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毎日新聞が憲法記念日に「LGBTQ×憲法」にまつわる記事を多数掲載し、メイン的な扱いに

2023年05月05日

 5月3日の憲法記念日には新聞各紙が憲法に関連する記事を特集するのが通例となっていますが、毎日新聞は今回、最高裁の戸倉長官がLGBTQの権利について「広い視野と深い洞察力が必要」だと述べたニュースをはじめ、「憲法とLGBTQ」と題した記事など、LGBTQ関連の記事を多数掲載し、メイン的な扱いとしていました。
 

 まず、「憲法24条の「両性の合意」は同性婚を禁じてはいない」という記事で、法政大の建石真公子教授(憲法学、国際人権法)は、「英仏など欧州46カ国が批准して民主主義や人権、法の支配の分野で共通基準を定めた「欧州人権条約」の12条にも「婚姻することのできる年齢の男女」と、日本の「両性」と類似の文言がある。欧州人権裁判所は2010年判決で12条の文言は同性婚を「排除するものではない」と解釈し、批准国が国内法で同性婚を認めてもそれは12条の範囲との考えを示している。さらに2021年判決では、異性に限らず2人の人間が共に家族となって暮らしたいという家族生活の自由と尊重は、異性婚の人たちの婚姻を脅かすものでなく、異性婚が優先されるべき社会的利益はないと判断した」として、「日本国憲法24条1項も同性婚を禁止はしていないし、実際に同性婚を認めても24条の保護する婚姻の自由違反とはならないと解釈しうる」と述べています。そして、「日本の政治は保守政権が長く続いており、同性婚法などを制定した当時のフランスのように人権を旗印に世論にアピールしていく状況にはない。そういう国会や行政に代わって立憲主義を支えるものとして、司法がこれまで大きな役割を果たしてきた」として、「同性婚は家族の形に関わることであり、その変更は民主的な過程で決めていくことがふさわしいが、政府や国会の行為不作為で起こった人権侵害には司法が救済することが求められている」と結論づけています。
 
 それから、「憲法とLGBTQ(その1) 同性婚法制化、道険し 自民保守派、反対根強く」では、自民党内でのLGBT法の議論がなかなか進まないことについて、同党ベテラン議員による「法案成立に向けて最大の壁は、自民党の保守派だ」との声を掘り下げ、神社本庁(神道政治連盟)との結びつきを指摘しています。自民党保守派の閣僚経験者は「理解増進ならいいが、差別禁止になると、すぐにその先の同性婚容認の議論に直結してしまう」と警戒しているそうです。

 続く「憲法とLGBTQ(その2止) 司法、国に厳しい視線 パートナー制度、残る不利益」では、「パートナーシップ制度」では問題の根本的な解決には至らないことや「結婚の自由をすべての人に」訴訟で違憲判決が出たこと、法的性別変更における断種要件をめぐる最高裁大法廷審理のこと、経済産業省のトランス女性職員のトイレ利用の権利に関する最高裁審理のことなどを概観しています。

 また、「同性婚、私たちも「ふうふ」に 当事者が語る“高いハードル”」という記事で、「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟の原告であるまさひろさんとこうすけさんのカップルへのインタビューも掲載されていました。6年前に出会い、結婚式も挙げ、家族そのものの暮らしをしているお二人は、福岡地裁で「同性愛者だというだけで結婚ができず、互いにもしものことがあった時、パートナーとして扱われず、二人で築いてきたことの全てが奪われてしまうかもしれない。いつ壊れるか分からない幸せや生活を続けていくのはとてもきついことです」と意見陳述しました。
 こうすけさんは記事中のインタビューで「社会はとっくに変わっている。法律だけが遅れていて、社会の一員である私たちを認めず、差別し続けている」「婚姻の権利は獲得するものではなく、私たちが昔から持っているはずのもの。それを認めて、平等な社会になってほしい」と語っています。
 福岡地裁では今年6月8日に判決が予定されています。
 
 京都産業大の渡辺泰彦教授(家族法)は、「同性婚訴訟では違憲、違憲状態、合憲と異なる判決が出ているが、「このままではいけない」というメッセージを出している点は共通している。合憲とした大阪地裁ですら、同性カップルが異性カップルのように結婚できず、社会の中で公に認知される利益を受けられない点を問題視している。判決の結論が分かれたのは、司法が国会の立法裁量にどこまで踏み込むかで濃淡が出たに過ぎない」と指摘し、「国会は司法の警告を受け止め、適切な立法措置を取る必要がある。多数派の意見で少数者の人権がないがしろにされることはあってはならない」と述べています。


 こうした一連の記事を通じて読者の方々は、同性カップルがどんな不安や困難に直面しているかということをリアルに感じつつ、憲法24条の「両性の合意」は同性婚を禁じるものではなく、同性婚法ができたとしても憲法上問題はないということ、国会が司法の警告を受け止め、適切な立法措置を取る必要があるということを認識し、(いまでも支持率は高いですが、さらに)同性婚の実現に賛同してくださるようになるのではないでしょうか。
 憲法記念日にふさわしい、また、全国のLGBTQ+Allyコミュニティにエールを送るような、とても良い特集でした。
  
 

参考記事:
憲法24条の「両性の合意」は同性婚を禁じてはいない(毎日新聞)
https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20230427/pol/00m/010/008000c

「憲法とLGBTQ(その1) 同性婚法制化、道険し 自民保守派、反対根強く」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230503/ddm/010/040/001000c
「憲法とLGBTQ(その2止) 司法、国に厳しい視線 パートナー制度、残る不利益」(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230503/ddm/010/040/010000c

同性婚、私たちも「ふうふ」に 当事者が語る“高いハードル”(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230502/k00/00m/040/302000c

憲法とLGBTQ 判決の「警告」受け止めて 渡辺泰彦・京都産業大教授の話(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20230503/ddm/010/040/012000c

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