g-lad xx

NEWS

梅毒患者が過去最多となった昨年を上回るペースで増加中、都が検査体制拡充へ 

2023年08月04日

 梅毒の感染者数が急増しています。今年上半期に報告された感染者数は7448人で、去年の同じ時期を上回る速いペースで増加しています。東京都は検査体制の拡充を図り、多摩地域検査・相談室(立川)で初めて日曜の検査が実施されることになりました。


 都保健医療局によると、2021、22年の梅毒患者の報告数は1999年の調査開始以降、2年連続で過去最多でしたが、今年も7月23日時点で2087件の患者報告があり、昨年同時期の約1.1倍に上っています。男性は20~50代、女性は20代が多くなっています。
 梅毒患者の増加を受け、東京都は検査態勢を拡充させます。多摩地域検査・相談室(立川市)で初めて日曜の検査が実施されることになりました。新宿東口検査・相談室(新宿区)はもともと日曜も含め祝日以外は毎日受け付けていますが、特に20代女性での増加が際立っていることを受けて、9月以降、月1回、祝日に女性向けの検査日を設けるそうです(その分、祝日以外の日の検査の予約が取りやすくなると思われます)


 日本性感染症学会で梅毒対策の責任者を務める愛知医科大学の三鴨廣繁教授は、「梅毒はもはや身近な病気になったという実感だ。リスクのある性行動を取ったときだけでなく、パートナーがリスクのある性行動を取ったと判明したときや、新たなパートナーができたときは積極的に検査を受けてほしい」と話しています。
 
 日本性感染症学会で梅毒の診療ガイドラインの策定に携わるなど、梅毒に詳しい「そねざき古林診療所」の古林敬一医師は、「梅毒は、しこりや潰瘍が有名な症状だが、症状が出ない人もいる。症状がなかったり、無自覚だったりする人は性交渉をためらう理由がなく、知らないうちに梅毒をうつしてしまうのではないか」「血液検査で陽性となってよく調べても、特に症状が出ていないというケースもある。梅毒の患者は無症状の人から目立つ症状が出る人まで幅広くいて『これが典型的な症状だ』と必ずしも言えないのが難しい」「感染しているかどうかは検査をしないとわからないので、全く検査を受けたことがなければ、一度は検査を受けてみてほしい」と話しています。
 
 日本性感染症学会理事で性感染症学、予防医学(ワクチン)などの専門家である川名敬医師は、梅毒の感染が増えている理由について「梅毒に限らず、性感染症は全般的に増えていますが、増加の理由はわかりません。一部にはSNSで出会った相手との性交渉などが指摘されていますが、それで全ては説明できませんし、推測にすぎません」「2013年から増加傾向にあったので、新型コロナウイルスの流行とは直接関係ない」「インフルエンザや風疹に流行期があるのと同様、世界的に梅毒の流行期が来ているのだと考えます。実際、欧米や中国でもその頃から増加を認めています」と述べています。市民はもちろん、医師にも梅毒に対する知識が不足していたことも理由の一つで、川名医師は「梅毒はさまざまな症状を呈するので、患者さんは多くの診療科を訪れますが、多くの医師は診たことがなかったと思います」「患者さんが異変を訴えてきたものの、梅毒を鑑別に挙げることができず、見過ごされたケースはあったと思います」と指摘しています。「現在の課題は医師側の見落としではなく、患者さんの認識不足にあると思います。梅毒は症状が出ても消えてしまうことがあります。しかも、現れる症状もあまり痛みを伴うわけではないので、放置してしまいがちです。診断がつけば、ペニシリンの投与で治るのですから、感染を広げないためにも、異変を感じたら検査を受けるように啓発していくことが重要です」
 一部のメディアで、コロナ禍なのに増えている、SNSで手軽に出会えるようになったせいだ、性の乱れだ、などと、セックスを罪悪視するような報道が見られましたが、そういうことではなく、人々も医師もあまり梅毒のことを知らない時代になっていたなか、世界的な流行期が訪れ、見過ごされたり、治療につなげられず、増えていったのだと認識したほうがよさそうです。


 以前もお伝えしましたが、梅毒に感染していると、HIVなど他の性感染症にかかりやすくなりますし、感染に気づかないまま進行していくと、入院するような重い症状になってしまうこともあります。また、一度感染したら二度とかからないような病気ではなく、何度でも感染します。「梅毒、侮り難し」です。そういう意味でも、検査を定期的に受けることが大切です。
 梅毒の検査は、上記の多摩地域検査・相談室(立川市)、新宿東口検査・相談室(新宿区)のほか、パートナー共済がパーソナルヘルスクリニックやaktaと連携して二丁目で実施しているHIV・梅毒ワンコイン検査会でも受けられます。
 感染経路や症状など、梅毒についての総合的な情報については、aktaの特設ページ「梅毒にご用心」に見やすくまとめられています。ぜひご覧ください。

 

参考記事:
梅毒感染者数 過去最多ペース上回る “身近な”病気に!?(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230712/k10014126421000.html
梅毒患者、最多の前年上回るペース 都が日曜検査や女性専用日設置へ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASR826J2MR82OXIE02G.html
都で「梅毒」増加傾向 小池都知事が検査体制拡充を表明(ABEMA TIMES)
https://times.abema.tv/articles/-/10090164

世界的に梅毒の流行期が到来か【時流◆梅毒はなぜコロナ禍で急増しているのか】(m3)
https://www.m3.com/clinical/open/news/1155736

INDEX

SCHEDULE

    記事はありません。