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【住民票続柄】総務省が「実務上の支障をきたすおそれがある」などと回答したのに対し、大村市長「われわれの問いに明確に答えていない」とし、再度質問状送付へ

2024年07月09日

長崎県大村市が男性カップルの住民票の続柄欄を事実婚と同じ「夫(未届)」と記載して交付したことについて、総務省が「実務上の支障をきたすおそれがある」などと回答していたことがわかり、大村市の園田市長は現時点で住民票の記載を修正する考えはないとしたうえで、再度、総務省に問い合わせることを明らかにしました。
 
 
 大村市の園田裕史市長は9日の定例会見で、対応が妥当だったかを問い合わせていた総務省から8日、文書で回答が届いたことを明らかにしました。文書では「夫(未届)」などの続柄が各種社会保障で法律上の夫婦と同じ取扱いを受ける事実婚で用いられているとしたうえで、「社会保障の窓口で、住民票の写しの続柄のみで適用の可否を判断することができなくなり、実務上の支障をきたすおそれがある」などとています。一方で「市の判断が妥当だったかどうか」については明確な言及はありませんでした。
 これについて園田市長は「社会保障制度は続柄だけで適用するかどうかを判断していないし、窓口や所管機関もそういった手続きや事務処理はしていない」と指摘し、そのうえで「われわれの問いに明確に答えていないと受け止めています。仮に『妥当ではない』と判断するならば、その根拠となる記載が住民基本台帳事務処理要領にないので、総務省はその部分を見直すべきだと思います」「現時点において記載に関する内容を修正することは致しません。自治事務の裁量の範囲内で住民の方に寄り添った対応をさせていただいた事務処理だと認識をしております」と述べました。
 市によると、経緯を確認する総務省と市の担当者とのやりとりは計9回に及びました。市側は記載に至った考え方を説明したものの、総務省側からは、どう対応すべきかの説明はないそうです。8日に文書が届いた際は、総務省から市に電話があり、「見解を踏まえたうえで大村市が判断するものだ」などと言われたそうです。
 園田市長は大村市の「夫(未届)」の記載が報道されて以降、同じ対応をとると公表する自治体が増えていることや、同性パートナーシップ証明制度を導入している自治体が全国で増加していることを挙げて「(我々は)判断に至った根拠がある。根拠を違うと言われたままにはできない」と語りました。
 市は総務省に対し、今回の回答の疑問点をまとめた質問状を送付し、改めて見解を求める考えです。
 
 9日の市長の会見を受けて、「夫(未届)」の住民票を受け取った松浦慶太さん&藤山裕太郎さんが会見を開きました。
 松浦さんは「この1、2ヵ月は住民票の続柄が取り消されるのではないかという不安を抱えながら過ごしてきて、総務省の回答はあまりうれしくない内容で残念だと感じています。取り消せとは言っていないが、まるで市に対し『取り消すよう忖度しろ』と言っているような文言だと感じます」「(大村氏が)総務省からの圧力にも屈しない姿勢を全面的に出してくれていることに、感謝しています」と話しました。
 また、藤山さんは「せっかく流れが出来てきているのに、水を差すような出来事なのかなと思っています」「一市民に寄り添った判断をしてもらいたい。同じ人間として平等に対応してほしい」「今回の件で他にも続いてきた自治体が萎縮するのではないかと思っている。ただ、大村市が一緒に闘ってくれているのは励みになるし、うれしかった」と話しました。
 
 お二人も語っているように、大村市の園田市長は、5月末の住民票交付対応後の最初の会見で、交付を判断した担当課の職員に対して「窓口で市民の相談に応じた対応をできる限りやっており、良い対応だった」と褒めながら、「あくまで『内縁の夫婦』に準じるという意味で自治体事務の裁量の範囲内で判断した」「社会保障や相続など、様々な制度に対する広い理解が得られるという意味では大きいが、制度設計の変更については、国で議論をしていくべきこと」として総務省に問い合わせを行ない(詳細はこちら)、今回も、総務省が明確にダメだと言わずにある種圧力をかけるような応答をしてきたのに対して、毅然と、筋の通った対応を行ないながら、一貫して同性カップルという市民を守るという、見上げた発言・対応でした。市民の生活の苦しさや困りごとには目もくれず、利権や自身の保身に明け暮れ、質問にもまともに回答しない首長もいるなかで、実に素晴らしいものがあります。自治体の首長、かくあるべしですね。
 
 
 なお、栃木県鹿沼市などに続き、栃木市も、市内在住の同性カップルが希望すれば8月から「夫(未届)」「妻(未届)」と記載した住民票の交付を始めるそうです。今月から導入している栃木県鹿沼市などの先行事例を踏まえ、続柄欄の表記見直しに伴う行政事務への影響などを検討した結果、「支障がない」と判断したそうです。
 栃木市は2020年11月に「パートナーシップ宣誓制度」を導入しています。
 市の担当者は「住民票の記載は自治体の責任において行う自治事務。市の裁量で同性カップルを笑顔にできるのならやるべきだと考えた」と話しました。
 
 


参考記事:
同性カップル 住民票の続き柄「夫」長崎 大村市長“修正せず”(NHK)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240709/k10014506691000.html
長崎・大村市 同性の事実婚示す記載 総務省「実務上の問題がある」(テレビ朝日)
https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000358999.html
大村・同性カップルの「夫」表記に「実務上の問題」と国が見解 市長は「修正せず」(テレビ長崎)
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20240709008#
同性カップルの住民票 続き柄 “夫”の記載に「社会保障で夫婦と同じ前提ない」総務省見解示す(長崎国際テレビ)
https://www.nib.jp/nnn/news1060u8yfzzbdqzqijwr.html
同性パートナー住民票 総務省「実務上の支障をきたすおそれ」長崎県大村市「修正しない」(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1284328?display=1
大村市の同性パートナー住民票 総務省見解に園田市長は「修正せず」(長崎文化放送)
https://www.ncctv.co.jp/news/article/15339217
男性カップル続柄欄「修正せず」 長崎・大村市、総務省見解に対し(共同通信)
https://nordot.app/1183263208547336400?c=302675738515047521
総務省「実務上問題」 男性カップルの住民票表記 長崎県大村市(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024070900830&g=pol
同性カップル住民票に「夫(未届)」 総務省が否定的見解(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240709/k00/00m/040/149000c
「総務省が見直すべき」同性カップル住民票、国の異論に大村市が反発(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASS792PKLS79TOLB00JM.html
男性カップル世帯の住民票 大村市長「修正しない」 総務省「実務に支障を来す恐れ」と見解(長崎新聞)
https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=be6ce454593e43189ab9719f2509e8c2

栃木市も同性カップル住民票に「夫」「妻」 8月から交付(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20240709/k00/00m/100/236000c

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