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【住民票続柄】大村市の手続きが「慎重さ欠く」と批判する決議案が出されるも賛同得られず撤回、提案した市議の発言が問題視

2024年07月04日

 長崎県大村市が同性カップルに対し、続柄欄に「夫(未届)」と記した住民票を交付したことをめぐり、同市議会の議会運営委員会で3日、市の対応を「適切な措置とは言えない」と非難する決議案の提案が議論されましたが、賛同が得られず、本会議への提案は見送られました。

 
 決議案は、「夫(未届)」と記した住民票の交付に批判的な自民党の朝長(ともなが)英美市議(71歳)を中心に発案されました。当初は「続柄の記載に関し注意を促す決議」と強いトーンだったのが、賛同を得るため「全国的に例のないような事務処理を行うに当たっての意思決定手続きに関する取り扱いを早急に整理するとともに、本記載を基として住民票記載に関する取り決めを早急に整理するよう求める決議」と変えられ、内容も今回の住民票交付を窓口の職員らが判断し、市長ら幹部との協議を経なかった点を「正確性と慎重さを欠いており適切な措置とは言えない」と批判する文案に調整されたうえで議会運営委員会に示されました。

 しかし、市議会の動きを知った当事者や市民ら約10人が3日朝から周辺に集まり、「大村市役所は誇らしい 大村市議会にはがっかり」「誰もが自分らしく生きられる社会へ」などと書かれたプラカードや横断幕を手に市議への抗議活動(同性カップルへの支援活動)を行ない、地元の新聞やテレビなど報道機関も取材に集まりました。
 
 そして3日に開かれた市議会では、午前の議会運営委員会で結論が出ず、午後の議運では賛同が得られず、提案した朝長市議が自ら決議案を取り下げる結果となりました。
 
 決議案を提案した朝長市議は議運の後、長崎国際テレビの取材に対し、「(手続きは)課長、部長、副市長、市長までちゃんとした打ち合わせの上、認められたものをしなくてはならないと思う」「(LGBTQの問題に関して)じゃなくても、何でもそう」と厳しい口調で話しました。
 また、テレビ長崎の取材に対して「国がちゃんと認めてやってるのを手続きである以上しなければいけないのに、その前に地方自治体がしたのはまずかった。こんな問題になるんですね、軽い問題ですけどね」と話しました。読売新聞によると、「軽い問題だ。自殺、いじめの問題とかある。大変な問題だと思う。こっちの方が」などと述べたそうです。
 この「軽い問題」という発言の意味についてNHKが改めて朝長市議に取材したところ、市議は「LGBTの人たちは周りにたくさんいるから当たり前のことだと思っている。いろんな人がいるのだからLGBTの人も普通の人としての扱いをしていいのに、それを、あえて大きな問題としている世の中がおかしい」などと答えたそうです。そのうえで「発言に問題があったとは思っていない」と話しました。
 
 テレビ長崎の映像では、朝長市議が、当事者である松浦慶太さんに向かって、なにやら拳を振り上げて怒っているような様子も映し出されていますが(マイノリティである市民に対し、あの態度はちょっとひどいんじゃないでしょうか…)、市議の「軽い問題」発言を聞いた松浦さんは、テレビカメラの前で悲しみをあらわにし、「僕自身も過去にLGBTQということでいじめを受けたりとか自殺を考えたりということもあったので、こういう風に苦しんでいる人たちもいるんだっていうことは改めて認識してほしいと思います」と涙ながらに語りました。
 
 
 長崎国際テレビとテレビ長崎のニュース映像からは、朝長市議が憤りを隠さず、厳しく批判する様子が伝わってきます。同性カップルが結婚制度から排除され、法的に何も保障されず、構造的な差別に直面しているということ、婚姻平等の達成はまだ先のことだろうけども、いま、事実婚と同等だと認める司法判断も出てきて、事実婚と同様の権利保障が少しずつ進もうとしている、そういうなかで住民票の続柄で事実婚と同じ表記が認められたということは平等の達成の象徴的な前進であり、人権や平等の観点からなされた大村市の対応は、歴史的・画期的と賞賛されこそすれ、決して咎められるものではない、市長さんも職員の対応を当事者に寄り添うものだと褒めている、という話なのですが、この市議の「いろんな人がいるのだからLGBTの人も普通の人としての扱いをしていいのに、それを、あえて大きな問題としている世の中がおかしい」という発言は、LGBTQが置かれている不平等な状況や困難への理解もなく(無視するくらい「軽く」見ているのか、あえて黙殺しているのか…)、市の対応の意義も理解せず、LGBTQの権利回復運動を抑制したい、支援する世の中の“風潮 ”に物申したいと言っているようなものです。差別的な発言と言えるのではないでしょうか。
 今回は市民らの抗議活動もあり、メディアも駆けつけ、大ごとになったということで、また、他の市議が同調しなかったこともあり、朝長市議も自ら取り下げざるをえなくなり、事なきをえました。過去には地方の議会で度々、差別的な発言や行動をする議員が現れましたし(「足立区が滅びる」とか)、議会の多数を占める会派がLGBTQ支援の条例や制度の導入に反対して立ち消えになったケースも多々ありましたが、今回、大村市の市議会も地元のメディアも差別的な人の側に立たず、LGBTQを守ったのは素晴らしいことでした。支援のために駆けつけた市民の方たちにも感謝申し上げたいです。 
 
 

参考記事:
同性カップルの住民票…大村市の手続き「慎重さ欠く」 市議会委員会が決議案審議も賛成なく提出取り下げ(長崎国際テレビ)
https://news.ntv.co.jp/n/nib/category/society/ni2acd8705f7c94726969ca9511ed72bf6
性的少数「軽い問題」 同性カップルへの住民票「大村市は対応の整理を」決議案を提案の市議(テレビ長崎)
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20240703005
大村市の市議 LGBTを巡り「軽い問題だ」などと発言(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20240703/5030021181.html
同性カップル住民票、市議会が批判決議を検討も撤回 当事者らは抗議(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS73319DS73TOLB002M.html

男性カップル事実婚住民票交付、市議「軽い問題だ」…当事者「性的少数者を下にみているようで悔しい」(読売新聞)
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20240704-OYTNT50034/

「心配で眠れなかった」LGBTQ当事者の思い 交付された同性カップルの住民票対応に一部市議から反発の声 大村市(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1275195

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