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タイ政府がいよいよ「シビルパートナーシップ法」を国会に提出

2021年11月25日

 昨年7月、タイ政府が結婚とほぼ同等の権利を同性カップルに認める「シビルパートナーシップ法」(いわゆるシビルユニオン)を承認したとのニュースをお伝えしていましたが、この度、政府がいよいよ同法案を国会に提出すると報じられました。国会で採択されれば、イスラエル、台湾に次いで、アジアで3番目に法的に同性カップルの権利を保障する国になります。

 
 タイでは2013年に同性パートナー法の草案が作られましたが、国会で審議されることなく放置され続け、2017年5月24日(台湾の最高裁が同性婚を認めた日)にようやく司法省長官が、法案を国会にかけることを認めました。しかし、残念ながらその年の国会では採択されませんでした。2018年末には、内閣が「シビルパートナーシップ法」の法案を承認したと報じられましたが、その後、この法案に修正が加えられました。二人の結びつきは「結婚」とは呼ばれませんが、同性カップルが養子を引き取って育てる権利も含め(以前は養子縁組は除外されていました)、同性カップルの財産の共有や相続など、男女の結婚とほぼ同等の権利を認めるもの(いわゆるシビルユニオン)です。ただし、税制優遇や、州の福祉制度の一部は受けられないようです。少なくとも17歳以上である同性カップルに適用され、片方または双方がタイ国籍であることという条件が付いています。昨年7月、この修正版「シビルパートナーシップ法」が内閣で承認されました。
 昨年7月の『バンコク・ポスト』の記事では、「この修正シビルパートナーシップ法案は今や、下院での投票にかけられようとしている。国会は本会議の前に、法案を審議する委員会にかけられる見込みだ」と報じられています。
 
 しかし、『Bangkok Post』によると、この11月17日、同性カップルの権利保障を求める人々への逆風が吹きました。※
 タイのLGBTQ団体「the Foundation for Sexual Orientation and Gender Identity Rights and Justice」は昨年、結婚について定める民法・商法の1448条が同性カップルの権利を無視しており、他の市民の平等を保障する条項と矛盾しているとして裁判を起こしていたのですが、憲法裁判所が「1448条は結婚を男女間に限定しているが、人々の憲法上の権利に反するものではない(違憲ではない)」として、その訴えを却下する判決を下したのです。しかし、憲法裁判所は、「国会、内閣、その他の政府組織が性的指向や性自認に関係なく全ての人々の権利を保障する法を起草するべきだ」との所見も述べました。
 タイのLGBTQ団体は結婚の平等の法制化を求め、前進党の国会議員、Tunyawaj Kamolwongwat議員は(政府のシビルパートナーシップ法案とは別に)結婚平等法を提出していましたが、憲法裁判所が結婚の平等の法制化を拒んだことで、コミュニティ内からは失望の声が上がりました。ヒューマン・ライツ・ウォッチのSunai Phasuk氏は、この判断は「政府がジェンダー平等を進めると誓っていたのを無意味なものにしてまう」と語りました。
 28日には、「Free Gender Thailand」など複数のLGBTQ団体がプロテストを行なうそうです。

※『タイランドハイパーリンクス』の記事では、憲法裁判所が「結婚を男女に限るのは違憲だ」と判断したとされていますが、これはタイ国営メディアNNTの記事に基づく記述です(確かにunconstitutionalと書かれています)。しかし、もしこれが違憲判決だったとすれば、『Bangkok Post』での、団体の人たちが判決を批判したり、抗議行動を予定しているといったくだりが意味を成さなくなってしまいます…(たいへん珍しいケースですが)これはNNTの英語への翻訳のミスだと考え、今回は『Bangkok Post』に沿って記事を書きました。もしタイ語が読めて、より信ぴょう性の高い情報に触れることができる方がいらっしゃったら、ぜひ判決がどうだったのか教えていただければ幸いです。
  
 一方、タイ政府は、今回の判決を受けて、シビルパートナーシップ法の制定を進めていくと述べました。
 ウィサヌ・クルアガーム副首相は、「政府はすでに内閣とタイ首相府内の法制委員会事務局で承認されたシビルパートナーシップ法案を国会に提案している最中だ」と述べました。同法案は現在、議会の院内総務によって検討されているそうです。
 政府は、すでに提出されている結婚平等法案については、「地方自治体や省庁を含むいくつかの機関から、既存の法の修正は混乱をもたらすため、新しく法を作るほうがよいとの反対を受けている」として、シビルパートナーシップ法を通す構えです。
 
 
 ここに来て逆風も吹き、タイでの同性婚(または準同性婚)の実現は、なかなか一筋縄ではいかない情勢になっていますね…。台湾の同性婚が(住民投票での反対にあって)民法改正による結婚の平等ではなく、同性婚法の制定によって実現し、現在、国際同性婚などについての見直しが進んでいるように、また、欧米の多くの国でもまずシビルユニオンができて、それから結婚の平等へと移行したように、タイでもまずシビルパートナーシップ法が制定され、その何年後かに結婚の平等が達成されるということになりそうです。

 シビルパートナーシップ法(シビルユニオン=シビル婚=準同性婚)が実現するだけでも東南アジア初の快挙ですし、法的に同性カップルの権利を保障する国としてアジアで3番目になります(イスラエルが1994年に一部の権利を認める同性パートナー法を実現、その後少しずつアップデートし、現在はシビルユニオンの状態です。また、海外で同性婚したカップルは国内でも結婚として承認するそうです。詳細はこちらの記事をご覧ください)
 
 また続報が入り次第、お伝えします。
 
 
参考記事:
A new blow for same-sex marriages(Bangkok Post)
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/2217215/a-new-blow-for-same-sex-marriages
Govt aims to expedite gender bill(Bangkok Post)
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/2217967/govt-aims-to-expedite-gender-bill
Thai Court Stops Shy of Granting LGBTQ Marriage Rights(Bloomberg)
https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-11-17/thai-constitutional-court-stops-shy-of-granting-marriage-rights
Thai Court Refuses To Legalise Same-Sex Marriages(Star Observer)
https://www.starobserver.com.au/news/thai-court-refuses-to-legalise-same-sex-marriages/207098
同性婚を認めない婚姻法に違憲判決、政府は市民パートナーシップ法案の制定を推進(タイランドハイパーリンクス)
https://www.thaich.net/news/20211120ud.htm

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