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【追悼】伝説のゲイ映画『ピンクナルシス』のジェームズ・ビドグッド監督

2022年02月01日

 日本で1993年に公開された『ピンクナルシス』という映画を憶えている方もいらっしゃることでしょう。セリフがなく、独特のピンク色のライティングで若いゲイのエロティックなファンタジーが映し出された耽美的な作品で、ピエール&ジルやデヴィッド・ラシャペルのような世界的なフォトグラファーに影響を与えました。この『ピンクナルシス』を製作したジェームズ・ビドグッド監督がNYの自宅で亡くなったことがわかりました。88歳でした。

 ジェームズ・ビドグッドはウィスコンシン州マディソンで生まれ、1951年、18歳の時にNYに移り、パーソンズ・スクール・オブ・デザイン(パーソンズ美術大学)で学び、高級な舞踏会のガウンを製作するところからキャリアをスタートしました。彼はショーウィンドウのデザインやスタイリスト、フォトグラファー、ファッションデザイナーの仕事をしたほか、(女装が違法だった時代に)ドラァグクイーンとしてパフォーマンスしていました。
 そしてビドグッドは7年かけて『ピンクナルシス』を撮影しました。彼は脚本、監督、編集もつとめ、そのほとんどはマンハッタンの狭いアパートで撮影しました。それは若いゲイのセックスワーカー(ビドグッドと同居していたBobby Kendallが演じました)のファンタジーを探求した作品です。他のキャストのなかには、俳優のDon Brooksや前衛舞台芸術家のCharles Ludlamなどがいました。『ピンクナルシス』は1971年にリリースされ、アンダーグラウンドの映画シーンでたいへんな人気を博しました。しかし、プロデューサーとの意向の違いから、彼は自身の名前を作品から外し、監督名は「匿名(名無し)」とされました。結果、『ピンクナルシス』はアンディ・ウォーホールの作品に違いないと長年、信じられるようになりました。

 1991年、この伝説的なゲイ映画は、カリフォルニアの映画会社Strand Releasingによって再上映されます。ここにきてようやく、ジェームズ・ビドグッドの名が認知されるようになりました。
「ビドグッドは息を呑むようなカメラワーク、手の込んだ森のシーン、ペルシャのファンタジーのシーケンス、ネオンの地獄をを生み出した」と、エド・サイコフは『Advocate』誌で述べています。 
 
 1999年、ブルース・ベンダーソンというゲイライターのテキストで写真集『Bidgood』が発売されました。このアーティストの20世紀半ばの若い男性の写真はエロティックで、素晴らしくスタイリッシュでした。
「彼は映画的なエクストラバガンザ(奇抜でゴージャスなショー)をマンハッタンの小さなアパートに現出させた。『Muscleboy』や『The Young Physique』みたいなね」と、『Another Man』誌への寄稿者は2019年に語っています。
「私は、まるで『プレイボーイ』誌のプロフェッショナルの女性たちのようなゴージャスさの若い男たちの裸を欲していた」と、ビドグッドは同誌に語っています。
  
 ビドグッドは晩年、クリスチャン・ルブタンに作品を提供したり、タッシェン社の本『The Big Penis Book』でインタビューに登場したり、また、NYの「Museum of Sex(セックス博物館)」で写真展が開催されるなどしました。
 彼はデヴィッド・ラシャペルやピエール&ジル、チャーリーXCX、リル・ナズ・Xらに影響を与えたことでも知られています。

 今年1月31日に亡くなり、NYのシーダーパーク墓地に埋葬されたそうです。
 R.I.P.


 
参考記事:
James Bidgood, Creator of Film Pink Narcissus, Has Died(Advocate)
https://www.advocate.com/people/2022/2/01/james-bidgood-creator-film-pink-narcissus-has-died

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