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LGBT法連合会と「Marriage For All Japan」が差別禁止法制定を訴え、日弁連は速やかな同性婚法制化を求めました

2023年02月16日

 LGBT法連合会と公益社団法人「Marriage For All Japan -結婚の自由をすべての人に」(以下MFAJ)が16日、日本外国特派員協会で記者会見し、岸田政権への憂慮を示し、LGBT理解増進法では不十分であるとして差別禁止法の制定を求めました。

 LGBT連合会の神谷悠一事務局長は、首相秘書官を更迭された荒井勝喜氏が同性婚について「秘書官室は全員反対だ」と発言したことを取り上げ「深刻な状況だ」と批判し、「超党派議連が進めるとした法案は、差別の禁止に関する国際的な指標にひとつも引っかからない、透明人間のような法案であることに落胆を禁じえません。国際指標にも引っからない法案を日本政府が発表するようなら、国際社会から失望される」と指摘し、理解増進ではなくあくまでも差別の禁止を求めていく考えを示しました。
 MFAJの寺原真希子代表理事は法案について「それをつくることで、差別禁止法など本当に必要な法律に着手せず、『やったんだ』というアリバイづくりに利用されるのではないか」と懸念を示し、「政府の中と違い、世論の理解は増進されている。理解促進と法整備は、両軸で進めないといけない。理解増進法があるから(他の)法整備を進めなくてもいいという理由にはならない」と釘を刺しました。岸田文雄首相が「多様性を認め合う包摂的な社会」を掲げていることに触れ、「それならただちに行動を示してほしい」「本当に必要な法整備に着手を」と語りました。
 MFAJの松中権理事は、岸田首相の同性婚導入に関する「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」との国会答弁に触れ、地方自治体でパートナーシップ・ファミリーシップ制度が広がっていることなどを挙げながら「社会は前向きに変わってきている」と強調しました。
 海外メディアからは「同性婚について、一般の人と政府との考え方にズレがあることをどう思うか」という質問がなされ、寺原氏は「世論は6割7割が同性婚に賛成している。60代までは賛成の方が多いですが70代になると反対の方が逆転する調査があります。政府の中で中枢にいるのが高齢男性が多いということが世論との乖離の一因だと思う」と答えました。

 両団体などは17日、LGBTQが働きやすい職場環境づくに取り組む企業の上層部らとともに都内で会見し、LGBTQへの取組みを広島サミットで議題の一つにするよう岸田首相に要望するとのことです。企業とタッグを組むことについて松中権氏は「企業でできることにも限界があり、国で法律をつくらない限りカバーできないことが企業側もわかってきた」と述べました。

 

 
 日本弁護士連合会(日弁連)は2月16日、小林元治会長名で「性的少数者に対する差別発言に抗議し、速やかな同性婚法制化を求める声明」を出しました。
 荒井前首相秘書官の差別発言について、「性的少数者の尊厳を否定し社会から排除するに等しい差別発言」と批判し、「憲法や国際規約(自由権規約)で保障される性的少数者の権利を侵害し、断じて許されない」と強調しました。
 また、岸田文雄首相が同性婚に関して「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と答弁したことも「極めて遺憾」と問題視し、「性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する」とした2022年6月のG7サミット首脳コミュニケにも反すると指摘しました。
 そのうえで、同性婚が法制化されていない状況は「(幸福追求権を保障する)憲法13条(法の下の平等をうたう)憲法14条に照らし重大な人権侵害と言うべき」と断じ、速やかにLGBTQへの差別を撤廃するための施策を進め、同性婚を法制化するよう求めています。
 
 
 また、5月に広島市で開かれるG7広島サミットへの政策提言を行なう国際的な市民グループ「C7」と「Women7(W7)」が、LGBTQ+の権利擁護をG7首脳らに求める声明を発表しました。差別をなくすための迅速な行動を呼びかけ、日本政府には同性婚の法制化も訴えました。
(C7のCはCivil Society(市民社会)の頭文字で、過去のG7サミットでも開催地を中心に編成されています。W7は、ジェンダー平等と女性の権利に関する政策提言を目指しています)
 

 メディアでも今日もLGBTQの権利擁護につながる記事が配信されています。主なものをご紹介します。

 AERA「同性婚の法制化を求めるのは「人権の問題」 トランスジェンダーの杉山文野さん「雰囲気に左右される話ではない」」は、東京レインボープライド共同代表の杉山文野さんへのインタビュー記事です。
「(「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」発言に対し)現実は逆です。認められず国を捨てざるをえない人がたくさんいます。「単なる発言ミス」との声もSNSで見かけました。そう擁護してしまうのは、LGBTQについてルールがない、つまり法制化されていないからだと思います」
「(「社会全体の雰囲気にしっかりと思いをめぐらせたうえで」慎重に検討すべき課題だとの発言に対し)同性婚の法制化を求めるのは人権の問題だからです。雰囲気で左右される話ではありません。全国民は平等と言いながら、結婚できる人とできない人がいる。裏を返せば、LGBTQは「全国民」に含まれないということになるのです」
「婚姻平等の実現やLGBTQへの差別禁止法の法制化、性同一性障害の特例法で「戸籍上の性別を変えるためには『不妊手術』を受けること」などを義務付けた要件の緩和。これらの実現が最低限必要だと考えます」
「差別禁止法ができたら言いたいことも言えなくなると反対する人がいます。でも、私たちは何も差別する人を罰したいがためにルールを作ろうと言っているのではありません。飲酒運転で人をはね、被害者に「そこを歩いていたおまえが悪い」という人がいないのはルールがあるからで、これは罰することが目的ではなく、皆が安全に暮らすためのルールです。LGBTQに関しては基準がない分、何がよくて悪いのか、皆が思うがままに言い合っている。でも、誰だって加害者になりたくないはずです。知らぬうちに誰かを傷つける社会は誰にとってもハッピーではないと思います」

 東京新聞「LGBTQ権利保護の「失われた20年」を生んだ「伝統的な家族観」 OECD調査でワースト2位に転落」では、「LGBTQの権利を守るための法整備の遅れが国際社会で際立っている」と指摘されています。
 OECDの直近(2019年)の調査で、日本の法整備の進捗状況が35ヵ国中34位だった、1999年時点では22位だったのに、具体的な取組みが乏しかったため、他国に追い抜かれた、「失われた20年」とも言える状況だと述べられています。
「日本はこの間、複数の国際機関からLGBTQの権利を守る包括的な法整備を繰り返し求められているが、「留意する」「慎重な検討を要する」など、消極的な回答を続けた。今月3日に採択された国連人権理事会の報告書にも「差別禁止法を整備し、同性婚を認める法律を制定すべきだ」などの勧告が盛り込まれた」
 追手門学院大の三成美保教授(ジェンダー法)は、「欧州連合(EU)はジェンダー平等を重要政策に位置付け、LGBTQの権利保障を推進した。一方、日本は自民党の保守派を中心に、夫婦別姓や同性婚といった『家族の多様化』を阻止する動きがあった。保守派の動きに配慮せざるを得ない政府のあり方が大きな影響を及ぼし、国際社会に後れを取った」と指摘しています。 
 
 

参考記事:
「同性婚」G7までに法整備を 支援団体が海外メディア向け記者会見 「世論は6割7割が同性婚に賛成」(関テレ)
https://www.fnn.jp/articles/-/487334
差別発言、岸田政権へ憂慮 支援団体ら「法案不十分」(共同通信)
https://nordot.app/998898632974893056
LGBT支援団体、理解増進法案は「透明人間のようで落胆」国際指標に達さず、厳しい声相次ぐ(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202302160000886.html

日弁連会長「速やかに同性婚の法制化を」、前首相秘書官のLGBT差別発言に抗議(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_18/n_15661/
性的少数者に対する差別発言に抗議し、速やかな同性婚法制化を求める会長声明(日弁連)
https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2023/230216.html

「性的少数者の権利守って」 G7首脳らに市民グループ(共同通信)
https://nordot.app/998849380908744704

同性婚の法制化を求めるのは「人権の問題」 トランスジェンダーの杉山文野さん「雰囲気に左右される話ではない」(AERA)
https://dot.asahi.com/aera/2023021400019.html

LGBTQ権利保護の「失われた20年」を生んだ「伝統的な家族観」 OECD調査でワースト2位に転落(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/231352
 

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