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凍結精子で生まれた実の子の認知届が受理されず、レズビアンカップルが提訴しました

 男性から女性に性別変更したトランスジェンダーの方が、凍結保存していた精子を使って女性パートナーとの間に子どもをもうけたところ、自治体から法律上の親として認められなかったため、親になれる地位確認(子の認知)を国に求める訴訟を東京地裁に起こしました。
 
 
 訴えたのは、トランス女性で会社員のBさんと、主婦Aさんの女性カップルです(Bさんはトランスレズビアンです)
 訴状によると、Bさんは性別適合手術を受けて生殖機能は失ったものの、精子を凍結保存していました。
 2017年にBさんの凍結精子をAさんに提供し、翌2018年夏にAさんが長女を出産。同様の方法で、2020年夏には次女を出産しました。DNA鑑定で、Bさんと子どもとが生物学上の親子関係にあることも明らかだそう。
 しかし、子を産んだAさんと2人の子どもとの間には法律上の親子関係がある一方、法的に結婚が認められないBさんと子どもとの間には、法律上の親子関係がありません。2020年3月、BさんとAさんはBさん名義で子どもたちの本籍地を置いていた自治体(東京都外)に長女の認知届※を提出しましたが、自治体側は法務局に相談した結果、そのような認知は無効であるとされ、不受理となりました。2021年5月には、家族が暮らす東京都内の自治体に再度認知届を提出したものの、自治体側が法務局に相談するとして、現在まで保留されたままとなっています。

※認知届は、婚姻関係にない父母との間に生まれた子と、その父との間に法律上の親子関係を生じさせる届出です。認知届を提出することによって、子どもの戸籍の父母欄に「父」の氏名が記載されるようになります

 お二人は、保留状態が続いたあげく、結局不受理となるといった状況が今後も続くかもしれないことを懸念し、提訴を決意しました。子の認知とともに、不受理を実質的に判断しているのは国だとして計320万円の国家賠償も求めました。
 6月4日に都内で会見を開いたBさんは、
「私たちは普通の家族ですし、出産の時は立ち会ったり、保育園も顔を出したりもしている」
「生物学上の親であるうえ、実際に子どもを監護・養育している」
「現状、子どもの身に何かあっても、保護者として扱われない。自分たちの認知を認めても誰に迷惑をかけるものではない」
「子どもがほしいという思いは性的少数者でも同じ。親子と認められなければ、病気や事故の時に、私は書類上、他人となる。病院が親と見なしてくれるのかいつも不安に思っている」
「最近ではLGBTの理解も広まってきていると感じていますが、その中で、国の理解が足りていないと感じています」
「私たちの認知が通ったとしても、誰も困らない。一般の方たちに迷惑がかかることではないと思うんです」
「今回の裁判が親子と認められずに困っている人たちの助けになれば」と語りました。
 
 原告代理人の仲岡しゅん弁護士(トランスジェンダーの方です)は、「認知されないことによって、子の福祉に反する形が続いているといえます。認知されれば、扶養に関する権利義務関係が発生し、相続の権利も得る。ところが、血縁関係があって現に養育しているにもかかわらず、法律上の親子関係がないからと、何かあっても法的には他人としてしか扱われないという問題が生じています。社会は多様化しており、同性カップルはこの社会的実体として存在しています。性別変更している人も現にいます。多様な性のあり方、家族のあり方があるにもかかわらず、国のシステムはそこに追いついていない。この問題を今回の訴訟を通じて訴えたいです」と述べました。
 そして、「最終的な目的は、Bさんと子どもたちの間に法律上の親子関係を形成すること。できる手段はすべてとる」として、大きく2つの訴えを提起しました。
(1)Aさんが2人の子どもを代理した原告として、Bさんを被告とする「認知の訴え」を東京家庭裁判所に提訴
(2)Aさん、Bさん、2人の子どもが原告となり、国に対する行政訴訟として、Bさんが2人の子どもの認知届を受理される法律上の地位にあることの確認と国家賠償請求を求めて、東京地方裁判所に提訴
 国家賠償請求を求めたことについては、「お金目的ではなく、国の対応が違法かどうかの判断をしてもらうためにおこなったもの」と説明しています。

 弁護士ドットコムによれば、認知を求めているBさんが「認知の訴え」で被告になるのは異例のことですが(認知の訴えは通常、訴訟を起こす前に調停による話し合いで解決を試みなければならないとされていますが、今回のケースでは、認知をすることはむしろ双方が合意しています)、争われるポイントは「なぜ認知を認めないのか」という一点です。
 自治体側は認知届の不受理について、理由を明らかにしていません。戸籍法に関する不利益処分については、行政手続法の適用対象外のため、自治体側からは「法律上は理由を付記する理由がない」と説明されたようですが、仲岡弁護士は、次のように語りました。
「認知届自体には何ら不備はないにもかかわらず、Bさんが自治体側から『法律の不整合がある』などと言われ、結果として不受理となっていることからすると、Bさんの性別変更の事実が理由だろうと考えています。戸籍には『父』『母』欄がありますが、社会的にも身体的にも法律的にも女性であるBさんの認知を受理すると、欄部分が『母』『母』、もしくは『女性である父』になることを認めないと整合性がつかないと自治体側が考えたのかもしれません。
 また、性別変更の要件などを定める性同一性障害特例法には、性別変更しようとする人が未成年の子をもっている場合には性別変更をできないという『未成年子なし要件』があります。長女が生まれた後に性別変更をしたBさんの認知を認めると、未成年の子がいるのに性別変更ができたことになるとして、性同一性障害特例法に抵触すると考えたのかもしれません」
「この社会は多様化しています。ゲイカップルやレズビアンカップルなど、同性カップルはこの社会には実態として存在している。Bさんのように性別変更をされている方が相当数いる。そういった多様な性のあり方、家族の在り方が現に存在しているにも関わらず、国のシステムが追いついていない。そのことを問うてほしいと思っています。原告と原告長女の間に親子関係が生じたからといって誰も困らない。むしろ親子関係が生じることで、幸せになる人が増える。そのことを訴えかけていきたいと思っています」

 民法では、認知は『父又は母』ができるとされています(779条)。弁護団は、たとえBさんが男性・女性どちらであっても、法律上認知できるはずだとして、それを認めないのは違法だと主張していくそうです。

 同性婚を認めず、トランスジェンダーの性別変更に厳しい要件を課している法制度の問題が、こうして、実の親子を法的に家族と認めない不条理を引き起こしていると言えます。Bさんが法的に親として認められることを願います。
 

参考記事:
性変更の女性、親の地位確認求め国提訴 凍結精子で子どももうけ(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210604/k00/00m/040/274000c
レズビアンカップル、性転換前の冷凍精子で生まれた子の「認知」求めて提訴…「法的に他人はおかしい」(弁護士ドットコム)
https://www.bengo4.com/c_18/n_13148/
レズビアンカップル、子どもの認知を求めて国提訴。一方が「男性」だった頃の凍結精子を用いた子、認知届受理されず(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60b82cd8e4b0f479d60cc383

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