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共同通信の世論調査で同性婚へ賛成が71%にも上り、NHKの世論調査では性的マイノリティの人権が「守られている」と感じる方はたったの9%であることがわかりました

2023年05月04日

 日本国憲法が施行されて5月3日で76年を迎えるにあたり、複数のメディアが憲法に関する世論調査を実施しました。
 共同通信の世論調査では、同性婚を「認める方がよい」との回答が71%にも上りました。他国と比べてもかなり高い数字です。
 NHKの世論調査では、「LGBTQなど性的マイノリティの人たちの人権が守られていると思うか」との質問に対し、「守られていると思う」が9%、「守られていないと思う」が42%だったことがわかりました。
  

 共同通信は5月1日、憲法記念日の5月3日を前に憲法に関する世論調査の結果をまとめました。今年3~4月、18歳以上の男女3000人を対象に郵送方式で実施しました。同性婚については「認める方がよい」が71%に上り、「認めない方がよい」の26%を大きく上回りました。今年2月の同社の調査では賛成が64%でしたので、(2月の調査は電話調査で方式が異なるため、単純に比較はできませんが)7ポイントも上昇しています。この間のLGBTQコミュニティの運動やメディア報道も後押しして、人々の間にさらに理解や支援が広がっていると見ることもできるのではないでしょうか。
 同性婚への賛成が70%を超えるというのは、欧米の同性婚を実現している国々にも劣らない、高い数字です。日本社会はすでに同性婚を認める準備ができている、社会は変わったと言えるのではないでしょうか。


 朝日新聞社と東京大学の谷口将紀研究室が2~4月に実施した共同調査(朝日・東大谷口研調査は衆院選・参院選の際の調査で知られています)によると、同性婚に賛成する方が回答者全体で50%、中立31%、反対派19%となり、自民支持層でも賛成が40%で反対24%を上回りました。選択的夫婦別姓への賛成も60%で、反対の13%を大きく上回りました。
 2022年参院選を前に候補者を対象に実施した調査では、自民支持層の同性婚賛成派は14%で、反対派が30%でしたので、大きく変化した様子がうかがえます。谷口教授は「夫婦別姓、同性婚ともに有権者は自民支持層を含めて賛成派が反対派を上回っている。一方、自民の国会議員は賛成派が増えつつあるものの、反対派がまだ多数で、特に党内保守派に強い抵抗感が見られる」と分析しています。

 
 また、NHKは先月7日から3日間、全国の18歳以上を対象にコンピューターで無作為に発生させた固定電話と携帯電話の番号に電話をかけるRDDという方法で世論調査を行ないました(他のメディアでも多く採用されている方法です)。調査の対象になったのは3275人で、47.1%にあたる1544人から回答を得ました。
 LGBTQなど性的マイノリティの人たちの人権が守られていると思うかどうかという質問に対しては、「守られていると思う」が9%、「守られていないと思う」が42%、「どちらともいえない」が41%でした。
 同性どうしの結婚についてどう思うか聞いたところ、「法的に認められるべきだと思う」が44%、「法的に認められるべきではないと思う」が15%、「どちらともいえない」が37%でした。年代別にみると、「認められるべきだと思う」は、18歳から29歳が68%、30代が58%、40代が62%で全体よりも高くなりました。
 同性婚が認められるべきだと思うと答えた人に理由を聞いたところ「家族に認められた行政サービスが受けられないなどの不利益が生じるから」が33%で最も多く、「海外でも認められている国はあるから」が26%、「法の下の平等などを保障した憲法に違反していると思うから」が25%、「憲法で同性婚は否定されていないと考えているから」が10%でした。
 
 性的マイノリティの人権問題に詳しい青山学院大学法学部の谷口洋幸教授は、今回の世論調査の結果について、「企業や自治体がいろいろな施策を進める中で性的マイノリティの人たちの現状や困難を人権問題として捉えることが広がってきたと感じる。同性どうしの結婚についても自治体の『パートナーシップ制度』などが広がり、社会の寛容度が高まった状況が反映されているのではないか」と分析しています。また、若い世代で同性婚を法的に認めるべきだと思う人の割合が高いことについては「2001年にオランダで同性婚が初めて可能になり、若い世代はそうした国が普通に存在する社会で暮らしてきた。同性婚を当たり前のように選択肢の一つとして捉え、関心が『認めるべきか』ではなく『認めなくていいのか』というフェーズに移っていると感じる」としています。

 松岡宗嗣さんは、同性婚などの問題を考える中で憲法に関心を持つようになったといい、同性のパートナーと一緒に暮らす部屋を探した際に「家族向けの物件で同性カップルは入居できない」と断られるなど差別的な対応を受けた経験もあり、「憲法が保障する人権が守られていないと感じる」と語っています。「憲法には『差別されない』とか、『個人の尊重』などが書かれていて、その中にはマイノリティも含まれていると思う。自分らしく生きられることを保障した憲法の理念が社会に落とし込まれるような政治や法律を作っていってほしい」 
 
 日本大学の憲法学のゼミでは、討論のテーマを学生から募っていますが、ここ数年、性的マイノリティに関する話題を議論したいという声が多くあがっているそうです。先月の授業では「同性どうしの結婚」をテーマに今の法律で同性どうしの結婚が認められていないことが憲法に違反するかどうか、20人余りの学生が条文の解釈などを検討しました。
 ゼミを主宰する日本大学法学部の玉蟲由樹教授は「憲法は社会がどのように進みどうあるべきかを考える共通基盤であり、憲法を通して人々の生き方や尊厳がどのように保障されるべきかを考えることは、結果的に人権をさらに一歩進めることになると思う。若い世代には自分たちが人権を作っていく主体だということを意識してもらいたい」と話していました。


 なお、憲法24条の「婚姻は両性の合意のみ」に基づくとの条文が同性婚を認めているのか、禁止しているのかという点についてさまざまな学説がありますが(主に「保障」「許容」「禁止」の三つに分かれています。憲法学者の間では「許容」説が有力です)、憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったという認識は共通で、政府も24条が同性婚を禁止しているとの見解はとっていません。2021年、衆議院法制局は同性婚の法制度化について「憲法上の要請であるとの考えは十分に成り立ち得る」との見解を示しています


【追記】2023.5.9
 性的マイノリティの人権問題に詳しい青山学院大学法学部の谷口洋幸教授は、今回のNHKの世論調査の結果について、「企業や自治体がいろいろな施策を進める中で性的マイノリティの人たちの現状や困難を人権問題として捉えることが広がってきたと感じる。同性どうしの結婚についても自治体の『パートナーシップ制度』などが広がり、社会の寛容度が高まった状況が反映されているのではないか」と分析しています。また、若い世代で同性どうしの結婚を「法的に認めるべきだと思う」という回答が全体より高かったことについては「2001年にオランダで同性婚が初めて可能になり、若い世代はそうした国が普通に存在する社会で暮らしてきた。同性婚を当たり前のように選択肢のひとつとして捉え、関心が『認めるべきか』ではなく『認めなくていいのか』というフェーズに移っていると感じる」と話しています。
 


参考記事:
改憲機運は高まらず71% 同性婚71%容認、憲法世論調査(共同通信)
https://www.47news.jp/9273537.html
夫婦別姓「賛成派」 自民支持層でも多数派に 朝日東大調査(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR4T6HTGR4GUTFK01P.html
性的マイノリティーの人権「守られている」が9% NHK世論調査(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230503/k10014056241000.html

“LGBT”議員立法「差別は許されない」文言扱い議論続く 自民(NHK政治マガジン)
https://www.nhk.or.jp/politics/articles/statement/98944.html

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