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LGBT法案の「差別は許されない」文言をめぐり「日本の国柄に合わない」などの反対意見、議論は連休明けに持ち越しへ

2023年04月28日

 4月28日午後、自民党の「性的マイノリティに関する特命委員会」の内閣第1部会などとの合同会議が開かれ、LGBT理解増進法案の議論が本格的に始まりました。しかし、「差別は許されない」という文言への賛否が分かれたことなどから、大型連休明けから議論を再開することになりました。
 LGBT法連合会は同日の会見で「自分たちで議論を遅らせたのに(サミットに)間に合わなければ言い訳にもならない。責任ある政党として努力してほしい」と述べました。
 

 党内では、法案に盛り込まれている「性自認を理由とする差別は許されない」という文言の扱いが焦点となっていて、出席者からは「そのまま成立させるべきだ」という主張が出た一方、「何が差別にあたるのかあいまいで認められない」と反対意見も出されました。
 また、来月のG7広島サミットまでの成立を求める声が与野党内で強まっていることをめぐっても、早期成立を主張する意見と、期限を区切るべきではないという意見が出されました。26日には萩生田光一政調会長が「サミットで時間を切るというようなことは筋が違う」と述べ、G7サミットまでに法案を成立させることに否定的な考えを示していました(日刊ゲンダイは「党の法案とりまとめ役の萩生田氏が真逆のことを言っているのだからどうかしている」「こんな男が政調会長ではLGBT法は風前のともしび。日本はグローバルスタンダードから外れていくばかりだ。岸田首相は人事をよく考えた方がいいのではないか」と批判しました)
 また、複数の出席者によると、この会合で保守系議員からトランスジェンダー女性のトイレ利用について女性が不安を感じるという理由で性自認の差別禁止に反対する意見が上がったといいます(「心は女性だと言って女装した男が女湯に」などネット上で広がっているデマやトランスヘイトを真に受けた意見と言えるでしょう)
 これを受けて、会議は、大型連休明けから議論を再開することになりました。内閣第1部会長の森屋宏議員は、議論の取りまとめの時期について「決めるのは党執行部だ。今国会の会期を勘案しながら合同部会として話をまとめていくのだろう」と述べるにとどめました。
 
 会議終了後、記者団の質問に対し、出席した複数の議員がコメントしています。
 稲田元防衛大臣は「国会の責任として、理解増進のための法律をつくるべきだと発言した。この2年間、何も議論がなされなかったのは残念だが、重要な法案であり、しっかり議論して成立に向けて頑張りたい」と述べました。
 井出庸生衆議院議員は「2年前から止まっている理解増進法案の1日も早い成立を期すべきだと申し上げた。法案を成立させ、理解を増進するための政府による正しい知識の啓発などを早く始めるべきだ」と述べました。
 保守派の衛藤晟一元少子化担当相は「超党派の議員連盟がまとめた『性自認による差別は許されない』という文言は、どのような差別の実態があるのか定義がはっきりしない。定義がはっきりしないことばを入れるのは好ましくない」と述べました。
 そして(これまでも「LGBT差別があったら訴訟となれば社会が壊れる」「差別禁止は分断を招く」などの発言をしてきた)西田昌司参議院議員は、「もともと自民党がまとめていた内容にとどまっていればいい。ただ、そこから先に『差別は許されない』などの厳しいことばが使われると、日本の国柄に合わない」「社会の根幹に関わるので慎重に進めるべきだ」「(LGBTQの当事者に)逆に不利益になるのではないか」と述べたそうです。
 
 自民党の対応に、各党は苛立ちを強めています。G7広島サミット前の法案成立を求める公明党の石井啓一幹事長は、自民党が修正を検討していることに関して「(2年前に)超党派でまとめた案と趣旨が変わらないことが大事だ」と述べました。立憲民主党の泉健太代表は「自民党の中でのさらなる譲歩、後退は許されない」と牽制しました。

 
 同日、自民党内の議論の内容について、LGBT法連合会と「Marriage For All Japan—結婚の自由をすべての人に」が記者会見を開きました。
 MFAJの松中権理事は、岸田文雄首相の元秘書官によるLGBTQ差別発言から約3ヵ月が経過したことに触れながら「法律制定が拙速だと言ってるのは自民党だけ。命を守る法律を早く作ってほしい」と要望しました。
 MFAJ代表理事の寺原真希子弁護士も、「差別禁止が明記されない理解増進法を制定するだけでは、政府への不信感を解消できない」「いまこの瞬間も差別をされている性的少数者を救済するつもりが本当にあるのなら、差別禁止を明記し、同性間の婚姻を認めるための民法改正を直ちに進めてほしい」と述べました。
 LGBT法連合会の事務局は、G7サミットを前に、海外から日本のLGBTQの置かれている状況への注目の高まりを感じる一方、当事者からは「今回法整備がされなかったら、いつされるのか」など、法律や社会が変わらないことへの不満や徒労感が寄せられていると報告しました。神谷悠一事務局長は、「今になって、『サミットまでには間に合わない』という意見も上がるが、冗談ではない。自分たちで議論を遅らせたのに(サミットに)間に合わなければ言い訳にもならない。責任ある政党として努力してほしい」と要望しました。神谷氏はまた、トランス女性のトイレ利用を引き合いに出しての反対意見について、「冷静に事実に基づいて議論してほしい」と訴えました。
 両団体は、こうした声をまとめた要望書を政府に提出する意向です。


 松岡宗嗣さんが非常にわかりやすく図解していますが、「多くの当事者団体」「G6・EU駐日大使」「経団連」「経済同友会」「連合」「公明党」「野党」だけでなく、世論の多くが法整備に賛成している一方、自民党内の一部の議員(その背景に旧統一教会や神政連の「政策協定」があることが明らかになりつつあります)の根強い反発で法整備にストップがかかっている状況です。


 SNSでは、西田議員の「かなり厳しい対立を生むような言葉遣いで日本の国柄に合わず、(LGBTQの当事者に)逆に不利益になるのではないか」という発言について、「トンデモ主張する自民党の西田昌司参院議員。どんな国柄だ。差別を真っ向否定できずに、何が国柄だ」「「差別は許されない」が"国柄に合わない"国、シンプルにヤバい国だろ…」「意味不明な上に恩着せがましい」「自民党という病、膏肓に入る。「国柄」? その「国」、滅ぶよ。この30年でもう半分、滅んでるし」など、批判の声が噴出しています。
 
 

参考記事:
「サミットで時間切るの筋違う」 LGBT法案に萩生田政調会長(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15621997.html
傍若無人な萩生田政調会長に自民党執行部カンカン!「LGBT法案」を“点数稼ぎ”で妨害(日刊ゲンダイ)
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/322225
自民 LGBT法案 “差別は許されない” に賛否 連休明け議論再開(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230428/k10014052971000.html
LGBT法案 自民党での議論本格化も…異論相次ぐ(山梨放送)
https://www.ybs.jp/tv/wnews/news91pbmq9o5g86hyaifo.html
自民、LGBT法案の議論本格化 反対相次ぎ、5月8日に再議論(共同通信)
https://www.47news.jp/news/9261327.html
LGBT法巡り自民党内の溝あらわ G7サミット前成立に黄信号(北海道新聞)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/839173
(#政官界ファイル)LGBT法案に遠藤総務会長「早期成立を」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S15622955.html
公明、超党派合意案の趣旨維持を LGBT法議論巡り(共同通信)
https://www.47news.jp/politics/9259220.html
LGBT法案「事実に基づき議論を」 当事者ら、G7前の成立求める(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230428/k00/00m/040/335000c

LGBT理解増進法案めぐり自民党内の意見まとまらず…広島サミット前の成立見通せず(日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/general/nikkan/news/202304280001305.html
LGBTなどの当事者団体ら「命守る法律の成立を」G7広島サミットまでに「LGBT理解増進法」の成立訴え(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/462321
LGBT理解増進法案、「差別禁止を明記し、成立を」 当事者ら訴え(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR4X6GJTR4XUTIL013.html
LGBT法案「事実に基づき議論を」 当事者ら、G7前の成立求める(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230428/k00/00m/040/335000c
自民、LGBTQ法案で党内対立が深刻 異論相次ぎ、集約見通せず 「差別は許されない」は「日本に合わない」(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/246922

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