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『SPUR』の「改めて"結婚の平等"について知ろう。同性婚がある社会を見つめる」という記事がとても良いです

2023年05月23日

 集英社の『SPUR』が「改めて"結婚の平等"について知ろう。同性婚がある社会を見つめる」と題した特集記事を掲載しました。ニュージーランドのモーリス・ウィリアムソン議員が国会で行なったスピーチのことや、米国・台湾の同性婚実現の立役者のお話、松岡宗嗣さんらのお話を通じて、どうすれば日本で婚姻平等が実現するのか?について探る良記事です。


 PART1「同性婚法制化から10年、ニュージーランドの今を知る」は、10年前、アジア・太平洋地域で初めて同性婚が法制化されたニュージーランドをフィーチャーしています。
 現在駐韓ニュージーランド大使をつとめるフィリップ・ターナーさんと、同性パートナーシップ・ネット共同代表の池田宏さんのお二人は、東京で出会いましたが、池田さんは「日本ではゲイであることを家族にも言いにくい状況で、自分らしく生きられないと感じていた」ため、1996年にニュージーランドに移住し、まさに「自分らしく生きる自由を実感した」そうです。「当時からニュージーランドの外務貿易省は同性カップルも家族として外国に赴任させていると聞いたときは驚きました。日本とは異なり、すでにオープンな社会に入っていったので、移住してからは抵抗感なく周囲の人に〝フィリップと一緒なんです〟と言えたんです」
 ニュージーランドでは1986年に同性間の性行為が非犯罪化され、1993年には性的指向を含む包括的差別禁止法が成立し、3年以上同居している事実婚カップルに資産の公平な分配を保障する制度が同性カップルにも適用され、2004年にシビルユニオン法が制定。お二人も2010年にシビルユニオンを結び、オークランドと東京で盛大に結婚式とパーティを開いて、家族や友人の祝福を受けたそうです。さらに2013年には同性婚が実現し、2018年に結婚しました。ターナーさんが新たに韓国に赴任するにあたり、池田さんは韓国政府が認めた史上初の同性の外交官配偶者として同行することができました。
「同性婚が合法化されたときはやっぱりうれしかったですが、個人的には差別禁止法とシビルユニオンが持つ意味のほうが、同性婚より大きいと思っていて。これらにより社会は変化し、シビルユニオンで国内では結婚とほぼ同じ権利を手にしていました。ただ外国では浸透していない制度なので、赴任にあたり法的な婚姻関係を結ぶことにしました」とターナー氏は語ります。
「シビルユニオンが設けられたときには、キリスト教関係者などが反対を表明しました。でも他の国々のようにヘイトが表に出ることはなかった気がします。そしてシビルユニオンを結ぶ同性カップルが増えるにつれて、もはや議論にもならなくなりました。〝だから何?〟という感じで」と池田さんは語ります。
 
 保守系の国民党に所属していたモーリス・ウィリアムソン議員は、今からちょうど10年前の2013年4月、同性婚を承認する法案の採決を前に、あの有名な演説を行ないました。同性婚に反対することの無意味さを、ユーモアを駆使して巧みに説くものです。
 当時は建設大臣を務めており、実は多忙のあまり、スピーチを頼まれていたことをすっかり忘れていたというウィリアムソン氏は、「夜の7時半頃だったか、政府庁舎の執務室で仕事をしていたら携帯電話が鳴って、『すぐに来て!』と呼び出され、慌てて国会議事堂に向かいました。そして、いくつかのポイントを書きなぐったメモを片手に話したんです。その後執務室に戻って1杯飲んでいたんですが、報道官が血相を変えてやってきて、YouTubeに投稿されたスピーチの映像がバズって、取材依頼が殺到しているという。今思うと、用意した原稿を読み上げるのではなく、勢いに任せたことが功を奏したのでしょう。原稿を読み上げるだけでは退屈で、インパクトはなかったかもしれません」と、当時のことを振り返っています(面白いですね)
 ちなみにウィリアムソン氏は「いわゆるリバタリアンで、他人を傷つけたりしない限り、同意のある成人の間で行なわれることに口を挟まないスタンスを取っています」とのこと。締めの言葉として旧約聖書の申命記の言葉「恐るるなかれ」を引用していましたが、変化を恐れる反対派に対しては、「変化に抵抗する理由はたいてい、未知の領域への恐怖です。敬虔なカトリック信者である私の母が好例で、同性婚に反対していました。『同性婚のどこがいけないと思う?』と尋ねても、『とにかく間違っている』と繰り返すだけ。だから『具体的にどこが間違っているの? 近所に住むゲイカップルが結婚したとしても、ママの人生は変わらないよ』と15分くらい話したら、納得してくれました」と語っています。 
「お前は次の選挙で落選すると私も散々言われました。しかし翌年の選挙では得票率がアップしたんです。正しい選択をしないで議席にしがみつくことを優先するなど言語道断ですし、結局反対した議員の多くが、のちに『私は間違っていた。今採決が行われたら賛成する』と公言しています。他方で、賛成した議員にはひとりとして『今採決が行われたら反対する』と言う者はいません」

 ニュージーランド議会は、10年間でLGBTQ+の議員が全体の1割を占めるまでになり、この1月まで副首相を務めたグラント・ロバートソン氏もゲイの方でした。ウィリアムソン氏は「私が初当選した1987年には考えられなかったことですが、世界は常に変化し、価値観も変わります」と語っています。
「反対派にはシンプルに訴えることが重要です。たとえば、同性婚を合法化した国の中に、社会に悪影響を与えたから撤廃するという国がありますか? と問う。みんな答えに窮するでしょう。あるいはLGBTQ+の人権を侵害する国々と同一視されたいですか?と尋ねてください。そして何よりも日本の政治家たちに『Stop being silly(バカげたことはやめよう)』と伝えたいですね。つべこべ言わずに異性愛者と同じ権利を同性愛者に与えてください。スピーチでも触れた通り、災厄は起きません。明日も太陽は昇ります(笑)。現在のニュージーランド社会がそれを証明していますし、視察をしたい方がいたら、私が喜んでご案内しますよ」
 
 Twitter上ではトランスジェンダーだけでなく代理母出産にからめてゲイカップルを攻撃する投稿が急に増えたり、二丁目でヘイト街宣が行なわれたり、暗澹たる気持ちになるようなバックラッシュ的な動きが激しくなっている今日この頃ですが、こうした前向きな気持ちを取り戻せるような、希望が持てるような素晴らしい記事をお届けしてくれるのは本当にありがたいことです。感謝です。


 PART2「アクティビストに聞いた、同性婚の成立とその後の社会」は、エヴァン・ウォルフソン弁護士、呂欣潔(ジェニファー・ルー)氏という母国の同性婚実現の立役者となったアクティヴィストをフィーチャーしています。

 PART3「どうすれば結婚の平等は実現する?日本で同性婚は成立するのか」では、松岡宗嗣さんやLGBTとアライのための法律家ネットワーク(LLAN)の藤田直介共同代表に話を聞いています。

 ぜひ読んでみてください。

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