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【結婚の自由をすべての人に】福岡地裁の判決が出た後、記者会見が開かれ、原告の方々が思いを語りました

2023年06月08日

 福岡地裁判決は、「同性カップルは婚姻制度によって得られる利益を一切享受できず、法的に家族と承認されない重大な不利益を被っている。自ら選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない法の規定は、もはや個人の尊厳に立脚すべきものとする24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない」として、違憲状態であるとの判断を示すものでした。(その一方で、民法などの規定が「法の下の平等」や「婚姻の自由」を認めた憲法に違反するとの訴えは退けました)

 

 8日午後、原告と弁護団のみなさんが記者会見を開き、判決をどう受け止めたか、判決はどのようなものだったか、について語りました。
 最初に判決のポイントについて説明がありました(要旨を下記に掲載しますので、読んでみてください)
 弁護士の一人は、「いまの結婚制度をそのまま同性婚にもあてはめたら、いろいろ問題が生じてくる。別の制度を考える必要もある。だから立法府はどんな問題が生じていくのか検討をしていかなきゃいけないよね。と書いている。でもまだ、検討してないでしょ。だから立法府の検討と対応に委ねますと言っているように受け取れる」と語りました。
 
 それから、原告のココさん&ミコさんからのメッセージが読まれました。「訴訟に関わって3年。子どもの背は20センチも伸びました。私たちはいつになったら、家族で、この国で、安心して暮らしていくことができるのだろうか。「いつか(日本でも同性婚が)できる」という言葉を耳にします。でも、その「いつか」は、誰によって、何によって決められているのでしょうか…。こういう言葉もあります。「いつかできることはすべて、今日でもできる」。結婚の自由をすべての人に!」

 会場に来られた2組の原告の方たちが、判決を聞いてどう感じたか、語りました。
 まさひろさんは、「ココさんたちが『いつになるんだろう』と言っていたこと、最近すごく考えます。周りの友人や家族にも、体調が悪い方や不幸があります。(言葉を詰まらせながら)他の地域の訴訟でも、亡くなってしまって同性婚に間に合わなかった方たちもいます。これは人権、命の問題です。生まれ持って選べない性的指向で、権利を奪われている。この不平等を解消したいのです」「今日の違憲状態との判決、ほっとしています。欲を言えば、『違憲』だと言い切ってほしかったという思いはありますが、でも一歩前進していると感じています」「国会の場で、一刻も早く、検討を要すると言うだけでなく、議論を進めていただきたいと強く思います」と語りました。
 まさひろさんのパートナーのこうすけさんは、「違憲状態と聞いて、安心しました。『同性カップルが法的に家族と認められないのは重大な不利益だ』と言っていただきました。私たちの思いを汲んでくださったと感じます。ただ、そのほかの『法の下の平等』などに違反していないのか、と思いました」「60代以上の方は同性婚についての意見が拮抗しているという判断もありました。その年代の方々が国会にいらっしゃることもあり、議論が始まらないから、こうやって裁判を起こしました。その裁判所が議論を国会に投げてしまったら、私たちはどこに思いをぶつければいいんでしょうか」「私たちがこの裁判を始めてから、ずっと同じ言葉を言い続けています。私たちの家族の形は、国が決めることではないと思います。もっともっと強くメッセージを送って、国会が議論をしなければいけないとわかるようにしてほしかった」「裁判はまだまだ続きますが、真摯に思いを伝えていきたいです」と語りました。
 原告のこうぞうさんは、「メディアでも多く報道していただき、判決を見た友人や知人からも『おめでとう』とか『一歩進んだね』といったメッセージがたくさん届きました」「福岡で違憲状態との判決が出たことを素直に喜びたいと思います。明確な合憲は大阪のみということです」「すぐに何かが変わるわけではないし、両手を挙げて喜べる状態ではないが、これからも諦めず、沈黙もしません」「今回の判決も、必ず国が重い腰をあげる一助になるはずなので、結婚の自由が実現するまで応援してもらいたいです」と語りました。
 こうぞうさんのパートナーのゆうたさんは、「違憲状態と聞いて、合憲でなくてよかったと思いました。ただ、名古屋地裁の後でしたので、もう一歩踏み込んだ判決をしてくれればいいなと思っていて、ほかの地裁でも出たような内容だったので、今これをここで言うのか、という残念な気持ちになったのも確かです。できれば、人権の問題、人生の問題、命の問題であるということをもっと言ってくれたらよかったと思います」「裁判はこれからも続きますが、引き続き、早く法制化を、と訴えます。法律上の家族になれるように。多くの人が幸せになる社会になるよう、動いていきたいです」と語りました。
 会場からは拍手が送られました。そして、大勢詰めかけた記者からは、盛んに質問が寄せられていました。
 一日も早く婚姻平等を、と求める気持ちが会場中にみなぎっていたのを感じました。


<福岡地裁判決要旨>
(判決要旨と全文はCALL4に掲載されています。下のほうの【九州(福岡)】判決要旨、【九州(福岡)】判決全文のリンク先をご覧ください)

◎憲法24条1項(婚姻の自由)に違反するか
 24条1項の「両性」「夫婦」という文言からは、男女の婚姻を想定していると解さざるを得ず、制定時に同性婚は想定されていなかったと認められる。同性婚を禁止する趣旨とはいえないものの、24条1項でいう「婚姻」は異性間の婚姻を指し、同性婚を含まないと解される。
 婚姻についての社会通念や国民の意識、価値観は変遷しうるものであり、同性婚が異性婚と異ならない実態と国民の社会的承認がある場合には、同性婚は「婚姻」に含まれると解する余地がある。同性婚を法制度化している国が相当数あり、我が国でも多くの自治体でパートナーシップ制度などで法的保護を与えようという動きや同性愛に対する偏見を除去しようとする動きがある。しかし、世論調査などによれば同性婚に対する価値観の対立が存在し、同性婚が異性婚と変わらない社会的承認が得られているとまでは認めがたい。同性婚を24条1項の「婚姻」に含むと解釈することは少なくとも現時点では困難であり、24条1項に違反するとはいえない。

◎憲法13条(幸福追求権)に違反するか
 婚姻は、相手がたまたは行政機関等の間で、有効となる種々の権利義務を発生させるものであり、婚姻の有無ひいては婚姻制度を利用できるか否かは、その者の権利義務に影響を与えるものである。わが国では、家族を基本的な生活の単位として様々な制度が組み立てられており、公的な権利関係にとどまらず、私的な関係においても家族であることが公証されることで種々の便益を得られる仕組みが多数存在する。このような公的にもたらされる訳ではない事実の利益も、公証の効果として一律に発生するものであり、これを発生させる基本的な単位である子人ができず、その効果を自らの意思で発生させられないことは看過しがたい不利益である。国民の意識における婚姻の重要性も併せ鑑みれば、婚姻をするかしないか及び誰とするかを自己の意思で決定することは、同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益と認められる。
 しかしながら、婚姻とは各種法律によりその要件が定められて、これを満たしたときに一律に権利義務が発生する法律上の制度であり、当事者の意思のみによってその要件や効果を決定できるものではなく、婚姻を基礎とした家族の形成も当事者の意思によりその要件は効果が全て定まるものではない。このことは、婚姻自体が国家によって一定の関係に権利義務を発生させる制度であることからの当然の帰結であって、同性愛者の婚姻の自由や婚姻による家族の形成という人格的自律権が憲法13条によって保障されている憲法上の権利とまで解することはできない。
 13条に違反するとはいえない。

◎憲法14条1項(法の下の平等)に違反するか
 14条1項は、合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取り扱いを禁止する趣旨と解される。
 原告らは婚姻ができない結果、相手方や行政機関などとの間で、生涯有効となる種々の権利義務を発生させることができず、私的な関係でも公証の利益を得られない。このような効果は婚姻によってしか発生させることができず、原告らは重大な不利益を被っているといえる。
 しかし、24条1項にいう「婚姻」は異性間の婚姻を指し、24条2項は異性間の婚姻についての立法を要請していると解される。明治民法で初めて定められた婚姻制度の目的は、その範囲を生物学的に生殖可能な組み合わせに限定することで、国が一対の男女(夫婦)間の生殖とその子の養育を保護することにあったと認められる。このような目的は現在でも重要である。区別取り扱いには合理的な根拠があると認められる。
 14条1項に違反するとはいえない。

◎憲法24条2項(個人の尊厳と両性の本質的平等)に違反するか
 婚姻は家族の単位の一つであり、永続的な精神的および肉体的結合の相手を選び、公証する制度は、基本的には現行法上婚姻制度のみである。同性カップルが婚姻制度を利用できず、公証の利益も得られないことは、同性カップルを法的に家族として承認しないことを意味する。婚姻をするかしないか、だれと婚姻して家族を形成するかを自己の意思で決定することは同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益である。原告らが婚姻制度を利用できない不利益は、人格的利益を侵害されている事態に至っているといえ、個人の尊厳に照らして到底看過できない。
 婚姻は、各人が生涯を共に過ごす者を選び、公認された家族をつくるという人生における自己決定の尊重と保護という側面が強くなってきている。婚姻は男女によるものという社会通念はなお失われていないものの、今日変わりつつある。同性愛者を精神病として病理化する知見は誤りだったことが明白となっている。国連は、性的指向に基づく差別の禁止を決議し、我が国に対しても同性カップルの権利についての懸念と勧告がたびたび表明されている。2015年以降、多数の自治体がパートナーシップ制度を導入し、国会でも同性婚の可否に関する質疑がたびたび行われている。国民の意識でも同性婚に賛成する割合は年々増加し、18年時点で60%を超え、同性婚の実現への支持を表明する企業団体などは増え続けている。同性婚に対する国民の理解も相当程度浸透していると認められる。
 同性カップルは婚姻制度によって得られる利益を一切享受できず、法的に家族と承認されない重大な不利益を被っている。自ら選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない法の規定は、もはや個人の尊厳に立脚すべきものとする24条2項に違反する状態にあると言わざるを得ない。
 婚姻をするかしないか、誰とするかを自己の意思で決定することは、同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益ではあるが、人格的利益は憲法上直接保障された権利とまではいえず、その実現のあり方はその時々の社会的条件、国民生活の状況、家族のあり方などとの関係で決められる。諸外国で採用されている登録パートナーシップ制度は婚姻制度の代替となり得るもので、このような婚姻制度と異なる制度を設けるか否かについて立法府の議論に委ねることが相当である。また、同性間の人的結合では生物学上の親子と戸籍上の親子が一致せず、これを前提にした規定が必要になることから、我が国の伝統や国民感情を踏まえつつ、子の福祉などにも配慮した様々な検討・調整が避けられず、立法府の検討や対応に委ねざるを得ない。また、国民意識として同性カップルに対する法的保護に肯定的な意見が多くなったのは比較的近時のことと認められる。立法府による今後の検討や対応に委ねることが必ずしも不合理とまでは言えない。同性婚を認めない法の規定が国会の裁量権の範囲を逸脱したものとして24条2項に反するとまでは認められない。



参考記事:
同性婚訴訟 熊本の原告らが会見(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20230608/5000019232.html
「同性婚訴訟」福岡地裁は“違憲状態”と判断示す 原告「一刻も早い検討・議論を国会の場で進めてほしい」(RKB毎日放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/533388?display=1
「違憲と言い切ってほしかったが“前進”」同性婚“違憲状態”判決にみる裁判所の価値観(RKB毎日放送)
https://www.youtube.com/watch?v=JBM8vsxmCEQ
「もう一歩踏み込んで」 同性カップルら訴え―福岡(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023060800579
「違憲」と言わず、「違憲状態」とする意味は? 同性婚訴訟の判決(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR685F0CR68UTIL01P.html
【判決要旨】同性カップルの不利益「到底看過できない」 福岡地裁(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR6856Q2R68TIPE003.html
結婚の平等・九州訴訟は「国会、早よせんね!」判決。「違憲」とした福岡地裁はどんなメッセージを発したのか(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/marriage-for-all-japan-kyushu-ruling_jp_64814e49e4b027d92f8a8384

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