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雑誌やWebメディアでもLGBT法案の今国会での成立を求める記事が続々と上がっています

2021年06月07日

 全国の新聞社の社説に続き、雑誌やWebメディアでも(自民党の対応を批判しつつ)LGBTの権利を擁護し、法案の今国会での成立を求める記事が続々と上がっています。
 

 小林節慶応大名誉教授による日刊ゲンダイの「LGBT法案への自民党内の不当な懸念 「差別禁止」は当然だ」は、たいへん舌鋒鋭いです。
「「差別は許されない」という文言は(中略)「行き過ぎた運動や、『訴訟』につながらないか?」
 ふざけないでほしい。
 LGBTが、当人の責めに帰せられない、先天的なDNAの問題であると科学的に証明された最近まで、LGBTは当人の悪趣味であるとされて、当事者は長年にわたり社会的な差別に苦しんできた。米国における黒人差別などと同様の不当な被害が多数記録されている。
 だから今、国家の意思として、「差別は許されない」と法律で宣言することは、全く正当で、緊急に必要なことである。
 もちろん、その意味するところは「差別禁止」以外の何ものでもない。それを立法府のメンバーが知らないはずはない。
 さらに、国法により禁止された行為を行った者がいたら、その法律の中に罰則規定がなくても、被害者は、その「違法性」を確認させて損害賠償を請求することができる(民法709条)。そして、裁判を受ける権利は、憲法32条により誰にでも保障された人権である。
 社会の中に現に存在する不平等(憲法14条違反)を発見したら、それを急激に是正できる権限が国会に授権された立法権である(憲法41条)。その法律に細則を整えて現実の国民生活の中に展開していくのが、内閣に授権された行政権である(憲法65条)。さらに、その法令が社会の中で裏切られたら、それを是正するのが、裁判所に授権された司法権である(憲法76条)
 このように、立法権と行政権と司法権がキャッチボールのように役割を分担し協力し合い、国民の権利を擁護しながら社会が発展していくように、憲法が民主的法治国家を構築してある。この機会に、自民党議員たちは憲法を勉強し直したらよい」


 FRIDAY「棚上げ「LGBT法案」なにが問題?「成立断念」本当の理由」では、「自民議員の問題発言も相次ぎ、その釈明に追われるなか、与党によるあっけない「放り出し」に、驚きが広がっている」と述べられています。
「長い議論と、当事者の苦悩、社会の意識を考えたとき、この法案をたんに「時間がないから」という理由で放り出すのはあまりに怠慢だろう。LGBTを「毛嫌い」する人が、議員のなかにも、社会にも一定数存在する。が、だからといって、人の「人権を守る」という法律を通さない理由にはならない。「LGBT法案」を通したことで「損をする」人はだれもいない」
「性的少数者は、少数であるがゆえに差別を受けてきた。当事者ではない人にとって、それは他人事だ。「差別される者」の痛みは、想像でしかない」
「かつて、女性には選挙に投票する権利がなかった。圧倒的な差別のなかに存在していた。今考えるとまったく理不尽だ。性的少数者も、それと同じかもしれない」


 BLOGOSの記事「LGBT理解増進法案を今国会で成立させよ これにすら反対する自民党議員の人権感覚の欠如」で猪野亨氏は、「自民党は保守派が暴走している構図です」と指摘します。
「これまでも自民党内の保守派と言われている人たちから常に難癖が付けられてきました。
 まるで汚いものを見るように見たり、生産性がないとか蔑視的に差別するなど、許されるものでありません」
「問題はLGBTに敵意を示す勢力があり、そうした人たちが意図的にデマを流しているという構図があります。
 一部の声のでかい保守派が巻き返しを図ったというものに過ぎず、このLGBT理解増進法案に反対というのでは自民党の常識が問われます」
「その根底にあるのが、「LGBTは種の保存に背く」「道徳的にLGBTは認められない」などの家父長制と埋めよ増やせよの時代錯誤の発想があるからです。
 保守派にとって女性は子どもを産む道具、機械であり安い労働力でしかないわけで、この秩序をぶち壊そうとしているのがLGBTの承認であり、夫婦別姓なのです」
「LGBTは自分には関係ない?
 そんなことはありません。私たちと共同社会を作っています。仲間です。
 多様性の承認を否定し、干渉してくる勢力があることこそ怖ろしいことです。この勢力は家父長制、父権の回復を目指す勢力と重なっているのですが、そうした人たちが私たちの中に土足に踏み込んでくるのです。自分はLGBTじゃないという次元で済む話ではありません」
「保守派という価値観でも他人に押し付けくる人たちって本当に怖いと思います。
 宗教だってそうでしょう。自分の信仰が正しいからお前も信仰しろ、と言っているのと同じです。
 自分と関係ないから他人が土足で踏み込まれても関係ないと言っているのではダメです」


 ニューズウィーク日本版(元記事はYahoo!)の「LGBT「理解増進」法案断念──なぜ保守派はLGBTに抵抗するのか?」で古谷経衡氏は、「なぜ保守派は、LGBTへの権利擁護にこれほどまで頑なに抵抗するのだろうか」という問題意識で、その理由と背景を探っています。
「LGBT問題の全般に於いて、保守派は「(LGBTへの権利付与は)日本の伝統にそぐわない」などと言っている向きがあるが、一体日本のどの時代の「伝統と文化」を保持したいのかと言えば、日本が長らく許容してきた衆道(男色)が存在した中世や近世ではなく、あくまで彼らが想定する社会のイデアは明治以降、特段、戦時統制期において、その理想像を投射しているのである」(本当にその通りです。戦国武将などはほとんど全員、小姓を寵愛し「菊花の契り」を結んでいます)
「今次LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案に反対した保守系議員は、「活動家に利用される」だとか「訴訟が乱発する」だのの理由を挙げて反対した。しかしこれは筆者からすれば額面上の理屈でしかなく、彼らの本心としては、「あるべき日本社会のイデア」が攪拌されることを最も恐れているのである」
「LGBT問題は、日本の保守派にとって鬼門である。性的少数者は、日本国籍の日本人である場合が多いが、「あるべき日本社会のイデア」という保守派の理想像を崩す"ノイズ"と彼らには映るからである。彼らは「規律と秩序」を何よりも重視するので、少数派が権利擁護の声を上げようとするのを頑なに許容しない」
「戦時統制期に出来上がった「ノイズを排除する」という封建的かつ自己矛盾した社会観を自民党内外の保守派が捨てない限り、LGBTなど性的少数者をめぐる「理解増進」法案は幾ら経っても成立不可能なのではないか」

 
 その他、『日経ビジネス』誌では「止められたLGBT法案 自民党には裏切られた思いだ」という松中権さんインタビュー記事が、BuzzFeedでは「何も悪くもおかしくもないよ」自民党議員の発言に傷ついたあなたに伝えたいこと」という、差別発言で傷ついているかもしれないLGBTQユースへの支援の記事(プライドハウス東京レガシーでのユース向けの無料相談の紹介など)が、ハフポスト日本版はこの間の動きを逐一紹介しつつ、「LGBT法案、諦めない。全国の自民党支部に要望書を提出、今からできるアクションとは?」では、今できるアクション(党三役にFAXを送るなど)をまとめています。
 

 
参考記事:
LGBT法案への自民党内の不当な懸念 「差別禁止」は当然だ(日刊ゲンダイ)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/290097

棚上げ「LGBT法案」なにが問題?「成立断念」本当の理由(FRIDAY)
https://friday.kodansha.co.jp/article/184982

LGBT理解増進法案を今国会で成立させよ これにすら反対する自民党議員の人権感覚の欠如(BLOGOS)
https://blogos.com/article/541241/

LGBT「理解増進」法案断念──なぜ保守派はLGBTに抵抗するのか?(ニューズウィーク日本版)
https://www.newsweekjapan.jp/furuya/2021/06/lgbtlgbt.php

止められたLGBT法案 自民党には裏切られた思いだ(日経ビジネス)
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00110/00007/

「何も悪くもおかしくもないよ」自民党議員の発言に傷ついたあなたに伝えたいこと(BuzzFeed)
https://www.buzzfeed.com/jp/sumirekotomita/pride-house-message-to-lgbtyouth

LGBT法案、諦めない。全国の自民党支部に要望書を提出、今からできるアクションとは?(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_60b992c3e4b00a70313e2042

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