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親や世間体のために“友情結婚”するも、うまくはいかなかった…「結婚の自由をすべての人に」東京二次訴訟の原告が語りました

2023年01月30日

「結婚の自由をすべての人に」東京二次訴訟の7回目の口頭弁論が1月26日、東京地裁(飛澤知行裁判長)で開かれ、原告のケイさんが「友情結婚」などで嘘をつき続けて生きなければいけなかった苦しみを語りました。2年前に長年のパートナーと別れることになりましたが、お二人は「同性婚ができていたらこんな結果になったのかな」と話したそうです。
 
 ハフポスト日本版によると、ケイさんとAさんは、20代半ばだった1990年代に知り合い、趣味や価値観が似ていたことから話が弾み、おつきあいを始め余した。当時は二人とも実家に住んでいて、お互いの家族には親友として紹介し、家族との死別などつらい時には精神的に支え合って乗り越えました。しかし30歳を過ぎてケイさんとAさんが一緒に家を買うと決めた時、親は結婚や出産をする気がないと捉えたのか同居に強く反対したそうです。「Aさんは信用できない」と否定され、思わず「結婚はできない」と伝えたケイさん。その理由を「日本では同性婚ができないから…」と説明しました。すると親が「Aさんに騙された」と取り乱したため、ショックを受けたケイさんは「同性愛ではない」とカミングアウトを取り消さなければならなかったといいます。
 親にパートナーを否定された痛みや、孫の顔を見せられない自責の念に苦しんだケイさんは、同居を始めて間もなく、何をしても楽しくないことに気づき、病院でうつ病と診断されたそうです。
 Aさんにも次々とお見合いの話が舞い込み、想像していたような新婚生活との乖離に苦し見ました。さらに30代半ばで子どもを持つ可能性を考えた時に、現実的な選択肢に見えたのがゲイ男性との「友情結婚」だったそうです。友情結婚は、親や世間体から自分たちを守るためにゲイとレズビアンが形だけ結婚をするもので、当時はそのための婚活コミュニティもありました。
 ケイさんも、結婚すれば子どもを持てる可能性があるだけでなく、親を安心させられ、Aさんとの生活を守れるかもしれないという思いから、自分と同じように同性パートナーがいるゲイ男性との結婚に踏み切りました。しかし、表面を取り繕った関係はうまくいかず、1年ほどで破綻。友情結婚はケイさんを守ってくれたどころか「異性との関係は婚姻届1枚で守られるのに、同性同士には何の保障もない」という現実を改めて突き付けることとなりました。
 ケイさんが自分と同じようなクローゼットの人たちの問題について考えるようになったきっかけは、40歳を迎えた時にSNSを通して多くのLGBTQとつながるようになったことでした。当事者が身近にいることに気づくと同時に、クローゼットの人々の存在が見えないことになっている状態に問題意識を持つようになったケイさんは、仲間とともにレインボープライドのパレードを歩き、2015年7月には同性婚人権救済申立の申立人になりました。そして2021年に始まった結婚の自由をすべての人に裁判・東京2次訴訟にも原告として加わりました。
 しかし訴訟が始まった年に、20年以上をともにしたAさんと別れることになりました。ケイさんは「住んでいた部屋を片付けながら、どちらからともなく『同性婚ができていたらこんな結果になったのかな』と話しました」と声を詰まらせながら法廷で振り返りました。「別れるまでに多くのすれ違い、言い争いがありましたが、二人の最後の意見は一致していました。『なってなかったと思う』」

 ケイさんは裁判後の記者団の取材で、申立人や原告となり、性的マイノリティが置かれている現状を訴える理由を「クローゼットの存在が見えない=いないことになっているという現状を変え、思いを伝えたいから」と語りました。
 LGBTという言葉が社会に浸透し、メディアなどで顔や名前をオープンにして活動する人たちも増えてきた一方で、声を上げにくいクローゼットの人たちは存在自体もなかなか知ってもらえない、離島や地方などに住むクローゼットの仲間たちの中には、住んでいる自治体にパートナーシップ制度があっても周りに知られることを恐れて利用できない人たちもいる、不安と隣り合わせに生きる仲間からは「法律婚が認められるようになれば、理解は広まり、恥じることはない」と応援の声も届いている、そういった仲間たちの分も思いを伝えたい、とケイさんは語りました。

 訴訟の原告の方たちは、結婚を認められないことは性的マイノリティの尊厳を奪い、それ自体が差別や偏見を生んでいると訴え続けてきました。
 しかし岸田首相は1月25日、衆議院本会議の代表質問で立憲民主党の水岡俊一参院会長の「同性婚を導入する考えはありますか」との質問に対し、「我が国の家族の在り方の根幹にかかわる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えている」と、2015年から繰り返されてきたのと同じ答弁を繰り返しました。
 ケイさんは首相の言葉に対して怒りを感じると述べ、「家族の前に私の個人の尊厳に関わる問題だからと思っています。なので、一刻も早く法制化をお願いしたいです」と訴えました。
 

 1月30日の信濃毎日新聞は社説で「いつまで同じ文言を繰り返すのか」と批判しています。
「この間、政府、自民党は「慎重な検討」をしてきたのか疑問だ」
「同党の国会議員や地方議員からは性的少数者に対する差別的な発言が相次いでいる。「伝統的な家族観」の維持という保守派の主張に固執し、真正面から議論していないことが理由ではないのか」
「同性婚を認めないのは憲法違反として同性カップルが全国で提訴した訴訟では、札幌地裁が違憲判決を出し、東京地裁は違憲状態とした。合憲とした大阪地裁も「立法措置をしないと将来的に違憲になる可能性がある」とした。司法は政府と国会に制度導入に向け、かじを切ることを促している」
「社会や企業、地方自治体の認識に、政府と自民党は追いついていない。「慎重な検討」を名目に問題を放置することは許されない。制度実現に向けた議論を早急に始めるべきである」
  


参考記事:
「同性婚ができていたらこんな結果になったのかな」“友情結婚”が同性カップルに突きつけた現実(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-equality-tokyo-2-7_jp_63d1b6a8e4b0c2b49ada19a0

〈社説〉同性婚の論議 「検討」答弁は通用しない(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023013000070

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