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鈴木賢氏の『台湾同性婚法の誕生 ―アジアLGBTQ+燈台への歴程』が尾中郁夫家族法学術賞を受賞しました

2023年03月20日

 鈴木賢明治大法学部教授(北大名誉教授)の『台湾同性婚法の誕生 -アジアLGBTQ+燈台への歴程』が家族法分野の栄誉ある学術賞を受賞しました。また、家族法学術奨励賞も谷口洋幸青山学院大法学部教授の『性的マイノリティと国際人権法 ヨーロッパ人権条約の判例から考える』が受賞し、(新人賞を除けば)性的マイノリティに関する本が独占するかたちとなりました。



 尾中郁夫・家族法学術賞は、日本加除出版第4代社長の尾中郁夫氏が生前、出版事業を通して、家族法関係の理論的、制度的な発展に対する多くの助成的な貢献をしたことを顕彰するために設けられました。
 家族法の研究に優れた業績をあげ、また啓蒙的な役割を果たした研究者、教育者、実務家を表彰するとともに、今後の活躍を期待することを目的としています。
 また、尾中郁夫・家族法学術奨励賞は、広く家族法の分野において優れた論文、著作を発表した、おおむね45歳以下の研究者等に対し、その業績を表彰するとともに、将来の活躍を期待して創設されたものです。
 そして、尾中郁夫・家族法新人奨励賞は、同じく優れた論文を発表した、おおむね30歳以下の若い研究者に対し、その業績を表彰するとともに、将来に向けて励ますことを目的として創設されたものです。

 3月20日、「令和5年 尾中郁夫・家族法学術賞」の受賞者が発表され、家族法学術賞は鈴木賢氏の『台湾同性婚法の誕生―アジアLGBTQ+燈台への歴程』(日本評論社)が、家族法学術奨励賞は谷口洋幸氏『性的マイノリティと国際人権法 ヨーロッパ人権条約の判例から考える』(日本加除出版)が受賞しました。
 実は家族法学術賞は2011年を最後に、ずっと受賞作なしという状態が続いていましたが、『台湾同性婚法の誕生』が12年ぶりの受賞を果たすこととなったんだそうです(スゴいこと。おめでとうございます!)
 
 『台湾同性婚法の誕生 ―アジアLGBTQ+燈台への歴程』は、台湾同性婚法のオーソリティである(そして、札幌でパレードや同性結婚式も開催したり「パートナーシップ宣誓制度」実現の立役者となったり、「自治体にパートナーシップ制度を求める会」の世話人を務めるなどしてきた)鈴木賢さんが、台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧した著書です。80年代に祁家威さんが同性婚を求めて活動を始めた頃に遡って現在に至るまでの台湾の同志の活動の歴史を概観し、台湾でどうやって同性婚が実現したのかということを史実として検証しつつ、法学的、社会学的な解説も交え、身近で日本とそんなに変わらない台湾でも同性婚が実現したのだから日本でもできないはずがないとLGBTQコミュニティを勇気付けるとともに、世間の方たち(特に「伝統的な家族観が崩壊する」とか「家族制度の根幹にかかわる」と言う人たち)の思い込みを解きほぐすような本であるとともに、専門家をもうならせ、一般の方にもわかりやすく読んでいただける、感動的ですらあるという、離れ業のようなことをやってのけている唯一無二の名著です。今回、このような栄誉ある賞を受賞したのを我が事のようにうれしく感じます。

 また、谷口洋幸氏の『性的マイノリティと国際人権法 ヨーロッパ人権条約の判例から考える』は、LGBTQ+の先駆的な100事例を紹介し、多様な性のあり方への理解と課題の解決を導く本だそう。性的マイノリティに関するヨーロッパ人権裁判所の判例等の検討を行ない、日本の判例や法政策の課題と展望を考察するもので、性別記載の変更、同性間でのパートナー関係・婚姻の制限や親子関係、性的指向・性自認に基づく差別の禁止ほか近時の動向にも対応しているそうです。(とても読みたいのですが、7,700円もするので、ちょっと手が出ないです…)
 
 鈴木賢さんはFacebookで「婚姻からの排除こそが差別の一丁目一番地であることを丁寧に書いたつもりです。いまの日本に必要な2冊が同時受賞したことが、日本を変える力になれば嬉しいです」とコメントしています。

 春休みに入った学生さんなど(もし余裕があれば)この機会にぜひ、受賞作を読んでみてはいかがでしょうか。
 
 
 
参考記事:
尾中郁夫・家族法学術賞、同学術奨励賞、同新人奨励賞(日本加除出版)
https://www.kajo.co.jp/f/company/cultural_activities/01.html

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