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【特例法要件最高裁憲法判断】TransgenderJapanとLGBT法連合会が声明を発表

2023年10月26日

 最高裁大法廷の違憲判断を受けて、TransgenderJapanとLGBT法連合会が、この判断を歓迎する声明を発表しました。
 
 TransgenderJapanは25日、「GID特例法が定めるいわゆる「手術要件」についての最高裁大法廷憲法判断を受けて」と題した声明を発表しました。
「本日、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、GID特例法)の第3条1項四号「生殖不能要件」及び五号「外観要件」に規定されているいわゆる「手術要件」について、最高裁判所大法廷(以下、大法廷)の憲法判断が出されました。大法廷は裁判官15名の全員一致で「生殖不能要件」は日本国憲法13条〈幸福追求権〉に違反し無効であるとの判断を示し、これを合憲とした2019年1月23日の最高裁第2小法廷の決定は変更されました。TransgenderJapanはトランスジェンダーの権利回復を大きく後押しするこの判断を歓迎します。
 大法廷が「外観要件」についての憲法判断を避け、高裁に審理を差し戻した点は確かに課題として残っています。「外観要件」が引き続き有効である限り、手術なしで性別変更をする選択肢が閉ざされたままのトランスジェンダーが存在します。「外観要件」は文字通り見た目に関する要件です。見た目について、法律で変容を強いられることは適当ではないと考えます。大法廷では裁判官3名が「外観要件も違憲だ」とする補足意見を述べるなど、真摯な検討が行われたことがうかがえます。今後、高裁で改めて審理が尽くされ、「生殖不能要件」と同じく違憲の認定がなされること、そして、原告の性別変更が認められることを期待します。
 連続するこれらの憲法判断によって、日本に暮らすトランスジェンダーは生き方の幅が大きく広がりうる状況になりました。司法には「外観要件」の違憲認定を、立法には両憲法判断に応えてGID特例法に代わる手術に依らない性別変更手続きの制度を整備し、トランスジェンダーの多様な生き方の保障に取り組むことを求めます。
 大法廷は「特例法の制定当時に考慮されていた本件規定による制約の必要性は、その前提となる諸事情の変化により低減している」と明記しています。このような社会の変化の原動力はトランスジェンダー1人ひとりの存在、LGBTQ+やアライのみなさんの存在です。現在、トランスジェンダーに対するバックラッシュが苛烈になっています。大法廷の憲法判断を受け、トランスジェンダーという属性と犯罪を結びつける言説やあたかも自由自在に戸籍上の性別を変更できるかのようなデマが流布されることは想像に難くありません。そのような困難に抵抗しながら、でも確かに社会を変えてきた/いるということを確認しながら、人権回復を進めてまいりましょう。
 最後に、静岡家裁、そして最高裁大法廷と画期的な憲法判断が連続して示されたのは、司法に「手術要件」の違憲性を訴えた原告の方がいらっしゃったからです。心からの敬意を表します」

 
 LGBT法連合会は26日、「【声明】性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律の3条1項4号規定を憲法違反と判断する最高裁判所の決定について」と題した声明を発表しました。
「2023年10月25日、最高裁判所は、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」(以下、特例法)の3条1項4号規定(いわゆる「生殖不能要件」)を憲法13条違反と判断した。これにより、国会は同号についての法改正を迫られることとなる。一方で、高等裁判所に決定を差し戻し、3条1項5号規定(いわゆる「外観要件」)について再度審理させることとした。なお、3名の裁判官が個別意見を出しており、5号規定についても違憲であるとし、最高裁判所の判断として法律上の性別の変更の申し立てを認めるべきであるとした。当会は、生殖不能要件を違憲とする今回の決定によって、新たに特例法の要件を満たす当事者の人生を大きく改善するものとして、一定程度評価する。また、この決定に関わった関係者に敬意を表するものである。一方、差し戻される5号規定はじめ、4号規程と関連の深い3号規程(いわゆる「未成年の子なし要件」)など、課題はまだ残されていることについても指摘する。
 最高裁判所は、生殖不能要件は、直接的に生殖腺除去手術を強制するものでないとする一方で、生殖腺除去手術を必要としない当事者に対し、身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的侵襲を甘受するか、性自認に従った法律上の性別の取り扱いを受けるという重要な法的利益を放棄するかの二者択一を迫るものであり、この間の社会的変化、医学的知見の変化も踏まえると、身体への侵襲を受けない自由への制約は過剰であるとした。
 今回、個別意見において、公衆浴場やトイレの利用について検討され、公衆浴場やトイレが5号規定により制約する合理的な理由や関連性がないとされたことを当会は強調する。かねてより当会などから指摘されてきたことであるが、特例法の要件の問題と男女別施設の課題が安易に接合され、実態を踏まえれば施設利用における課題解決とは無縁となる言説が繰り返されることに、改めて警鐘を鳴らすものである。一方で、当会が確認した範囲においては、生殖不能要件を排した国において、手術を要する外観要件のみを温存している国は見られず、立法府は個別意見も十分に踏まえた対応が求められるものである。この時、新たな規定を検討するにあたっては憲法に反する、制限的な規定は許されないものであることは、留意されるべきである。
 当会は、今後の法改正に向けた議論において、今回の決定や科学的、医学的知見を踏まえない、これらに真っ向から反するような差別を助長する言説が無いよう強く求めるものである。人権救済の議論によって、人権を侵害するような言説が助長されるとなれば、それは、本末転倒という他ない。当会は、今回の決定に基づく法改正が、着実かつ迅速に行われることに向け、取り組みを進めていく」

 
 両団体とも、手術要件を外せば女性だと主張する男性の性犯罪者が公衆浴場やトイレに侵入するようになるといった無根拠なデマに基づくバックラッシュが激化するだろうことに警鐘を鳴らしながら、(今回の最高裁判断でも丁寧に検証されていたように)トランスジェンダーの権利回復(人権侵害の解消)としての特例法の要件の緩和という課題と男女別施設の課題は無関係であり、当事者の生活のリアリティを踏まえた議論を、と訴え、差別的言説への抵抗を呼びかけています。
 
 メディア報道を見ても(一部、差別的言説に乗じてしまっているものも見受けられますが)、こうしたネット上で吹き荒れているトランスヘイトに対峙し、世間の人々の誤解を払拭するような番組や記事もあって、頼もしい限りです。
 例えば日テレの「【解説】性別変更…生殖機能なくす要件は違憲 最高裁が初判断 今後どうなる?」では、有働由美子さんなどが「これはまったくの誤解で、そういう最高裁の判断ではない」「最高裁の判断が出たからといって、たとえば手術していない男性が、急に性別を変えて女湯に入りたいと思っても、そうはいかないんです。性別を変更するには、こうした要件のほか、2人以上の医師の診断が必要で、紙1枚ではなく診療履歴などかなり詳細な診断書も必要になります」「戸籍上の性別を変更することと、銭湯など女性・男性のスペースに入っていくことは別の話ですよね」「仮に『見た目を近づけることを求める要件』がなくても、これまでとルールは変わらないのではということなんです」「そもそも当事者の方たちと、悪意をもってスペースに入ってくる人たち、それを同じ土俵で考えること自体が、差別なんじゃないかと思ったりもします」「当事者の方たちは日常の中ですでに不自由な思いをたくさんしていて、その上、数百万円かけて痛い、しんどい思いをして手術しなければいけないという今の状況、本当につらいだろうなと思います」と語ってくれています。素晴らしい解説でした。
 昨日のニュースでもお伝えしたように、当事者の方へのインタビューなどもたくさん報道されています。コミュニティに寄り添う姿勢をうれしく感じた方も多いはずです。

 政府も違憲の判断を受けて「関係省庁で精査し、適切に対応していく」としていますし、与党公明も「立法府としては決定に従い、法改正しなければならない」と述べ、野党も最高裁決定を歓迎しています。
 今後、差し戻された高裁が5号要件(外観要件)についても違憲であるとの判断を示し(そうでないと最高裁判断と矛盾してしまいますよね…)、法改正も進んでいくと期待されます。あくまでもトランスジェンダーの方たちの権利回復(不妊手術の強制という人権侵害をやめること)が課題なのだというところからブレずに議論を進めてほしい、間違っても(過去に何度もあったように)当事者を傷つける差別発言のオンパレードとなって権利が抑制される方向に進んでいかないようにと願うものです。
 

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