g-lad xx

NEWS

岸田総理が同性婚を認めないのは「差別だとは考えていない」と発言しました

2023年03月01日

 2月28日、岸田総理は国会で、同性婚を法的に認めないのは差別ではないかと問われ、“差別にはあたらない”との認識を示しました。
 衆院予算委員会で共産党の宮本徹衆院議員の「国が同性愛者を差別している、こういう認識はございますか」との質問に答え、岸田総理は「少なくとも同性カップルに公的な結婚を認めないことは、国による不当な差別であるとは考えていません」と述べました。宮本議員が「当事者の皆さんのお話、何を聞いたんですか。婚姻の平等を実現してほしいという話を聞いたんじゃないんですか」と問うと、総理は「憲法第24条第1項は、婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定しており、当事者双方の性別が同一である婚姻の成立、すなわち同性婚制度を認めることは想定していない。これが政府の考え方だ」「様々な関係者から話を聞いた。丁寧な議論が必要だということを強く感じた」「今後とも、国民の様々な声、国会における議論、同性婚に関する様々な裁判の結果、地方自治体におけるパートナー制度の実施の状況、そういった点もしっかり念頭に置きながら議論を行なっていきたい」と述べました。
 3月1日にも岸田総理は参院予算委員会で「LGBTQへの差別意識があるのではないか」と問われ、「私は差別という感覚を持っているとは思っていない」と述べました。
 
 これまで8年にわたって政府は同性婚について「慎重な議論が必要」との答弁に終始していましたが、2月1日に岸田総理が「(同性婚を認めたら)社会が変わってします」と述べ(原稿にない総理自身の考えだったそうです)、3日にそれをフォローするかたちで荒井秘書官が「見るのも嫌」「隣に住んでるのも嫌」との差別的な本音を語り、大問題となりました。そして今回、総理が、当事者団体と会って話を聞いたにもかかわらず(20歳の当事者の方が「守ってもらえない、幸せになれないのならしんどくなりすぎないうちにさっさと死んでしまいたいな、と思ったことはありますか?」と切実に訴えた声を聞いたはずなのに)、「同性婚を認めないのは差別ではない」と言い切ったことは、あまりにも無神経で、冷酷ですらあると感じます。
 2021年には衆議院法制局が同性婚の法制度化について「憲法上の要請であるとの考えは十分に成り立ち得る」との見解を示しています。同年、札幌地裁は同性婚を認めないのは憲法14条(法の下の平等)に違反するとの判決を下し、昨年は東京地裁でも憲法24条2項に違反している状態であり国会で法制化を議論すべきだとの判決を下している、そうしたことも完全に無視しています。「結婚の自由をすべての人に」公式も24条1項で同性婚を想定していないことが平等違反(差別)でないということにはならないと指摘しています。
 世論調査でも6割強が同性婚に賛成していて、社会はすでに変わっているのに、なぜ政府は当事者の声も世論も無視するのでしょうか。パートナーの性別が異性でないというだけで結婚の権利を奪われている状態を制度的差別と言わずして何と言うのでしょう。総理や国を動かしてる人たちは、いつになったら“差別にはあたらない”との“理解”を改めていただけるのでしょうか。それとも、どうしても同性婚を認めたくない事情があるのでしょうか。
 

 世界におけるLGBTQの人権擁護に取り組んでいるジェシカ・スターン米特使が日本でLGBTQ差別解消法や同性婚の法制化が認められるべきだと語ったことが報じられました。朝日新聞の取材に対し、ジェシカ・スターン米特使は、日本で多くの自治体や市民が同性婚を認めることを支持していることを知って「本当に鼓舞された」と語りました。一方、日本の法的状況については「LGBTQI+の人たちを差別から守る制度がなく、婚姻における平等もない制度は時代遅れ」だと指摘し、「LGBTQI+とは新しいコンセプトではなく、日本でも社会的にはすでに高いレベルで受け入れられている。彼らの権利を保障することで唯一もたらされる影響は、経済的繁栄だ」と述べました。また、日本が現在、国連安全保障理事会の非常任理事国やG7の議長国を務めていることについて「日本にとって今年は重要」だとして、法律や政策で権利を認めることは「最初の一歩に過ぎない」「日本が現在の勢いをとらえ、LGBTQI+の人たちの権利を成文化し、保護するためのステップを進むことを切に願っている」と述べました。
 
 27日、オランダ大使館のペーター・ファンデルフリート駐日大使とアムステルダムのフェムケ・ハルセマ市長がプライドハウス東京レガシーを訪問し、17人のLGBTQとお話しました。ハルセマ市長は「オランダでも性的マイノリティへの暴力や貧困などの問題はいまだにある。だが法律があるので行政のサポートを受けられる」「すでにある法律でカバーする範囲を広げたことで、性的マイノリティへの法的保護につながり、人々の意識が高まった」「オランダで法律ができた当時、それを国民全員が支持をしていたわけではなかったと思います。しかし理解を待ってから法律を変えたのではなく、先に法律ができてそれが国の変化に貢献したのです」と語りました。

 精神科医の斎藤正彦都立松沢病院名誉院長は毎日新聞の連載で、政権中枢にいる人物によるLGBTQ差別について「綸言汗の如しという言葉をかみしめてもらいたいと思います」と語ります。「そもそも、荒井元首相秘書官をはじめ、首相秘書室の皆さんは、アメリカのピート・ブティジェッジ運輸長官、米アップル社のティム・クックCEO、台湾のオードリー・タン・デジタル発展部長、レディ・ガガのような人たちにも「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「見るのも嫌だ」と言うのでしょうか」
 斎藤氏は新宿1丁目で精神科クリニックの院長を務めていた頃、トランスジェンダーの患者さんや、エイズでパートナーを亡くしたあと自身もエイズを発症してうつ状態になった青年、親の死に目に会えず、兄弟から葬式に来るなと言われて孤独に耐えられなくなった中年男性、ゲイとしての人生に悔いはないと言いながら老境に至って子がいないことの寂寥感をかみしめているカップルなど、たくさんのLGBTQの方を診てきたといいます。なじみ客だった政治家のスキャンダルに巻き込まれてお店の客足が途絶え、自ら命を絶ったSさんという方…その自死を報じた週刊誌の記事で、「顔の損傷が激しかった遺体が1週間以上身元不明とされて警察署内に置かれ、誰であるかがわかったのちも遺族は引き取りを拒み、無縁仏として処理されたと書かれていた」そうです。「Sさんは誰にも見送られず、一本の線香も手向けられず、親兄弟の墓にも入れてもらえませんでした」
「彼らの多くは、社会がもう少し寛容だったら感じることがなかったストレスが原因で、多様な精神症状を起こしていました」
「マイノリティに対する差別は、その社会の成熟度を測る一つの指標です。新宿2丁目で学んだのは、彼らは特別な人ではない、という一事です。性的少数者へのいわれのない差別は、差別する側の無知によるのだと私は思います」
「マイノリティを結界の中に閉じ込めない社会であれば、お互いの生活が混じり合い、素顔の付き合いが生まれます。相互理解を深め、マジョリティがマイノリティに同化を迫るのではなく、互いの違いを認め合いながら共存できる文化を生み出すでしょう。その境界が崩れることで、社会的偏見や差別に起因するストレスがなくなり、私のクリニックを訪れた人たちの悩みの多くは消えてしまうはずです」
「私が荒井元首相秘書官の暴言にこだわるのは、この問題が一政府高官による性的マイノリティへの差別発言というにとどまらず、これまで信じてきた社会的価値観へのあからさまな挑戦だと感じるからです」
「改めて、私たち一人一人が、民主主義は努力して育てるもの、力を合わせて守るものという自覚を持たなければいけないのではないでしょうか」
 記事中では、仲通り交差点のHIV予防啓発の看板の写真や、レインボーカラーのごみ袋を使って二丁目の清掃活動に携わっている二村さんの写真なども紹介されていました。
 思わず胸を打たれ、涙すら誘われる、素晴らしい記事でした。
 斎藤さんのような方がこの国の指導者になってくださったらいいのに…と思わされます。

 

参考記事:
同性婚認めないこと「国による不当な差別とは考えていない」岸田首相が言及 衆院予算委(FNNプライムオンライン)
https://nordot.app/1003163787676614656?c=516798125649773665
岸田総理 同性婚認めないのは「差別だとは考えていない」 衆院予算委(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/351318
同性婚認めず、首相「不当差別でない」 予算委で答弁、野党から批判(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15568795.html

「差別という感覚は持っていない」と首相(共同通信)
https://www.47news.jp/9001807.html
「差別という感覚は持っていない」と首相(神奈川新聞)
https://www.kanaloco.jp/news/government/article-972274.html
性的少数者 首相「差別感覚ない」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230302/ddm/005/040/046000c

同性婚「社会の構造変えない」 人権擁護取り組む米特使(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15567815.html

LGBT理解増進法案では「いまの差別に対応できない」 当事者や性的少数者の親ら、切実な訴え相次ぐ(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/233587
「オランダは理解を待って法律を変えたのではない」LGBTQ法整備、アムステルダム市長らが当事者と対談(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_63feb7d8e4b0db7a1f68a24b

マイノリティー差別の根幹にあるもの(毎日新聞)
https://mainichi.jp/premier/health/articles/20230227/med/00m/100/026000c

INDEX

SCHEDULE