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年末年始、たくさんのドラァグクイーンがメディアでフィーチャーされました

2023年01月03日

 クリスマスにはMISIAさんのデビュー25周年を記念する全国アリーナツアーの北海道公演にHossyさん、レイチェルさん、MONDOさん、リル・グランビッチさんが出演し、大晦日にはAiSOTOPE LOUNGEでの#女装紅白がTwitterのトレンド入りを果たすなどして、ドラァグクイーンが話題を呼びましたが、この年末年始、もう一点、今までになかったような動きが見られました。ドラァグクイーンの生き様をフィーチャーする記事が大量にWebメディアに掲載されたのです。

 
 
 まず、大御所・エスムラルダさんが12月22日、なんと朝日新聞の「受験する君へ」という「各界で活躍する方々に自身の体験談や受験生へのメッセージを聞く」コーナーに登場しました。
 予備校でチューターをしていた一橋大学の学生の方に一目惚れしたことがきっかけで同大学を志望、勉強にも熱が入り、一度は失敗したものの、見事に合格したそうで、エスムラルダさんは「恋」や「ときめき」にはそんな力がある、と語っています。大学3年でゼミを決めるとき、人気のゼミには入れなかったものの、第3志望のゼミに入り、当時の自分にとって最も切実だったセクシュアリティについて掘り下げる機会を得て、たくさんのことを学んだそうです。「前向きにとらえていれば、必ず新しい出会いがあります。「このためにここに来たのか」と思えることがあるのではないかと思います」という言葉には、人生の真実が感じられました。

行き詰まったら「恋」をしてみて 一橋大出身・エスムラルダさん(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASQDD6CW2QC7OIPE01N.html


 12月23日には文春オンラインが身長2m超えのドラァグクイーン、セレスティア・グロウンさんの特集記事(全3回)を掲載しました。SNSでも話題になっていたと思います。
 滋賀県で育った長身の男子は、小学5年生で「男性も好き」という気持ちに気づき、学生時代、堂山で背の高い人をフィーチャーするゲイナイトに参加したことをきっかけにクラブ通いが始まり、友達に勧められてドラァグをするようになりました。就職で関東に行くことになっていたセレスティアさんは、隠し事をしたまま家を出たくないという気持ちから、お母さんにカミングアウト。今ではお母さんはドラァグクイーンとしての活躍も応援してくれているそうです。セレスティアさんは「いつかカミングアウトするか父が気づくかした時に、「女装してこんな活動をしているんだ」と胸を張って言えるくらい活躍していれば、父も「恥ずかしい」じゃなくて誇らしいと感じてくれるかもしれない」と思い、「親に恥ずかしいと思われないドラァグクイーン」を目標に活動しているそうです。
 
「『女性になりたい』と思ったことはないんです」見上げるばかりに美しい“2m超えのドラァグクイーン”を作った、小学5年生の初恋と「重い秘密がしんどい」と言われた別れ(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/59378
母親にはカミングアウト、父親は「伝えることが必ずしも正解じゃない」ドラァグクイーンになった息子が両親と結んだ“新しい関係”とは(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/59379
「自虐や下ネタだけでなく綺麗やかっこいいも」女装にネガティブなイメージを持っていた少年が“セレスティア・グロウン”として変えたいこと(文春オンライン)
https://bunshun.jp/articles/-/59380
 

 12月26日、以前からLGBTQに関する記事をたくさん配信しているタイムアウト東京の、多様な個人にフォーカスしてセクシュアリティやジェンダーについて探求する「SEX:私の場合」というシリーズ(第1回はラビアナ・ジョローさんでした)の第7回の記事として、二丁目で活躍するStrondh(ストロンジュ)ファミリーが取り上げられました。
 昨年1月のageHa GAY NIGHT the FINAL “GLITTER BALL”での「RUSH CRUISE」のSHOWCASEでも活躍していたVera Strondhさん、VeraさんのドラァグマザーであるVictoria Strondhさん、ドラァグファザーのMarcel Onoderaさんの3人は、日本ではあまりなじみがない「ドラァグファミリー」を築いています。VictoriaさんとMarcelさんは8年前に二丁目のクラブで出会ってつきあうようになりました。Victoriaさんは「Eagle Tokyo」で働いていましたが、4年前、酔っ払ってお店に来たVeraさんの悩みを聞き、サポートするようになり、ダンスの才能があるVeraさんにドラァグクイーンとしての活動を勧め、「Strondhファミリー」に迎え入れました。MarcelさんはVictoriaさんのアイデアを聞いて、衣装やウィッグを作ったりする、Veraさんは振付や魅せ方を考える、といったかたちで、互いに協力しあいながらドラァグ活動をしているんだそうです。素敵ですね。
(なお、VictoriaさんとVeraさんは、1/7の「OPULENCE」にも出演することが決まっています)

「ファンタジーをリアルに変える」Strondhファミリーのドラァグクイーン観(タイムアウト東京)
https://www.timeout.jp/tokyo/ja/lgbt/talk-about-sex-7
 

 1月1日、fashionsnap.com(元記事はVICE Japan)に「5人のドラァグクイーン達が感じる社会からの圧力とは」と題した記事が掲載、ダンサー、性教育者、DJ、コスチュームデザイナー、メディアデザイナーなど多様な場面で活躍するKAGUYA(カグヤ)さん、OKINI(オキニ)さん、MAXIM(マキシム)さん、Labianna Joroe(ラビアナ・ジョロー)さん、Kosmic Sans(コスミック・サンズ)さんがフィーチャーされています。
 「あなたを3つの言葉で表現するなら」「あなたに影響を与えた人は?」「あなたにとってドラァグとは?」「今、何と戦っていますか?」「社会からの圧力を感じる時はどんな時?」「あなたにとってのファイトソングは?」といった共通の質問に5人が答えていて、例えば「今、何と戦っていますか?」という質問に対してMAXIMさんは「偏見、社会の決まり、時代の遅れ、平和ボケなど」と、Labianna Joroeさんは「家父長制、年功序列」と、Kosmic Sansさんは「Toxic Masculinity(注:有害な男らしさ)、Body Shaming(注:身体的特徴について誰かを屈辱や批判にさらす行動)」と回答していて、シビれます。カッコいいです。ぜひじっくり読んでみてください。
 
5人のドラァグクイーン達が感じる社会からの圧力とは(fashionsnap.com)
https://www.fashionsnap.com/article/2023-01-01/dragqueens-pressure/


【追記】2023.1.13
 英国屈指の独立系資産運用グループであるシュローダー(Schroders)が、「金融業界を渡り歩いた女装家、肉乃小路ニクヨさんの生き様と「投資」する理由」と題する肉乃小路ニクヨさんへのインタビュー記事を掲載しました。ESG投資とかマルチアセット運用といった専門用語が並ぶ本格的な投資情報サイトなのですが、一人の投資家として肉乃小路ニクヨさんに至極真面目に話を聞き、ニクヨさんも、これまでの決して平坦ではなかった人生や、金融業界で働いていた経験、そして投資についても実にきちんと語っていて、いろんな意味で面白い、素晴らしい記事です。ぜひ読んでみてください。


 
 様々なドラァグクイーンの方たちがフィーチャーされていましたが、みなさん、こうしたメディアを通じて、二丁目(身内)にとどまらない、社会(パブリック)に向けた立派な発信をされていて、印象的でした。また、若手の方たちがしっかりと自分の考えや意見を持って語っていらっしゃるのも素晴らしいと感じました。メディアの側も、オネエタレントとかイロモノ扱いとかではなく、敬意をもってドラァグクイーンに接し、その言葉にきちんと耳を傾ける姿勢が感じられました。ドラァグクイーンは今やリスペクトの対象であり、社会的影響力も持つ存在になっているのです。感慨深いです。

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