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日本エイズ学会が海外の安全なエムポックスワクチンの国内承認を厚労省に提言しました

2023年07月13日

 数日前、「エムポックス(サル痘)のワクチン接種について」のコラムにおいて、ようやく日本でもエムポックスワクチン接種が始まったものの、免疫力が下がっているHIV陽性者などには使えない国産ワクチンであるため、世界83ヵ国と同様、安全性が確認されている海外産ワクチンを使えるようにならないものか、との声が医師やHIV陽性者団体から上がっている旨をお伝えしました。
 この件に関しての続報になりますが、本日、日本エイズ学会が海外の安全なエムポックスワクチンの承認を提言する「日本におけるサル痘(エムポックス)感染拡大阻止のためのワクチン戦略に関する提言書」を厚労省に提出したことを発表しました。
 
 提言は、以下のような内容です。
・エムポックスの感染は完全には収束していない、2023年5月16日時点の累計で、111ヵ国から140人の死亡者を含む、合計87,479人の確定症例と1,095人の推定症例が報告されている、感染者48,000人以上を含む全77報告を対象としたメタ解析では、感染者は主に若年成人男性であり、その多くがMSM(男性と性交渉を持つ男性)で、その約半数がHIV陽性者であった。
・日本でも、社会活動が急速に回復してきている現状に鑑みると、今後、日本におけるエムポックスの流行拡大が大いに懸念される。
・エムポックス感染拡大を阻止するためには、感染リスクが高い人々を対象とした曝露前の大規模ワクチン接種が重要な対策の一つであることは論を待たない。そのような観点から世界的に曝露前ワクチン接種がすでに大規模に行われており、米国だけでも2023年5月9日時点で120万回以上のMVA-BNワクチン接種が終了している。
・このような曝露前ワクチン接種の対象となる感染ハイリスクの方々の中に、HIV陽性者もかなりの比率で含まれると考えられる。
・現在、日本で承認されている乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16については、免疫不全者における有効性と安全性が十分検討されていないことから、添付文書に「明らかに免疫機能に異常のある疾患を有する者及び免疫抑制をきたす治療を受けている者」は接種不適当と記載されている。そのため、エムポックスの重症化リスクの高いCD4陽性細胞数が低値(200/µL未満)の免疫不全HIV陽性者には使用できないのが現状である。
・一方で、主に欧米諸国ですでに多くの接種実績を持つMVA-BNワクチンは、HIV陽性者を含む各種免疫不全者を含めたエムポックスの発症予防の有効性と安全性のエビデンスが蓄積されており、CD4陽性細胞数200/µL未満の免疫不全の疑いのあるHIV陽性者に対しても安全に使用できると考えられている。
・以上より、「MVA-BNワクチンの国内承認」を提言したい。
・これにより、エムポックスワクチンの選択肢を増やすのみならず、重症化リスクの高いCD4陽性細胞数低値のHIV陽性者はもちろん、潜在的に未診断のHIV陽性者を含みうるエムポックス感染リスクの高いMSMに対しても、今後の流行状況によっては積極的に曝露前ワクチン接種を検討する事が可能になると考えられる。
・国内のみならず世界的にも感染の再拡大が懸念されているなか、SDGsの目標である「誰一人取り残さない」世界の実現のためにも、日本政府の早急な対応を要望したい。
 
 この提言書は7月5日付で加藤厚労大臣宛に提出されています。
 安全なMVA-BNワクチンの国内承認が一日も早く実現し、重症化リスクの高い方たちこそワクチンを受けられるようになってほしいですね。
 

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