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神道政治連盟が「同性愛は精神障害で依存症」「LGBTの自殺は本人のせい」など誤謬と悪意に満ちた冊子を自民党系議連で配布していたことが明らかになりました

2022年06月30日

 神道政治連盟という政治団体が、自民党議員が多く参加する国会議員連盟の会合で、「同性愛は精神障害で依存症」「回復治療や宗教的信仰によって変化する」「LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではなく、LGBTの人自身の悩みが自殺につながる」などと書かれた冊子を配布しているという衝撃的なニュースが届きました。松岡宗嗣さんがYahoo!の記事「「同性愛は依存症」「LGBTの自殺は本人のせい」自民党議連で配布」で明らかにしたものです。
 

 記事によると、全国各地の8万社の神社が参加する宗教法人「神社本庁」を母体とする「神道政治連盟」という政治団体があり、その趣旨に賛同する国会議員により構成される議員連盟「神道政治連盟国会議員懇談会」の会合が今月開かれ、その場で「同性愛は心の中の問題であり、先天的なものではなく後天的な精神の障害、または依存症」「(同性愛などは)回復治療や宗教的信仰によって変化する」「世界には同性愛や性同一性障害から脱した多くの元LGBTの人たちがいる」「LGBTの自殺率が高いのは、社会の差別が原因ではなく、LGBTの人自身の悩みが自殺につながる」「性的少数者のライフスタイルが正当化されるべきでないのは、家庭と社会を崩壊させる社会問題だから」「同性愛の原因について、家庭環境、特に親子関係に問題がある」「同性愛者の母は、子供と密接な関わりを持つ親密な母や子供に対して過度に統制的で抑圧的な母が多く、同性愛者の父は子供との距離感があったり、敵対的、或いは子供に対して否定的な父が多い」などと書かれた冊子が配られました。「同性愛と同性婚の真相を知る」という弘前学院大学の楊尚眞教授による講演録だったそうですが、ここまでひどい主張は見たことがないというレベルの偏見と差別に満ちた、非科学的(トンデモ)な、憎悪すら感じられるような内容です。
 同性愛は障害や病気ではなく、したがって治療もできず(コンバージョンセラピーは“治療”とは名ばかりの危険な行為であり人権侵害だとして欧米諸国が次々に禁止しています)、その必要もないということは、松岡さんも丁寧に反証している通りです。
 
 問題は、このカルト的とも言うべき誤謬と悪意に満ちた主張が、263名もの国会議員が会員として名を連ね、自民党議員の多くが参加している議連で、大学教授によるもっともらしい言説として広められていることからも伺えるように、神道政治連盟が自民党政権に強い影響力を与えているということです。
 松岡さんが「性的マイノリティの自殺率が高い原因が「本人のせい」であるかのような言説に非常に憤りを覚えた」と書いていて(本当にそうですよね。これまでに亡くなった方たちへの冒涜でもあります)、以前、杉田水脈議員が「『同性愛の子供は自殺率が6倍高い。それでも良いのですか?』って言われまして(笑)」と薄ら笑いながら言っていて、憤りを覚えたことを思い出しました。どうしてあのような非人道的な発言が平然とできるのか…ということの理由が窺えます。「LGBTは種の保存に抗っている」発言の簗和生議員も、「LGBT差別があったら訴訟となれば社会が壊れる」発言の西田昌司議員も、みなさん、神道政治連盟国会議員懇談会の会員です。
 日本には他国のような宗教的なアンチがないからLGBTQに寛容、といった話が昔からまことしやかに語られてきましたが、実はそうではなかったのです。(なお、2015年の記事ですが、Yahoo!「保守はなぜ同性愛に不寛容なのか?~渋谷区パートナーシップ条例をめぐる怪~」によると、神社本庁だけでなく、様々な宗教が保守派の政治家に影響を及ぼしているようです)

 
 松岡さんの記事は、このように続きます。
「参院選で各政党に対し、さまざまなアンケート調査が行われているが、性的マイノリティに関する法整備について、野党だけでなく与党の公明党も含めて年々賛成の割合が高まっている。たとえば、「みんなの未来を選ぶためのチェックリスト-参議院選挙2022-」でも示されているように、「同性婚」については、党として反対なのは、主要政党のなかで今や自民党だけだ。
 朝日新聞の調査によると、昨年自民党が提案し、結局自民党内の強硬な反対によって国会提出が見送りとなった「LGBT理解増進法案」を早期に成立させるべきか、という質問に対して、「賛成」は自民党候補者のうち40%。半数を割ったのは自民だけだという。
 これは、自民党議員や候補者一人ひとりの認識を変えたら良いというレベルの話ではない。政党の背後には宗教団体があり、その「票」も含めた影響力が強くあるかぎり、または党として性的マイノリティの権利保障を進めなければ票が集まらないという状況にならないかぎり、この現状を打破するのは難しいとも言える」
「性の多様性をめぐって、社会の認識は大きく変わりつつある。しかし、明らかに政治領域だけが一向に変わらず、むしろかたくなに変わろうとしない現状がある。
 たとえ保守の立場から"慎重"に進めたいという意識があるとしても、政権政党の中で、ここまで非論理的で事実に基づかない、明らかに悪質な差別的言説を、党内の大多数の議員に配ってしまえるような状況には、驚きを隠すことができない。
 このまま性や家族のあり方について、差別や不平等を温存し続ける社会で良いのか。日本社会に生きる市民一人ひとりの行動によって、変えていってほしいと思う」

 SNS上では、たくさんの批判や、傷ついたかもしれない当事者を気遣う声など、様々な反応が上がっています。

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