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フィギュアスケートペアでソチ五輪にも出場した高橋成美さんがカミングアウト

2022年10月17日

 フィギュアスケートのペアで活躍し、2014年ソチ五輪に出場した高橋成美さんが10月16日、プライドハウス東京が主催するトークイベントで、自身が性的マイノリティ(クィア)であることをカムアウトしました。 
 
 
 プライドハウス東京は2019年、性別、性自認、性的指向、性別表現に関わらず、参加者の誰もが安全、安心に参加できる大会運営を実現するとともに、市民参加型スポーツイベントにおける運営ノウハウを蓄積していくことを目指し、東京マラソン財団と協定書を締結しています。これに基づき10月16日の「東京レガシーハーフマラソン」(および「東京マラソン」)の大会運営と、大会を通じた多様性社会の実現に向けて、大会ランナー、ボランティア、職員向けのLGBTQ+勉強会の開催など、東京マラソン財団と一緒に様々な取組みを行なってきました。16日当日には、国立競技場でプライドハウス東京のブースが出展され、14:30〜15:30にトークショーが開催され、八方不美人のみなさんやオープンリー・ゲイのフィギュアスケーター、ハビエル・ラジャさんとともに高橋成美さんも登壇しました。
 2012年、フィギュアスケートの世界選手権にペアで出場し、日本選手初の銅メダルを獲得、2014年にはソチ五輪に出場、2021年から日本オリンピック委員会(JOC)の理事も務めている高橋成美さんはこのイベントで、「自分はLGBTに分類されないQだと思う」「アスリートとして頑張ってきたことを認めてもらっているからこそ、自分たちが(性的マイノリティであると)言うことで将来に影響を残せると思い、発信した」「ハッキリとはわからないけど、30年間(誰かと)交際したことがない。スケートに夢中だったことはあるけれど、自分は何なのか模索している。彼氏も彼女もいない自分は何なのって悩むことがあった。正直(告白することで)怖い部分はたくさんあります。でも誰かが発信しないと始まらない。それが自分なのかなって」と語りました。フィギュアスケートは冬季競技のなかでも最もカムアウトしている選手が多く、高橋さんの身近にもいたそうです。高橋さんは、これからも特別な存在としてでなく、今まで通り自分らしく生きたいだけだと語りました。「カミングアウトした後に、大丈夫だよって伝えてあげられる方が素敵な社会だと思います」
 
 プライドハウス東京の活動のおかげで日本のスポーツ界もLGBTQインクルーシブな方向にずいぶん変わってきました(特に2019年のラグビーW杯のときには、原宿に「プライドハウス東京2019」がオープンし、畠山健介氏がLGBT応援ムービーに参加したり、日本ラグビーフットボール協会と国際ゲイラグビー団体がLGBT差別撤廃に向けた歴史的な覚書の締結を行なったりしました)。下山田志帆さんをはじめ、何人ものアスリートの方たちがカムアウトしました。コロナ禍がなく、2020年に予定通り「プライドハウス東京」が開館されていたら、海外のLGBTQの選手が連日訪れ、意義あるイベントもたくさん開催され、メディアにも取り上げられ、日本社会を大きく変えるような契機となったことでしょう。
 しかし、昨年の東京大会(五輪およびパラリンピック)にはオープンリーLGBTQの選手が史上最多の200人超も出場したり、トランスジェンダーの選手も参加するなどしてレジェンドが生まれたにもかかわらず、残念ながら日本チームでは(あんなにたくさんの選手がいたのに)カムアウトする選手は1人も現れませんでした。
 
 JOCは今年6月、プライドハウス東京と包括協定を結びました(詳細はこちら
 昨年、JOC理事になった杉山文野さんは、東京大会の意義について「大会がゴールではなく、スタートという視点からは大切な一歩です。僕自身がJOC理事になったこともそうですし、包括協定で役職員の研修など理解が進めばと思います。あらゆる差別を禁じる精神は五輪憲章で明文化されているわけですから」と語っています。
「(東京大会によって)景色は変わりました。認知度は間違いなく上がった。ただし、言葉として聞いたことはあるけれど、何が問題なのかということへの理解はまだまだです」
「LGBTQの子どもの6割がいじめを受けた経験があり、自死率も高い。そうしたエビデンスがあるのに、法整備が進まない」
「ルールがないがゆえに気づかないうちに相手を傷つける。赤信号では止まれという規則は、事故を起こした人を罰するためではなく、事故を防ぐためにある。同じようにLGBTQにもルールが必要です」
 
 杉山さんの言うように、大会をきっかけに、プライドハウス東京をはじめとして多様な活動がスタートし、スポーツ界でのLGBTQを取り巻く状況はずいぶん改善されてきたと思います。杉山さんが入ったことでJOCも変わり、今後もさらに、状況がよくなっていくことが期待されます。

 
 

参考記事:
性的少数者とカミングアウト フィギュアの高橋成美さん「怖さある」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQBJ6G0DQBJUTQP00D.html
景色変わったが、残る根深い問題 性的少数者が語る東京五輪の意義(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQBJ53LJQ9TULZU00T.html

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