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米連邦最高裁がトランスジェンダーのトイレ使用制限は違憲であるとの判断を下しました

2021年06月30日

 米連邦最高裁は28日、トランス男性の元高校生ギャビン・グリムさんが、学校で男性用トイレの使用を禁止されたのは憲法違反だと訴えていた訴訟について、自認性でのトイレ使用を禁止したのは違憲だとした高裁の判決を支持しました。

 
 訴訟は2015年、バージニア州の高校生だったギャビン・グリムさんがグロスター郡教育委員会を相手に起こしたのが最初です。グリムさんは在学中、男性と自認していることを高校側に伝え、当初は男性用トイレの使用が認められていました。しかし、在校生の保護者から郡教委にクレームが寄せられたため、その後は「性自認の問題がある生徒」専用のトイレを使うことを強制されました。グリムさんは自殺を考えたり、トイレに行くことを我慢して尿路感染症になったりしました。代理人を務めたACLU(アメリカ自由人権協会)は、性差別を禁じた教育改正法第9編(通称タイトルナイン)に基づき、学校の対応を訴えましたが、バージニア州の連邦地裁は、タイトルナインは性自認や性表現ではなく生物学的な性別についての規定だとして、この訴えを却下しました。グリムさんは控訴しました。
 2016年、連邦第4巡回区控訴裁判所(連邦高裁)は、グリムさんの訴えを認めました。このときの判決は、オバマ大統領が公立学校において自認性に基づくトイレ利用を認めるよう求めた通達でした。高校側は上告し、2017年3月までに連邦最高裁が裁定を下すことになっていました。
(2017年2月のグラミー賞授賞式のステージで、トランス女性俳優のラヴァーン・コックスは、「みなさん、どうか、ギャビン・グリムくんのことを検索してみてください。彼は、3月に最高裁判所に行きます。みんなで彼を応援しましょう!」と呼びかけました)
 ところが、連邦最高裁は高裁判決を判断せず、審理の差し戻しを命じました…(トランプ政権下で教育省がタイトルナインの解釈を生物学的な性別に限定する見方を採用し、オバマ大統領の通達が撤回されたことが影響しています)
 やり直しとなった裁判。バージニア州の連邦地裁は2019年、高校側の対応が法の下の平等を定めた憲法修正14条やタイトルナインに違反するとの判決を下しました。連邦高裁も2020年、地裁判断を支持しました。郡教委は上告し、再び最高裁の判断を仰ぐことになりました。
 そして今回、連邦最高裁が高裁の判決を支持し(郡教委の主張を退け)、判決が確定したかたちです。
 
 ギャビン・グリムさんは声明で、「長い闘いが終わってうれしい」と語りました。
「ナースの部屋、多目的トイレ、女子トイレを使うよう強制されたのは、屈辱だったし、わざわざそうしたトイレに行かされるのは、僕の学校生活を本当に妨害することだった。トランスジェンダーの若者は、学校や議員らから屈辱を受けたりスティグマを刻印されることなく、心安らかにトイレを利用してよいはずだ」  
 
 LGBTQ権利擁護団体は、彼の長年の闘いをねぎらい、称賛するコメントを発表しました。
 ヒューマン・ライツ・キャンペーンのアルフォンソ・デヴィッド代表は、「全ての人は、勇敢にも自身がどんな人かということを示すというただそれだけのことで差別される恐れを抱くことなく、高等教育を受ける権利があります」と述べました。
「私たちは、ギャビン・グリムの長年にわたるこの闘い――彼の回復力、勇気、行動力が報われたとことを祝福します。おめでとう、ギャビン!」

 GLAADのサラ・ケイト・エリス代表は、「これは、人としての基本的な尊厳へのアクセスを拒絶される心配なく、自分自身でいられることを望んできたトランス学生の勝利です」と述べました。
「私たちの学校、社会はより安全で、みんなが歓迎されるような機会をもっと提供します。私たちの国とコミュニティは、ギャビン・グリムの、全ての子どもが包摂され、価値があると認められ、保護されるための勇気と闘いに強く感謝します」
 
 昨年、トイレ利用を制限されたことがあるトランスとノンバイナリーの若者の自殺率は1.5倍も高くなるという調査結果を発表していたトレヴァー・プロジェクトのアミット・ペイリーは、「これは、トランスジェンダーの平等と人権にとっての記念碑的な勝利です。長年のギャビン・グリムとその弁護士による闘いで示された大胆な裁定は、感激という言葉では足りないくらいです」

 ACLUのLGBTQ&HIVプロジェクトの弁護士、ジョシュ・ブロックは、「最高裁がトランスの若者に寄り添った高裁判決を支持しました。この国の全てのトランス学生にとって、これは信じられない勝利です」と語りました。
「我々の仕事はまだ終わっていません。この国のあちこちの州のトランス学生をターゲットにしたアンチ・トランス法と闘い続けます」

 米国では、いくつかの州でトランスジェンダーのトイレ使用制限を容認しており、また、そのような州法の導入を検討している州も10以上に上っています。
 また、40近い州が、トランス学生のヘルスケアやスポーツ参加をターゲットにした州法を提出している。フロリダ州など9つの州がすでにトランス女子学生のスポーツ参加を禁じています。
 


参考記事:
トランスジェンダーのトイレ制限は違法、米最高裁が判断(ロイター)
https://jp.reuters.com/article/usa-court-transgender-idJPL3N2OB0XS
トイレ使用禁止違憲 性自認訴訟で米最高裁(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20210630/ddm/007/030/079000c
SCOTUS Decision on Trans Youth Gavin Grimm Is Major LGBTQ+ Victory(Advocate)
https://www.advocate.com/transgender/2021/6/28/scotus-decision-trans-youth-gavin-grimm-major-lgbtq-victory
GAVIN GRIMM V. GLOUCESTER COUNTY PUBLIC SCHOOL BOARD(ACLU Virginia)
https://acluva.org/en/cases/gavin-grimm-v-gloucester-county-public-school-board

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