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性的マイノリティの子育ては「むしろ優れている」との研究結果が明らかに

2023年03月09日

 同性カップルなど性的マイノリティに育てられた子どもは異性カップルの子どもと比べて「育ち方」で劣る点はなく、親との関係などに関してはむしろ優れているとする研究結果が発表されました。中国と米国の研究チームが3月6日、英医学誌『BMJグローバル・ヘルス』に発表したものです。
 

 研究チームは、同性パートナーシップが法的に認められている国※で実施され、1989年から2022年4月までに発表された34の研究を分析しました。その結果、両親が性的マイノリティである家族の子どもは「身体の健康」や「教育の成果」などさまざまな指標で、両親が異性の“伝統的な”家族の子どもと同程度の評価になりました。
 研究チームは、子どもの発達にとって親の性的指向は重要な要因ではないと結論づけています。調べた指標のうち「心理的適応」や「親子関係」では、性的マイノリティカップルの子どものほうが良い結果だったそうです。
 研究チームは、性的マイノリティの親は異性愛者の親よりも「多様性に寛容で、幼い子どもを大切に養育する」と考えられるため、子どもにとって性的マイノリティの両親のもとで育つことは「メリットになる面もあるかもしれない」との見方を示しています。また、子どもは性的アイデンティティを探ることを通じて「さまざまな状況で成功したり、活躍したりできる能力が高まる可能性もある」としています。
 一方で、スティグマ、差別、社会的支援の薄さなど、性的マイノリティの家族に属することに伴う大きなリスクもあるとも指摘されました。行政(政策を担当する者)や議員に対して性的マイノリティ世帯の法的保護や社会的支援を手厚くし、学校をはじめとする地域サービスをもっと利用しやすくするよう訴えています。

原文は「countries that legally recognize same-sex relationships」で、同性婚、シビルユニオン、ドメスティックパートナーシップなど何らか「法的に同性カップルの権利を認めている国」であると解釈できます(もし「同性愛が法的に認められている国」であれば、「gay sex is legal」とか「homosexuality is legal」と書かれるはずです)。Forbesの日本語記事では「同性関係が法的に認められている」と書かれていましたが、この表現ですと「同性愛が法的に認められている=同性間の性交渉が違法でない国」も含まれると受け取られる懸念があるため、「同性パートナーシップが法的に認められている国」というふうにしました。
 
 同性パートナーシップが法的に認められている国や地域では、性的マイノリティの親を持つ子どもが増えてきています。米国で同性婚の権利が保障されるなど、法的保護や社会による受容が進んできたことなどが背景にあります。しかし、多くの性的マイノリティカップルが今、親になろうとした場合に異性カップルにはない障害に直面しています。同性カップルによる養子縁組等を違法としている国も依然として多いのが実情です。

 米国勢調査局によると、米国の同性カップル世帯は2021年時点で120万世帯に上っています。2019年の国勢調査によると、子どものいる同性カップル世帯の割合は約15%で、異性カップル世帯(約40%)よりもかなり低い半面、養子や継子のいる同性カップル世帯の比率は異性カップル世帯の4倍に上っています。同性カップルは世帯規模も異性カップルより小さい傾向にあります。

 研究チームは今回の研究結果について、研究が実施されたのは同性パートナーシップが法的に認められている国※に限定されており、そうした国では同性カップル世帯への態度も好意的になりやすいとして、普遍的に当てはまるとは限らないとも断っています。


 なお、2016年にも同性カップルの両親と異性カップルの両親の間で育てられた子どもたちの発達に、精神的、身体的な発達の差は見られないとする研究結果が発表されています。子どもの健康に関する国勢調査に参加した同性カップルの両親95組と、異性カップルの両親95組の家庭に対して調査を行なった結果を基に、両親の年齢、学歴、住居環境、子の年齢、人種、ジェンダー、所在地などを分析にかけたところ、健康、情緒問題、対処行動、学習行動などの面において全般的に双方の家庭の子どもたちの間に差が見られなかったそうです。
 今回の研究結果は、この2016年の研究結果よりもさらにポジティブな、「心理的適応」や「親子関係」では性的マイノリティカップルの子どものほうが良い結果だったというもので、同性婚反対派が持つ根強い偏見に修正を迫るとともに、全世界のレインボーファミリーを勇気づけるような成果だと言えます。

 
 
参考記事:
性的少数者の子育てに「劣る点なし」 国際研究(Forbes Japan)
https://forbesjapan.com/articles/detail/61473

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