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富山市の同性パートナーシップ証明制度導入を阻止するために旧統一教会幹部が議会棟で講演…教団が日本の政治に巧妙に入り込んでいることがLGBTQ施策の妨げに

2022年08月05日

 昨年末、富山市が同性パートナーシップ証明制度の導入を検討すると発表しましたが、これを受けて、富山市議会の自民党会派が旧統一教会の幹部を講師に呼んで、同性婚などLGBTQの権利擁護に反対する内容の「勉強会」を議会棟で行なっていたことが複数のメディアで明らかにされました。旧統一教会と富山政界との近すぎる関係が問題視されるとともに、教団が日本の政治に巧妙に入り込んでいることが日本でLGBTQ施策が進まない一因になっているとの見方がいよいよ強まってきています。

 
 富山市の藤井裕久市長は昨年12月22日、同性パートナーシップ証明制度の導入を検討していることを発表しました。県も検討しており、導入時期や行政サービスの内容は「県と歩調を合わせたい」と語りました。
 これに対し、自民党の市議が議会棟で勉強会を開催、そこに招かれた講師が旧統一教会の政治団体である国際勝共連合の幹部だったことが明らかになりました。
 
 チューリップテレビのニュース「富山市議が旧統一教会系幹部の勉強会を議会棟で複数回開催 “同性婚反対”教義に近い内容も」によると、今年1月、富山市議会自民党が議会棟で勉強会を開催し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の政治団体である国際勝共連合の幹部、青津和代氏が講師として招聘されました。講演の内容は、同性婚などLGBTQの権利に反対するものでした。
 青津氏を講師に呼んだ自民党の成田光雄市議(市議会の副議長も務めています)は、「例えばサウナとか入浴施設にしてでもパートナーシップ制度か推進する地域、または法律でそれを認める地域だったら、いろんな問題が事件につながったり、マイナスの部分を青津氏がはっきりと実例をもとに言われていたので、これは知っておくべきだな、別に反対していくことを推進していこうというのじゃなくて、そういう情報も知ってて正しい判断をしていこうということです」と語りました。
 講演会に参加した市議の一人は、「LGBTについて今進めようとしている、理解をしていこうということには反対の立場の方でしたね。私はLGBTについて理解を深めればいいという立場だったので、私の考え方とは反対の方だなと思いました」と語っています。
 
 議会棟で議員を集めて反社会的なカルト教団の幹部の講演が行なわれていたことについて、霊感商法問題に取り組む紀藤弁護士は大きな問題があると批判しています。「無償で議会の会議室を宗教団体の活動の一環として借りるということになると、それは政教分離の観点から問題になる場面があると思います」「青津和代さんという方は、統一教会の熱心な信者で特に勝共部門の責任者の一人で、国際勝共連合の選挙対策とかを実際に担当していたという人物です。いわば統一教会の活動のかなり大きな部分を担っていた人物を議会の(建物の)中に呼んで、そこで講演をするということ自体も統一教会の活動に加担するようなものです」「我々被害者を救済する立場から見ると、到底容認できないし、今回こういう形で統一教会の問題が大きく報じられて、多数の被害者が出ていることがわかったわけですから、これ以上やめてほしいというふうにつくづく思います」

 北日本放送のニュース「“統一教会”と富山県内の政界(前編)」で、県内で統一教会と政治の関わりを調査している富山大学非常勤講師の斉藤正美氏は、「富山県も富山市も今、パートナーシップ制度を作ろうという機運があって。それを作らないように動いてるんだろうなというのは、推測はできます」と語っています。「男と男、女と女の結婚では子どもができないだろうと。結婚して法律婚で、異性愛で、結婚して子どもをたくさん持つ、っていうのが旧統一教会の考えで教えてるし、LGBTQっていう、同性愛や、同性婚は自分たちの協議に反する。富山県でも今、(パートナーシップ制度を)作ろうってなっていることについて、これはとんでもない、食い止めねばってなっていることは想像に難くない」「公共的政策を、いろんな人が関わって作るもののはずなのに、一部のあの、宗教的な考え持った人たちが議員さんたちに取り入って、そっちの方向に政策が行くっていうのは、非常に問題だと思っています」
 
 TBSのニュース「旧統一教会の教えに「LGBTは罪なのです」国会で進まない“多様性”法案との関係は【報道1930】」で、モンタナ州立大学の山口智美准教授は、「ここまでやってたのかって、ちょっとびっくりしました。もともと旧統一教会と関連団体は勉強会をよくやるんですが…。具体的な政策、例えば富山ではパートナーシップの導入を阻止するとか、同性婚を阻止するとか、そういう政策面で影響したり…」と語っています。

 教団の文鮮明教祖の発言集「天聖経」には、「今、アメリカでレズビアンやホモセクシャルやゲイのようなものが起きています。それは罪です。罰を受けなければなりません。これは自分勝手な愛です。すればするほど破壊されていくのです。破壊をもたらすのです。人間破綻、家庭破綻、子女破綻、国家破綻、世界破綻、宇宙破綻をもたらすというのです。破壊されれば自然になくなります。人間がそうなる時はこの人類が滅亡するのです」と書かれています。このような恐ろしい教義に基づいたカルト教団が、(富山に限らず)地方の選挙に協力してシンパ議員を増やし、勉強会を開いてLGBTQ施策を阻止しようとしたり、(こちらの記事でも紹介したように)実際にLGBTQ差別を禁止する条例をひっくり返したりしてきたことは、深刻な問題です。
 TBSの「報道1930」は、旧統一教会が日本の政治に巧妙に入り込んでいることが日本において性の多様性の施策が進まない一因にもなっているのではないかと指摘しています。
  
 宗教と政治の問題やカルト問題を研究してきた上越教育大大学院の塚田穂高准教授は、冷戦集結後の90年代に「家族や性的“純潔”を重視する教えから、夫婦別姓や性教育、ジェンダーフリー、男女共同参画、同性婚、LGBTなど性的マイノリティへの理解といった動向を新たな“共産主義”的価値観だとして敵視するようになった」と説明しています。

 北丸雄二さんがハフポストに寄稿した「安倍元首相銃撃事件が炙り出した選択的夫婦別姓、同性婚が「論外」とされる理由」が、この問題を見事に解き明かす決定版的な記事になっていると思います。ぜひご覧ください。
 
 
 
参考記事:
富山市パートナーシップ制度導入へ 市長「県と歩調合わす」(北日本新聞)
https://webun.jp/item/7814711
【独自】富山市議が旧統一教会系幹部の勉強会を議会棟で複数回開催 “同性婚反対”教義に近い内容も(チューリップテレビ)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/tut/104931
“統一教会”と富山県内の政界(北日本放送)
https://www.knb.ne.jp/nnn/news101pxpgf52kxmkhomz0.html
旧統一教会の教えに「LGBTは罪なのです」国会で進まない“多様性”法案との関係は【報道1930】(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/116158
政治と旧統一教会、検証を 塚田・上越教育大大学院准教授に聞く(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20220805/ddm/012/040/119000c
安倍元首相銃撃事件が炙り出した選択的夫婦別姓、同性婚が「論外」とされる理由(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_62e9d4bde4b00f4cf2354809

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