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【北京五輪】ノンバイナリーとして初の冬季五輪出場選手となったティモシー・レデューク、フィギュアペアで8位入賞

2022年02月20日

 2月19日、北京冬季五輪フィギュアスケート・ペアの後半フリーの競技が行なわれ、ノンバイナリーとして初めて冬季五輪に出場した米国のティモシー・レデュークと、アシュリー・ケイングリブルのペアが、8位に入賞しました。


 18日のショートプログラムでは7位だったアシュリー・ケイングリブル&ティモシー・レデュークのペア。SPを終えた後、取材に対してレデューク選手は「スケートで成功するために、ジェンダーなどの面で普通とは少し異なる道を歩んできました。ですから、二人とも多少の困難や葛藤がありましたが、堪えてきました。そして今、私たちは、五輪の舞台でこのような喜びの瞬間を迎えることができるのです」と笑顔で語りました。
 19日のフリーにはお揃いのパンツスタイルの衣装で登場し(レデューク選手、メイクもしてましたね)、高さのある安定したリフトやコンビネーションスピンで最高評価のレベル4を獲得するなど息の合った演技をみせたものの(流れるような、美しい演技でした)、ジャンプでケイングリブル選手が2回転倒してしまったこともあり、合計198.05で8位入賞となりました。
 レデューク選手はフリーの演技を終え、「五輪は夢だった。本当に幸せ」と語りました。一方で「まだ自分自身を変えないといけないと思っている(性的マイノリティの)人がいる。自分が滑ることで多くの人々の道が切り開かれていくことを願っている」とも語りました。
 
 ティモシー・レデューク選手は冬季五輪初のノンバイナリーの選手としてメディアの注目度も高く、2月4日には毎日新聞で「多様な性が集う五輪に」という記事でフィーチャーされていました。ノンバイナリーとはどういうことかという説明のほか、また、レデューク選手が地元メディアに対して語った「私の願いは、全ての性的マイノリティの選手が、スポーツの世界で自らをオープンにして成功できるんだという方向に動き出すこと。私たちはこれまでも常にスポーツの一部だった。ただ、いつもオープンにすることができなかっただけ」「確かに状況は進歩しているが、まだやるべきことはたくさんある。気軽にもう大丈夫、性的マイノリティにとって新しい時代が来たとは言えない」という言葉も紹介されました。

 ペアの競技が終わったあとのNHKの記事でも、ティモシー・レデュークの生い立ちや、クィアとしてのヒストリーが紹介されています。
 2002年のソルトレークシティ五輪のフィギュアスケートで女子シングルのサラ・ヒューズ選手が金メダルを獲得するなど、米国の選手たちの活躍を目の当たりにして、12歳でスケートを始めたというティモシー・レデューク。
 NBCのポッドキャストに出演したレデューク選手は、クィアであることで周囲から受けた偏見や差別について語っています。18歳の時にゲイであることを両親にカムアウトしましたが、理解してもらえず、「悪魔払い」されたこともあったといいます。また、フィギュアスケートの当時のコーチからは「もっと男性らしくすれば試合に勝てる」などと心ないことばを浴びせられたと語っています。
 そんなレデューク選手の環境に変化が訪れたのは、6年前にペアを組んだケイングリブル選手との出会いでした。ありのままを受け容れてくれるケイングリブル選手とフィギュアスケートに打ち込み、2017年には全米選手権で3位入賞を果たしました。その後、レデューク選手は、ゲイではなくノンバイナリーであるとのアイデンティティを持つことをカムアウトし、全米選手権で優勝し、今回初めてのオリンピックに臨みました。
 Outsportsは、「メディア上での”女々しい”男性の表現を禁じるような中国では、レデュークの存在自体が重要な意味を持つ」と称えています。



 なお、フィギュアスケート・ペアには、もう2人、オープンリー・ゲイの選手も出場していました。
 平昌五輪で、オープンリー・ゲイとして史上初の金メダルを獲ったゲイの選手となったカナダのエリック・ラドフォード選手は、さすがはベテランと思わせる、素晴らしく安定感のある、しなやかで美しい滑りでベストを尽くしましたが、前日の練習でイタリアのペアと激突し、ペアを組むヴァネッサ・ジェームズ選手が腰を痛めるというアクシデントがあったことも影響したと見られ、12位に終わりました(ちなみに4年前はメーガン・デュアメル選手と出場しましたが、今回はペアが変わっています。フィギュア界ではほとんど見られない黒人の女性だったということも素敵でした)
 それから、イタリアのフィリポ・アンブロジニ選手は、全体のトップバッターでしたが、安定感のある、とてもいい演技でした(パープルの衣装もキレイでした)。結果は14位でした。

 こうして、華やかながらも熱い戦いだった北京五輪フィギュアスケートの全プログラムが終了しました。
 本日行なわれたエキシビションには、ギヨーム・シゼロン選手もガブリエラ・パパダキスと一緒に出演していました。
 


参考記事:
多様な性が集う五輪に 宇多田ヒカルさんも告白「ノンバイナリー」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220204/k00/00m/050/091000c
フィギュアスケート “ノンバイナリー”公表選手のペアは8位(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220220/k10013493181000.html
ノンバイナリー公表、初の演技 フィギュア冬季五輪で(共同通信)
https://www.47news.jp/news/7436149.html
Timothy LeDuc, first out non-binary Winter Olympian, breaks the binary in Beijing(Outsports)
https://www.outsports.com/olympics/2022/2/1/22912014/timothy-leduc-nonbinary-2022-winter-olympics-figure-skating-lgbtq-beijing-china-ashley-cain-gribble

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