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東京大学が作成したSOGIに関するガイドラインが評判を呼んでいます

2024年02月09日

 東京大学が2月6日付けで公表した「東京大学における性的指向と性自認の多様性に関する学生のための行動ガイドライン」が評判を呼んでいます。ネットのニュースにもなっていますし、SNS上でも様々な賞賛や感心のコメントが並んでいます。
 

 東大が公式サイトに掲載したこのガイドラインは、「東京大学憲章」や「東京大学ダイバーシティ&インクルージョン宣言」に基づいて作成されたもので、東大のすべての構成員が差別されることがないよう保障することを掲げています。「違反」や「罰則」を想定した「規則」ではなく、あくまでも行動指針を示したものです。
 冒頭の「趣旨説明」の囲みのところの、東京大学は多様な学生や教職員によって構成されている(構成員の多様性)、そうした多様性を認め、尊重する姿勢を推進することが東京大学の基本方針である(多様性認知と多様性尊重の推進)、そうした多様性の一環に性的指向と性自認の多様性がある(性的指向と性自認の多様性の位置づけ)、したがって東京大学は、構成員の性的指向と性自認の多様性について、それを認め、尊重する姿勢をすべての構成員に求める(性的指向と性自認の多様性の認知・尊重の推進)という論理展開が実に東大らしくて印象的です。「趣旨説明」の本文では、「構成員の多様性」について詳しく述べられたうえで、性的指向と性自認が「誰にでもかかわるもの」であり、「人による大きな多様性が見られる」ということ、「憲章」「宣言」においてもそれは重要視されていることが説明されています。「いいかえるならば東京大学は、構成員の性的指向や性自認の多様性をそれとして認知し、尊重することを誓約しつつ、性にかかわるどのような指向や自認をもつ個人をも東京大学という一つの「社会」に包摂するという目標を提示しています」「それは、これまで主流であった男女の二分法にもとづく社会のあり方を問い直すことを意味します」「それによって東京大学は、「多様な構成員が相互の交流・対話によって視野を広げ」ることを目指し、「魅力あるインクルーシブキャンパスを実現する」ことによって、「誰もが来たくなる大学」となることを切に望んでいます」
 
 弁護士ドットコムのニュースやSNSでも「秀逸」と話題になっているのが、第2節「SOGI関連 大学生活上で直面する典型的な障害の例」で示されたマイクロアグレッション(無自覚なまま意図せずに相手の尊厳を損なったり存在を黙殺したりするような「微細な攻撃」)の例です。
 例えば、教員向けには「「今どきは『世の中には男と女しかいない』と言ってはいけないんでしたね」と、あたかも発言に気をつけているかのように装い、その実は性の多様性について暗に揶揄する」とか、「「私もよくわからないのですが、最近はLGBTQとかいう人たちもいるんですよね」と、自分は無関係である風を呈示して、あたかもLGBTQ当事者が自分たちとは異質な「他者」であるようにふるまう(LGBTQ当事者の「他者化」を行う)」といったことが挙げられていますし、学生向けには「「イケメンなのになんで彼女ができないの?」等、バイナリーかつ異性愛を前提とした発言を行う」「トランスジェンダーの学生に「普通の人と変わらないように見えるから大丈夫」と(励ますつもりでも)トランスジェンダーを否定するような反応をする」といった例が挙げられています。
  
 「おわりに」では、「SOGIについてはすべての人が当事者である」ということが改めて強調されています。また、2節を読むと「人に対して、また人について、何も言えなくなるのではないかとか、何も言わなければいいのではないとかという『守り』の姿勢に入る可能性が想定されます」が、「この行動ガイドラインが、みなさんを萎縮させてしまい、対他的なコミュニケーションを恐れるとか、控えるとかといった方向に作用せず、性的指向と性自認の多様性について率直に語り合い、『無意識的な偏見』をお互いに自覚化し合えるような、よりよいキャンパス環境の実現につながることを祈念しています」という言葉で締めくくられています。また、東大が「ダイバーシティ&インクルージョン宣言」を制定するまでは決して性の多様性について十分な施策を講じてきたわけではないと認め、学生団体を中心とする学生の自発的な活動が今回のガイドラインへとつながっていることにリスペクトや感謝の意を示しているあたりの真摯さにも好感が持てました。
 
 今回のガイドラインは、大学執行部内のワーキンググループが原案を作成し、昨年10月に学内で意見交換会を実施し、駒場キャンパスSaferSpace「KOSS」などが参加して議論が交わされ、より内容がブラッシュアップされていき、12月には案が公表されるとともにパブリックコメント(意見公募)が実施され、といったかたちで制定されたんだそうです。
 
 それから、「おわりに」で言及されている学生団体の一つであるTOPIAのメンバーの方が、X(Twitter)で、当事者として困ることがたくさんあり、これから入ってくる学生のためにもと思い、「大学生らしい遊び」をほとんど諦めて活動を頑張ってきたものの、やはり東大の環境や制度は無理だとあきらめ、海外の大学院に進学をすることを決めた、けれども、卒業間際の今になって、東大でも大学院生活を生きていける未来が描けそうになってきたのはよかったと書いていらして、身につまされました(ぜひこちらの投稿を読んでみてください)





参考記事:
「イケメンなのになんで彼女できないの?」何気ない会話が差別に…東大が作ったガイドラインが「わかりやすい」と評判(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_23/n_17177/

東大、性的指向等に関する“画期的”ガイドライン発表「彼氏いないの?」「好きなタイプは?」などに懸念(スポニチアネックス)
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2024/02/09/kiji/20240209s00042000310000c.html

東京大学、性的指向と性自認めぐる差別例をガイドラインで明示「無意識的な偏見の自覚を」(ハフポスト日本版)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65c5d4e5e4b093b2e7832321

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