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LGBTQの人権を守る法整備に賛同した5万6千筆の署名が、超党派LGBT議連に提出されました

2023年04月12日

 荒井元首相秘書官が今年2月、性的マイノリティについて「見るのも嫌だ」などと差別発言をしたことに対し、「更迭だけで終わらせない! #岸田政権にLGBTQの人権を守る法整備を求めます」との署名が立ち上げられました。LGBT差別禁止法、婚姻の平等、トランスジェンダーの法的性別変更に際しての不妊手術の強制などの非人道的な要件の見直しを求める内容で、これらの法律がないのはG7では日本のみとなっており、性的マイノリティの人権を守らず、政権中枢の人物が差別発言をする国が「議長国としてG7広島サミットを開く資格はない」と指摘し、5月の開催までに一刻も早い法整備の実現をと呼びかけるものでした。賛同者は1日で1万2千筆を超え、約2ヵ月で5万6千筆余りに達しました。
 署名を立ち上げた有志団体は4月12日、超党派の国会議員が所属する「LGBTに関する課題を考える議員連盟」にこれを提出しました。議連からは稲田朋美会長代理(自民党)、谷合正明事務局長(公明党)、西村智奈美幹事長(立憲民主党)が立ち会い、受け取りました。
 稲田氏は「元秘書官の発言も理解がないことによるものだった」「皆さん方の基本的人権の問題だという思いは一緒。成立に向けてがんばりたい」と述べました。
 
 呼びかけ人である一般社団法人fair代表理事の松岡宗嗣さんは、「(元秘書官の)更迭から約2ヵ月が経とうとしていて、法整備の議論が全く進んでいない」「『理解増進法案』の議論を進めている超党派の議員連盟にも、差別を禁止する法律を求める声も届けたい」と報道陣に語りました。

 LGBT議連は2021年、LGBT理解増進法案に「差別は許されるものではない」との一文を盛り込むことで与野党合意を見ましたが、自民党内の保守系議員から反発(「種の保存に背く」などの差別発言)があり、党三役のストップがかかったことにより、国会提出が見送られました。今回の秘書官による差別発言をきっかけに、首相が自民党に法案提出の準備を指示したものの、議論は進んでおらず、5月のG7サミットまでに成立する見通しは立っていません。
 10日には公明党の山口代表が「来月のG7広島サミットまでの議員立法の成立に全力をあげていきたい」と強調し、「自民党の一部に異論を主張する人もいるが、合意形成は近づいていると予想している。経済界からは『理解増進ではなまぬるく、差別をなくすことは世界の潮流だ』との厳しい指摘も出ていて、状況を大局的に受け止めるべきだ」と述べました。
 同じく10日、エマニュエル駐日米大使は内外情勢調査会での講演で、LGBTを差別から守る法案について「(日本国)憲法に含まれる原則や価値、理想を明示した法案の可決は、難しいわけではない」「(憲法の)枠を超えるものではなく、(憲法の理念を)強化しようとするものだ」「バイデン米大統領も性的少数者の権利保護を政策として掲げている」と語っていました。

 
 有志団体は午後、厚労記者クラブで会見を開き、このままだとサミットに間に合わない、一刻も早く法整備を、と求めました。

 松岡宗嗣さんは署名提出を報告したのち、こう語りました。
「あれから2ヵ月経ちましたが、法整備の議論は進んでいません」
「昨年のエルマウサミットのコミュニケにも「我々は、女性と男性、トランスジェンダー及びノンバイナリーの人々の間の平等を実現することに持続的に焦点を当て、性自認、性表現あるいは性的指向に関係なく、誰もが同じ機会を得て、差別や暴力から保護されることを確保することへの我々の完全なコミットメントを再確認する」と明記されています。さらに、G6の駐日大使が法整備を求める書簡をとりまとめています」
「首相秘書官という政権の中枢にいる人物からの差別発言は、各国の要職の中にもいる当事者の方たち、海外のLGBTQも傷つけていますが、岸田総理は国会で差別発言について謝罪するかと問われ、実情を丁寧に説明すると述べるにとどまっています」
「日本はG7で唯一、LGBTQを守る法律がなく、昨年のコミュニケにも反しています。いったい議長国の資格があるのかということが問われます」
「今日の時点で、4月2週目。このままでは、サミットまでに間に合いません。こんな状態でサミットを開催するのでしょうか。また、たとえLGBT理解増進法案を作っても、G7の水準には達しません。当事者は、会社や学校、企業のサービス、住宅、行政のサービスなどにおいて差別的な取扱いをされてきました。理解増進法ではこれらに対処できません。差別禁止を明記しなくては。差別禁止を明記することで、理解も進むと考えます」
「民主主義、自由、人権という基本的価値を共有するG7。そのスタートラインに立つためにはLGBT差別禁止法が必要です」
「統一地方選の前に党内で議論を避けるとの報道もありました」
「しかし、世論調査でも6割が賛成し、経団連会長も、差別禁止や同性婚は海外では当たり前、日本の遅れは「恥ずかしい」と語っています。連合も、差別発言の後、すぐに差別禁止法の制定を求めました」
「世の中はすでに変わっています。特定の人が声を上げているのではなく、多くの人が認知しています。このような状況であるにも関わらず、政治が無視しています。社会の実態とかけ離れていると言っても過言ではありません。今の政治が目を向けているのは差別に苦しむ市民ではなく、特定の団体ではないですか」
「サミットに法整備が間に合わないのであれば、もはやG7から外されるレベルでしょう。人権の問題、経済、安全保障の問題にもつながっています。エルマウのコミュニケにもそう書いてあります。このままでは、日本が諸外国から取り残されてしまいます。人権や多様性のお題目を唱えているのは見せかけでしょうか。約束したのだから守ってほしいです。具体的な行動を示してほしいです。一刻も早く、差別禁止法、婚姻の平等、人権侵害のない法的性別変更を実現してください」

 2月17日に総理と面会した当事者の一人であり、プライドハウス東京のユーススタッフとして当事者やそうかもしれない若者の交流サービスに取り組んでいる大学生として総理にメッセージを伝えた山島凛佳さんは、「あのとき、総理に意見を伝えて、フィードバックもいただき、法律ができるのでないかと希望も持ちました。しかし、2ヵ月経っても議論が進んでいません。そんな想像していませんでした。お話したのは無意味だったのかとも思ってしまいます」と語りました。「この署名には、いろんな当事者の思いが、声を上げられないような当事者の思いも込められています。差別発言に傷つきながら、頑張って署名にたどり着いた方もいるでしょう。一日も早くと声を上げてきました。それなのに…悔しいです」「私もこれまで数多くの署名をしてきました。これが最後の署名であってほしいです」「重い声として受け止めてほしいと心の底から思っています」「この国で生きていけるようになるための法整備をお願いします」
 
 「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告の一人であり、元東京レインボープライド共同代表の山縣真矢さんは、「荒井秘書官の差別発言を聞いて、怒りを覚えました。数日後に官邸にメールを送りました。これは人権の問題だと。友人の死に直面した当事者もいると」と語りました。「もちろん返事が来るわけでもなく。当事者と会って面談もしたのに、法整備の進展もなく」「英国の友人から、同性婚できないの? イマドキそんな先進国ってある? と言われました。人権やジェンダー平等に関してどんどん周りが進んでいくのに、日本だけ遅れていて、恥ずかしい。先進国としてやっていくのであれば、人権を守ることは大前提です」「あとは政治が、首相が動くだけです。一日も早く法整備を」

 トランスジェンダーの活動家、時枝穂さんは、「先日もこの場所で会見しましたが、2年前と同様、性自認の解釈をめぐって、女装した男性がトイレやお風呂に入ってくるなどという飛躍した議論やデマが広がっています」と訴えました。「これに傷つく当事者も多く、SNSが唯一の居場所になっている当事者も多いのに、SNSにいられなくなっています。トランスジェンダーがあたかも危険な存在、犯罪者であるかのように恐怖心を煽り、私たちを分断しようとするやりかたです」「差別禁止法ができれば、今苦しんでいる当事者にとっては、いじめや差別が解消されたり、何かよくなるかもしれないという希望が持てます。命を絶ってしまうこともなく、しなくていい苦労をせず、生きやすくなると思います」「反対している方もいますが、たとえ法案が成立しても、みなさんの生活はこれまでと同じで、何も脅かしません。パートナーシップ制度ができて、これだけ広がりましたが、人々の理解や認知が広がっただけで、何も滅びたりしていません」「よりよく変わってきた社会が、このアクションを通じてさらにいい方向に変わると信じます。必ず法律が成立するよう、求めます」

 

 

参考記事:
「LGBTQの人権を守る法整備を」 5.6万人の署名を議連に提出(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR4D5QVZR4DUTIL00N.html
5万人がLGBTQの人権守る法整備に賛同。有志が超党派議員らに署名提出(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_64363f9be4b06e56d69623fe

“LGBT議員立法 G7広島サミットまでに成立を”公明 山口代表(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230410/k10014034331000.html

LGBT法成立に期待=「憲法の枠内、難しくない」―駐日米大使(時事通信)
https://sp.m.jiji.com/article/show/2925486

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