g-lad xx

NEWS

【同性パートナーシップ証明制度】富山県が3月から導入、北海道で5市が連携協定、山形市で団体が要望など

2023年01月30日

 富山県が3月1日から「パートナーシップ宣誓制度」の運用を始めると発表しました。1月30日、新田知事が定例記者会見で明らかにしました。
 この制度は、事実婚や同性のカップルが県に宣誓書を提出し、宣誓受領証(パートナーシップ証明書)が発行されると「結婚に相当する関係」と認められるものです。県によると、受領証があれば、公営住宅に入居できるほか、公立病院で病状説明を聞いたりなど家族として扱われるということです。二人とも成年で、どちらかが県内に住んでいるか転入の予定があれば宣誓できます。2月20日から宣誓書の申請の予約を受け付け、3月1日から正式な受付けと受領証の発行を始めるそうです。
 新田知事は、昨年11月に実施したパブリックコメント(意見募集)で162件の意見が寄せられたとしたうえで、意見をもとに修正を行い、3月1日から正式に運用を始めることを明らかにしました。
 新田知事は「ダイバーシティの時代で様々な人が居心地のよい社会をつくっていくためには必要な制度だと思います。円滑に運用できるよう取り組んでいきたい」と話しました。

* * * * * *

 同じく3月1日から「パートナーシップ宣誓制度」を導入する静岡県では、制度の周知を図るシンポジウムが催されました。
 県男女共同参画課の山口精子課長が制度の概要を説明し、カップルとして宣誓し、公認されれば「大切なパートナー、家族であることを周囲に説明しやすくなる」としました。
 基調講演を行った追手門大の三成美保教授は、静岡県の制度について「カップルの子どもも含めて家族関係を認めるファミリーシップ制度で、先進型だ」と評価する一方、法律ではないため子どもへの親権はないと説明しました。性的マイノリティに対する包括的な法律がまだ日本にないなかで、県の制度は「現在困っている性的少数者に寄り添える点で有意義だが、これだけでは不十分。多様な政策と連動して取り組んで」と要望しました。
 パネル討論では、トランスジェンダーとして講演活動を行なう安池中也さんが「これで完成ではなく、みんなで作り上げていく制度」と語り、東京プライド(東京レズビアン&ゲイパレード)やピンクドット沖縄の創設者である文化人類学者の砂川秀樹さんは「当事者だけでは限界があり、支援者と一緒に取り組むことで力が発揮される」と訴え、協力を呼びかけました。

 静岡新聞は社説で「性の多様性などへの理解はいまだ広く社会に浸透しているとはいえず、パートナーシップ制度の導入を理解と行動の広がりにつなげたい。性的少数者などの権利を保障し、周囲が当たり前の事として適切に対応できる社会は、誰にとっても生きやすい世の中といえるのではないのか」と述べています。「自分の気持ちを伝えることができる相手や場所の存在が、当事者の心の支えになることも確認されている。心ない言葉や行動は当事者を深く傷つける。多様性を尊重することができるよう、自治体は啓発活動に力を入れてほしい。学校や企業は教育や研修、相談窓口の開設などに積極的に取り組むべきだ」
 
* * * * * *
 
 埼玉県では40の市と町で制度が導入されていますが、県としてはまだ導入されていません。
 県内在住の当事者の女性は17日、6395人分の署名と要望書を県に提出し、後ろ向きな県に対し「県民の思いをくみ取って考え直してほしい」と訴えました。
 昨年7月からオンライン署名を立ち上げ、協力を呼びかけてきた竹乃娘(たけのこ)さんとトランスジェンダー男性の汐恩(しおん)さんは、制度が導入されていない自治体で共に暮らしています。要望書では、県内で制度を導入する市町が増えているものの、未導入自治体と不平等な状況が生じていると指摘し、東京など隣接都県が導入済みであることにも触れ、県が昨年制定した「性の多様性を尊重した社会づくり条例」の精神に反すると訴えました。カップルの子どもを家族として認める「ファミリーシップ制度」の導入も求めています。
 署名提出後の会見で竹乃娘さんは「暮らしの保障がないので心配なことしかない」「知り合いや友人の当事者がたくさん傷ついてきた話を聞くとつらい。同じ思いを県民にしてほしくない」と訴えました。身体に障害のある竹乃娘さんの介助で同席した汐恩さんは「パートナーが救急搬送されたときに家族として扱われないのは、すごくつらかった。自分と同じような思いをしてほしくないし、安心して埼玉県に暮らしたい」と語りました。
 一方、要望を受けた大野元裕知事は同日の定例会見で「県がパートナーシップやファミリーシップ制度を導入しても、変わるものは一切ないので検討していない。(現状の)制度や手続きを見直し、LGBTQの方々が求めるものを構築する方が実効的だ」として、県としての制度導入には改めて否定的な考えを示しました。

* * * * * *

 北海道では2月1日から岩見沢市で「パートナーシップ宣誓制度」がスタートしますが、これに合わせ、すでに制度を導入している札幌市、北見市、江別市、苫小牧市と岩見沢市、5つの市の間で1月25日、一斉に連携協定が締結されました。2月1日以降、それぞれの市の間で転出入する際の手続きが簡略化されます。
 札幌市はすでに北見市、江別市、苫小牧市と連携協定を結んでいましたが、岩見沢市とも結びました。札幌市は。札幌市男女共同参画課は「性的マイノリティの方々にとって安心できる制度となるよう、さらに他の自治体とも連携を進めていきたい」と話しています。
 北見市もすでに札幌市、苫小牧市と連携協定を結んでいましたが、岩見沢、江別両市とも結びました。北見市市民生活課は「今後、他に導入している自治体との連携についても協議し、性的マイノリティの人の負担軽減につなげたい」と話しています。なお、北見市では4月1日から、制度の対象者の居住要件が「双方が市内居住」となっているのを「一方が市内居住」と改めることになりました。
 同様に4市との連携を結んだ江別市の市民生活課は「今後も他の導入自治体との連携を進めたい」としています(北海道ではほかにも函館市と帯広市でも制度があります)
 岩見沢市の市民連携室は「引き続き、当事者にとって安心できる制度となるよう取り組みを進める」としています。
 

* * * * * *

 山形市で、県内在住の当事者や支援者による団体が発足し、市に対して同性パートナーシップ証明制度の導入を要望することになりました。
 要望書では、カップルだけでなく子どもや親なども家族として認めることや、公立病院での手術の同意、公営住宅への入居を可能にするなど、性的マイノリティの人たちが住みやすいまちになるよう求めることにしています。
 団体の代表を務めるのは山形大学人文社会科学部の池田弘乃准教授(法哲学、ジェンダー・セクシュアリティと法)で、「県内に住む当事者から『同性パートナーとの生活を安心して送ることができる街で暮らしたい』という声があがっている。制度の必要性について理解してもらい、制度があることで山形がもっと魅力的な街になるということを知ってもらえるよう取り組んでいきたい」と語っています。
 池田さんは山形市議の松井愛さんとともに、昨年初開催のパレードを主催した方でした。以前から山形大学学生・教職員有志による「多様な性」について知る・話す・聞くための交流会「カラフルcafé」も主宰しています。素晴らしい活躍ですね。
 
 


参考記事:
「パートナーシップ宣誓制度」 3月1日運用開始へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/toyama/20230130/3060012501.html
『パートナーシップ宣誓制度』富山県3月運用開始…“性的少数者や事実婚のカップルを公的に認める”(富山テレビ)
https://www.fnn.jp/articles/-/478670
富山県、パートナー制度3月開始 他地域との連携も(日経新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC306RC0Q3A130C2000000/

パートナー制度周知へ「多様な政策と連動を」 静岡でシンポジウム(静岡新聞)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1184861.html
社説(1月26日)静岡県パートナー制度 多様性認め合う社会に(静岡新聞)
https://www.at-s.com/news/article/shizuoka/1183818.html

“埼玉県もパートナーシップ制度を”導入求め県に署名を提出(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230117/1000088642.html
パートナーシップ制度求め6395筆 未導入自治体と「不平等な状況」 当事者カップルの女性が埼玉県に提出(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/225868

パートナーシップ宣誓制度 札幌市と岩見沢市が協定(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/791760
パートナーシップ宣誓制度 北見市が岩見沢、江別両市と協定(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/792119
北見市「パートナーシップ宣誓制度」、対象の居住要件緩和 「双方居住」から「一方が居住」に(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/791640
岩見沢市、札幌など4市と連携協定 パートナー制度(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/792290
苫小牧市パートナーシップ制度 岩見沢、江別と連携協定(苫小牧民報)
https://www.tomamin.co.jp/article/news/main/98669/

パートナーシップ制度導入求め団体発足 山形市に要望提出へ(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/yamagata/20230130/6020016567.html

INDEX

SCHEDULE