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杉田議員が「LGBTは“生産性”がない」発言をようやく謝罪・撤回しましたが、首相は更迭を拒んだため、引き続き辞任を求める声が上がり続けると見られます

2022年12月02日

 2018年、『新潮45』に「LGBTは“生産性”がない」などと主張する「LGBT支援の度が過ぎる」という文章を寄稿し、大規模で広範な抗議運動を引き起こした杉田水脈総務政務官が12月2日、参院予算委員会で発言を撤回し、謝罪しました。岸田首相は杉田氏の更迭を求める声に応じませんでした。
 
 
 杉田議員はこれまで頑なに発言の撤回・謝罪を拒んできました。
 今国会でも、杉田議員が総務政務官に抜擢されたことを受けて、これまでの数々の差別発言に鑑み、とてもじゃないがそのような役職に就くのは不適切であると、その資質を問う追及が行なわれてきましたが、全く態度を変えませんでした。
 11月9日には参院政治倫理確立・選挙制度特別委員会で石川大我議員や天畠大輔議員が「LGBTは“生産性”がない」とする寄稿について謝罪と撤回を求めましたが、「当時からLGBTの方を差別する意図は全くなかった」と述べ、応じませんでした(詳細はこちら
 11月30日には塩村文夏議員が「(『新潮45』の)『LGBT支援の度が過ぎる』というコラムで『日本は被害者、弱者ビジネスに骨の髄までしゃぶられてしまいます』と書いています。どういう意味か説明をしてください」と追及し、杉田議員は「そういったようなことがないよう補助金などについてはしっかりと精査を、という思いで書きました」と答弁、塩村議員が「LGBT支援なんかいらないと書いたことにきちんとまず謝罪をするべきではないですか」と問うと、「差別する意図は全くなかったこととかも当時から申し上げている通りでございます」として、謝罪・撤回を避けました。(なお、塩村議員は、2016年にジュネーブで開催された国連女性差別撤廃条約に参加したアイヌ民族や在日コリアンの女性たちについて杉田氏が『小汚い恰好に加えチマ・チョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。同じ空気を吸ってるだけでも気分が悪くなるくらい気持ちが悪くはっきり言います。彼らは存在だけで日本国の恥さらしです』などとブログに投稿したことも追及し、杉田議員は「はい。事実ではございます。ただこの時は私はまだ国会議員ではなく一般人でございました」と悪びれずに答えています)

 そんな杉田議員が「LGBTは“生産性”がない」発言や「コスプレおばさん」発言について、「傷つかれた方々に謝罪し、そうした表現を取り消す」と述べ、謝罪・撤回に至ったのは、松本剛明総務大臣が杉田氏に対し、発言を撤回・謝罪するよう指示したからでした。松本氏は2日の記者会見で、指示した理由について「内閣の方針に鑑み、傷つかれた方々に謝罪し、表現を取り消すように言った。国会で杉田氏の表現について議論が長引いており、本人は重く受け止めて反省していることから指示した」と説明しました。(人格に問題があり、総務政務官として不適格だとの追及があまりにも続いたことで、松本総務大臣もそう指示せざるをえなくなったのでしょう)
 参院予算委では、社民党の福島瑞穂議員が杉田氏の更迭を求めましたが、岸田首相は「職責を果たすだけの能力を持った人物と判断した。政府の方針に従って、その立場で職責を果たしてもらいたいと思っている」と述べ、これを拒みました。 
 
 松岡宗嗣さんは「ようやく上から指示されて撤回に至るという点からも、考え方が変わったとは到底考えられない。また、前述の発言を撤回するのであれば、他にも謝罪すべき差別・問題発言は数多くある。本来は議員を辞職するレベルの差別や問題発言を繰り返してきた人物であり、そもそも政府の要職に就いてしまっていること自体が問題だ。これは岸田政権の任命責任の問題でもある」と指摘しています。
「差別を受けるマイノリティにとって、一つひとつの言葉は命や生存、尊厳に関わってくる問題。これらを放置することは、社会の差別を温存し、むしろ助長する効果をもたらしてしまう」
「総務大臣政務官は行政施策の評価や統計などを担当し、SNSにおける誹謗中傷対策のキャンペーン「#NoHeartNoSNS」を管轄しているのも総務省。性暴力被害者を侮辱する投稿に何度も「いいね」を押すような人物が、こうしたキャンペーンを管轄する立場にいることは明らかに問題で、誹謗中傷を助長することにつながりかねない」
「統計については、ジェンダー平等も多数関わってくる。5年に一度実施される国勢調査では、同性カップルがパートナーとしてカウントされない問題などがある。「男女平等は絶対に実現しない、反道徳の妄想」「LGBTは生産性がない」などと発言しているような人物がこれを管轄しているとなると、統計に大きな悪影響を及ぼされる可能性がある」
「政府の要職に就くような人物が、「女性はいくらでも嘘をつける」「女性として落ち度があった」など、過去に何度も性暴力被害者に対するセカンドレイプとも言えるような発言を繰り返すことは、総務省だけでなく、行政の性暴力被害の問題に対する姿勢そのものの信頼を低下させるだろう」
「上からの指示で「LGBTは生産性がない」などの発言を謝罪・撤回した杉田氏だが、「表現を取り消し」ても、マイノリティの人権を侵害した事実は無くならない。また、前述のように差別や問題発言はほかにも数多くあり、「LGBT」発言のみを撤回すればよいわけではない」
「これは本来、議員を辞職すべきような人物を政府の要職に登用している岸田政権の任命責任の問題であり、首相はすぐに杉田氏を更迭すべきだ」

 ほかにも、東京新聞の記事でLGBTQの方々がコメントを寄せています。
 LGBT法連合会理事の五十嵐ゆりさん:「抗議の声は無視し、上から言われて謝るというのは非常に不誠実」「明らかなジェンダー差別、人権侵害を繰り返してきた。当事者の実態や困難を聞く耳を持つべきだ」
 同性パートナーシップ・ネット共同代表の池田宏さん:「4年以上、謝罪・撤回しなかった杉田氏の人格や良識を疑う。自分の子どもや家族に当事者がいる可能性を考えたことがあるのか」 
 トランスジェンダーで医療の課題解消に向けて活動する岩井紀穂さん:「撤回しても(発言などが)なかったことにはならない。少なくとも政務官は辞めるべきだ」

 野党は年明けの通常国会でも引き続き杉田氏を追及する構えだそうです。LGBTQコミュニティからも政務官の辞任を求める声が上がり続けることでしょう。
 
 
 なお、FRIDAYの記事は、「だれが「杉田水脈」を作ったのか」を深掘りするもので、たいへん興味深いです。読んでみてください。
 



参考記事:
杉田総務政務官“生産性ない”表現を謝罪し撤回(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221202/k10013910691000.html
杉田水脈総務政務官が“LGBT発言”などを謝罪し撤回(テレ朝)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000278160.html
「LGBTは生産性がない」「コスプレおばさん」杉田政務官が謝罪・撤回 総務相の指示受け(日テレ)
https://news.ntv.co.jp/category/politics/275421aabade4ca1b8549e8c6d8631f9
杉田水脈政務官 大臣の指示で“差別発言”撤回し謝罪 「どこの部分を撤回?」福島みずほ議員の質問になぜか大臣が答弁!?(FNN)
https://www.fnn.jp/articles/-/453509
杉田総務政務官、過去の表現撤回 LGBTや民族衣装巡り(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022120200362
「LGBTQ生産性ない」発言 杉田水脈氏が撤回、謝罪(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20221202/k00/00m/010/241000c
杉田水脈政務官「LGBT生産性ない」発言 総務相が謝罪・撤回指示(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20221202/k00/00m/010/173000c
杉田水脈氏、同性カップル「生産性がない」など撤回 差別とは認めず(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQD24QJZQD2UTFK00S.html
杉田水脈総務政務官が問題発言の一部を撤回、謝罪…でも本心から反省しているの?(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/217565
杉田水脈氏を更迭しない岸田政権、人権や差別の問題「軽視」象徴(Yahoo!)
https://news.yahoo.co.jp/byline/matsuokasoshi/20221202-00326617
杉田水脈政務官“差別発言”撤回 「傷ついた方々に謝罪します」 岸田首相は更迭否定(nippon.com)
https://www.nippon.com/ja/news/fnn20221202453386/
安倍晋三が「育てた」政治家・杉田水脈が差別発言を繰り返す理由(FRIDAY)
https://friday.kodansha.co.jp/article/277622
杉田水脈氏がLGBTに関する発言をようやく謝罪 野党は来年も追及へ(東スポ)
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/247024

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