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世田谷区が学校医や水防従事者などの同性パートナーに遺族補償、日本初の快挙

 世田谷区議会で、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、水防従事者、災害対策基本法に基づく応急措置業務従事者の同性パートナーにも遺族補償を行なう方針が示されました。上川あや区議の質問に答えたものです。世田谷区は昨年、同性パートナーも遺族として認め、新型コロナウイルス感染症の傷病手当金の申請を可能にすることを発表し、この2月から新制度を施行していますが、これに続く快挙と言えます。
 
 
 世の中には、いわゆるお役所勤めの方や自衛官、警察官、消防士などのほかにも、市区町村でも様々な公務に就いている方たちがいらっしゃいます。世田谷区はこのたび、そうした方たちのうち、現在320名余りいる学校医、学校歯科医、学校薬剤師の公務災害補償について世田谷区教委が、水防法に基づく水防従事者、災害対策基本法に基づく応急措置業務従事者の遺族補償について区長部局が新制度を構築して、同性パートナーに遺族補償を行なうことを決めました。
(以下、世田谷区議会ライブ中継より)
  
 15日の区議会で上川あや区議は、区が公的に行ってきた遺族補償から同性パートナーへの補償が抜け落ちていることについて質問しました。
「河川の増水時等に、区の依頼を受け、水防活動に従事してくださる地域住民等の方々、また、同じく災害時に、区の依頼を受け、応急措置に就いてくださる住民等の方々が亡くなった場合の遺族補償についてです。
 これらについては、区条例「水防又は応急措置の業務に従事した者の損害補償に関する条例」に基づきカバーされ、男女の事実婚なら補償対象となり、「遺族補償一時金」や「遺族補償年金」が支払われる一方で、同性パートナーは対象外。何ら補償もなく放置されています。
 また、区立学校の検診事業等にご協力をいただく地域の医療者のみなさん――学校医、学校歯科医、学校薬剤師の公務災害補償でも、男女の事実婚なら遺族補償の対象となる一方で、同性パートナーは対象外。ここでも遺族補償の一時金/年金ともに支払われない不平等が放置されています。
 区は2015年11月、全国に先駆け同性パートナーシップ宣誓制度をはじめた際、区長と副区長が私の要請を容れ、区内に2つずつある医師会と不動産団体のそれぞれに制度の周知と同性パートナーも家族として受入れるようとの要請をしてくださいました。
 また、同趣旨で昨年11月の「世田谷区病院長会」においても、区から各病院長に対し、病状説明や面会、手術同意等において同性カップルを法的な婚姻関係にある親族と同様に受け入れるよう、依頼をしてくださったはずです。
 ところが先に述べた通り、区立学校の事業に協力する学校医、学校歯科医、学校薬剤師の公務災害補償では、同性パートナーは遺族として扱われず、公務災害補償の対象外です。
 区が区内医療者に対して求めてきたことと、自らがやっていることが違うのです。
 区の男女共同参画と多文化共生の条例では、同性カップルに対する差別は禁止されています。区は率先して、これら遺族補償についても平等性を担保する責任があるはずです。
 新型コロナウイルスに罹患し、死亡した国保加入者の傷病手当金の遺族支給に関しては、区が私の求めに応じ、この2月から同性パートナーに対する遺族支給を同額とする新制度を施行しています。
 区内で水防活動等に従事する方や、学校医等の遺族補償に関しても、国の法律にもとづく遺族補償とは別に、区の独自制度を立ちあげることで、同性パートナーにも平等の遺族補償を担保していく必要があると考えます」

 この質問に対して、区は、「地方自治体として法令に反しない範囲において様々な区民サービスを独自に行うことが可能であると考えております。水防業務に従事した地域住民の方が亡くなった場合や学校医の方が亡くなった場合などにおいて、亡くなった方の同性パートナーは法制度により遺族補償の対象となっておりませんが、亡くなられた方の同性パートナーを対象に、区が何らかの給付を独自に設けることは既存の法制度と矛盾するものではなく、法制度を補完するものとして可能であると認識しています引き続き、関係所管による制度の検討を支援してまいりたいと考えております」と答弁しました。
 水防業務に従事した地域住民の方については、水防法等の法令に基づく「水防又は応急措置の業務に従事した者の損害補償に関する条例」によって、水防等に従事した者が業務中にケガをした場合の療養補償や休業補償のほか、亡くなられた場合の遺族補償および葬祭補償を規定していますが、現状、同性パートナーは含まれていないため、「関係所管と連携いたしまして、区独自の制度策定について鋭意検討を進めてまいります」とのことです。
 また、学校医等の公務災害補償については、教育委員会が学校保健安全法に基づいて区立小・中学校へ学校医及び学校歯科医、学校薬剤師、約330名の方々を配していますが、学校への往復路で交通事故にあった場合や業務中にケガをした場合などの療養補償や休業補償、亡くなられた場合の遺族補償は現状、同性パートナーは支給対象に含まれていません。教育委員会としても「関係所管と連携して課題の整理を行ない、同性パートナーを支給対象とした独自の補償制度の構築に向けて検討してまいります」とのことです。
 
 
 このように、本来は配偶者(家族)として遺族補償が受けられるはずなのに、国が結婚を認めないがゆえに制度的補償からこぼれ落ちてしまっている(名古屋市のゲイの方の犯罪被害遺族給付をめぐる訴訟でも名古屋地裁が「社会通念」を口実に支給を認めず、不条理な構造的差別が再生産されてしまっている)同性パートナーを救いたいと、少しでも公正に扱われるように努めたいという強い意志で、上川あや区議と世田谷区が、今回、また一歩、道を切り開きました。結婚によって配偶者に与えられる権利は何千もの様々な特典のパッケージのようなものですが、制度をよく見ていくと、実は必ずしも同性カップルが排除されているわけではなく、「地方自治体として法令に反しない範囲において様々な区民サービスを独自に行うことが可能」な分野もあり、それを一つひとつクリアしていくという骨の折れる作業を進めてくださっているのだと思います(今回も、消防士さんについても補償の話を進めていたのですが、実は都の管轄だということがわかり、あきらめた…という話を聞いています)
 世界に目を向けて見ると、80年代にバークレーという小さな市でドメスティック・パートナー法ができたのを端緒として、デンマークで登録パートナーシップ制度(シビルユニオン)ができたり、当事者やアライの方たちが行政や議会に働きかけたり、裁判を起こしたり、様々な運動があって、少しずつ権利が認められていき、結婚の平等へと近づいていきました。性的指向で差別することは許されないということは人権上の普遍的真理で、いつか必ず平等・公正な制度の実現という形で実を結びます。世界各地で本当にたくさんの当事者やアライの方が、この平等・公正の実現というムーブメントに加わり、それぞれの持ち場で尽力してこられました。日本では間違いなく、上川あやさんと世田谷区が、そのトップランナーで、今も走り続けてくださっています。心から敬意を表します。

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