 /1 多様性を生きる 「法の下の平等」を」では、今年8月からスタートした佐賀県での「パートナーシップ宣誓制度」の立役者である浦川健二さんへのインタビューが掲載されました。今春、「佐賀市内居住の36歳です。現在、同性のパートナーとお付き合いをしており、13年近く同棲をしています。戸籍上は他人で、両親にカミングアウトできていない場合、死に目にも立ち会えないことがつらいです」という一通の手紙が佐賀市の県立生涯学習センターに寄せられました。浦川さんが書いたこの手紙が、知事の心を動かしたんだそうです。浦川健二さんはパートナーの方と16年つきあっています。札幌地裁判決についてお二人は、「愛する者どうしが家族になりたいという願いをかなえる大きな一歩」と歓迎します。そして「同性婚が違憲なのであれば、性的少数者への新しい法律や保障を検討してほしい」「国がパートナーとの関係を認め、法的効果を与える証明をしてくれたら……」と語っていました。
 
 10月27日の毎日新聞「衆院選 性的少数者への理解「前進」も、各党に温度差」では、LGBT法連合会共同代表で現在は函館市で暮らしている原ミナ汰さんがフィーチャーされています。「幼少期、自分は男の子と思っていたが、成長するうちに女の子であることを周りから求められ、違和感を覚えるようになった」という原さんは、中学では男女どちらの輪にも入れず孤立感を深めて不登校となり、高校卒業後、スペインの大学に進学しました。ロンドンで自分の価値観を理解してくれる男性と出会い、長女を出産。帰国後、東京都内で設立した翻訳事務所を運営しながら、女性のパートナーと長女を育てました。長女が成人した後、自身の経験から性的少数者の問題は社会全体で向き合う必要があると考え、2015年に全国組織「LGBT法連合会」を設立しました。今年LGBT新法が見送られた件について原さんは「一進一退だが、理解は着実に深まっている」と語ります。LGBT法連合会で9政党に実施したアンケートの結果を踏まえ、手応えを感じているといいます。「選挙は自分の物差しだけではなく、他の物差しもあることを理解する機会。カラフルな色合いの社会になるための選挙であってほしい」

 それから、毎日新聞は、各県の候補者へのアンケートを地方版に掲載していますが、愛知愛媛広島滋賀徳島栃木奈良福井などでは、同性婚やLGBT法案についての質問と回答が盛り込まれていました。

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