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【婚姻平等訴訟】全国の新聞社が、国会で直ちに議論を始めるべきだとする社説を続々と掲載しています

2024年11月01日

 現行法で同性婚を認めないのは違憲であると明示した東京高裁判決を受けて、全国10社以上の新聞社が国会で直ちに議論を始めるべきだとする社説を掲載しています。  

 朝日新聞は「同性カップルが置かれた差別的な状況の放置はもはや許されないとの司法判断は、定着したといえる」と指摘し、「同性カップルの不便・不利益は日々、続く。国会はこの先にある最高裁判決を待つのではなく、率先して議論し、救済を急がなければならない」と訴えています。
 東京新聞は「違憲の流れが明確である以上、最高裁による司法判断の確定を待つのは政治の怠慢ではないか」「衆院選で得た各党議席を見ると、同性婚の賛成・検討が半数を大幅に上回る。同性婚に後ろ向きな自民党が少数与党に転落した今こそ、国会が主導して同性婚への扉を開けるよう望みたい」と述べています。
 沖縄タイムスは「社会の意識の変化、国際的な流れ、さらには憲法が保障する人権の観点から見ても、当然の判決である」と判決自体を評価したうえで、「先の衆院選では、主要野党が公約に同性婚の導入を掲げた。与党の大敗という結果を見ても、国民の意識がどこにあるのかを真剣に考える必要がある」「世界の潮流から取り残されていることも事実だ」と指摘し、「国は問題を先送りにせず、判決を重く受け止めるべきである」と述べています。
 信濃毎日新聞は「社会的、政治的な環境が既に整っていることは明白だ」としたうえで「現状の放置は違憲であり、政治の怠慢である」と厳しく追及しています。選択的夫婦別姓について国連の女性差別撤廃委員会が日本に対して導入を勧告したことにも触れ、「衆院で過半数となった野党が連携し、同性婚と選択的夫婦別姓の導入に踏み切るべきだ」と訴えています。
 山陰中央新報は「立法府よりも司法の方が国民の意識の変化に敏感だとしたら、何とも残念なことだ」として、「最高裁の性別変更要件を巡る違憲判断から1年がたつのに、法改正が実現していない現状は、国会の怠慢と言わざるを得ない。同性婚を巡る立法措置でも怠慢を繰り返すことは許されない」と述べています。
 高知新聞は「踏み込んだ姿勢の背景には、同性婚を巡る国民の意識が変化していることがある」と指摘しています。「共同通信の最新の調査では「同性婚を認める方がよい」が7割以上を占め、パートナーシップ制度を導入する自治体も440を超えた。「社会的な受容度は相当高まっている」(高裁判決)状態だ」
 そのほか、西日本新聞が「パートナーシップ制度だけでは税制や社会保険での不利益はなくならない。誰もが婚姻できるように法律を整備するのは当然のことである」と、熊本日日新聞が「当事者にとっては人生にかかわる問題だ。原告の中には既に亡くなった人もいる。一刻の猶予も許されない」と、京都新聞が「経済界や国際社会の認識ともかい離している」と、東奥日報が「国会の立法不作為による賠償責任については、最高裁の統一判断がないことを理由に否定したが、国会はこれにあぐらをかいてはならない。賠償責任が生じてからでは遅過ぎるのだ」などと述べています。 

 原告と弁護団の方たちが繰り返し法廷で訴えてきたことが東京高裁判決でほぼそのまま認められたため、その判決を受けた各紙の訴えも、これまで以上に国会での議論を強く求めるものになっています。もはや当事者の訴えと区別がつかないくらいです。


 判決後、有識者のコメントも様々、報じられています。
 同性婚に詳しい(これまでも判決が出るたびにコメントしてきた)早稲田大学の棚村政行名誉教授は、「分岐点になってくるんじゃないかと考えています。『違憲である』という明確な判断を示すことによって、国会のこれまで動かなかった状況を打開する一歩になると思う。5~10年以内に実現するのではないかと思っています」と語っています(日テレNEWS「原告カップルの思いは…同性婚訴訟、高裁2例目の「違憲」判断 専門家は「状況打開の一歩」と指摘」) 。そう言われると、同性婚実現がいよいよ夢物語ではなく現実のものになりそうだと思えますよね。希望が持てます。
 慶応大の駒村圭吾教授(憲法学)は「婚姻の本質から生殖の問題を除いた点は注目だ」「次世代を確保する生殖の社会的機能は認め、同性婚が実現してもこの機能になんら影響せず、それを支えることすらあるとした点に踏み込んだ。緻密だ」と、早稲田大の釜野さおり教授(社会学)は「婚姻制度は時代や社会によって一様ではない。社会の変化や実態を踏まえた判決」だと解説しています(東京新聞「同性婚認める「画期的」判決を読み解いた 国の「自然生殖」説を否定し「婚姻の本質」に迫る緻密さ」)
 千葉大の白水隆准教授(憲法)は「性的指向に基づく法的な差別的取り扱いを正面から認めた点で納得感があり、意義深い」と評価し、また、判決の中で同性カップルに法的保護を与える制度のあり方は国会の裁量に委ねられているとしながら裁量があることが不利益の解消に動かない根拠にはならないと述べられたことに対し、「国会にくぎを刺した形だ。今後も違憲判断が続くのではないか」と分析しています(毎日新聞「同性婚訴訟 東京高裁判決、判断のポイントは“婚姻制度の目的” 」)

 LGBTQコミュニティの方たちのコメントも報道されています。
 記者会見&報告会には出席できなかった正さん&かつさんカップルですが、日テレ が(沖縄での二人の生活も紹介しつつ)判決後に高裁から出てきたときのお二人のコメントを紹介しています。かつさんは「期待と不安があったんですけど、私たちが言ってきたことが裁判所に伝わって本当にうれしかったです」と、正さんが「本当にいい判決でした。ありがとうございました」と語っています(上に貼ってある映像でご覧ください。感動が伝わってきます)
 住民票の続柄について男女の事実婚と同じ表記を認められた長崎県大村市の松浦慶太さんは長崎放送の取材に対し、「結果の速報を聞いた時にとても嬉しかった。当事者の主張が全面的に受け入れられたと感じ、満足しています」「社会の理解も同性婚に70%以上が賛成をしていて、当然のことだとも思う。他の裁判でも同様の流れになっていくと思う」「私たちカップルも、雇用保険や社会保障の面で対象外になったり、金銭的にも不利益を被っている。政府はいつまでも先送りにせずに、当事者の不便さに寄り添い、早く同性婚を実現してほしい」とコメントしています。
 TBSは北海道訴訟の原告の中谷衣里さんのコメントを紹介しています。中谷さんは「購入した家も、二人でペアローンを組むことができず、すごく苦労した」と語り、札幌高裁の違憲判決後も状況の厳しさは変わっていないことが如実に伝わってきました。また、林官房長官の「注視」発言について「正直なところ、また同じこと言ってるなという気持ちでした。議論というところの次のフェーズに移してほしいと思っています。もうこれ以上『注視していく』という言葉は当事者としては聞きたくない気持ちです」と語っていました。


参考記事:
(社説)同性婚訴訟 違憲是正へ議論始めよ(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/DA3S16072721.html
<社説>同性婚高裁判決 国会主導で法制化急げ(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/363628
[社説]同性婚否定 再び「違憲」 国会の怠慢への警告だ(沖縄タイムス)
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/1463425
〈社説〉同性婚の法制化 もはや「静観」はできない(信濃毎日新聞)
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2024103100276
論説 同性婚訴訟で再び「違憲」 最高裁の判断を待つな(山陰中央新報)
https://www.sanin-chuo.co.jp/articles/-/671760
【同性婚訴訟】権利擁護の法整備を急げ(高知新聞)
https://www.kochinews.co.jp/article/detail/800402
【社説】同性婚判決 国会は法制化論議を急げ(西日本新聞)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1276702/
<社説>同性婚訴訟 法制化の議論始める時だ(熊本日日新聞)
https://kumanichi.com/articles/1594579
社説:同姓婚訴訟判決 立法対応を強く促した(京都新聞)
https://nordot.app/1224979396432659382?c=39546741839462401
国会は怠慢を繰り返すな/同性婚訴訟で再び「違憲」(東奥日報)
https://www.toonippo.co.jp/articles/-/1891065
社説 同性婚訴訟(岐阜新聞)
https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/460083
同性婚訴訟「違憲」(宮崎日日新聞)
https://www.the-miyanichi.co.jp/shasetsu/_81105.html
同性婚、東京高裁判決 違憲是正へ、法制化急がねば 社説(河北新報)
https://kahoku.news/articles/20241101khn000023.html
同性婚訴訟「違憲」判決「合意形成図る努力を」(陸奥新報)
https://mutsushimpo.com/shasetsu/jhkao662/

原告カップルの思いは…同性婚訴訟、高裁2例目の「違憲」判断 専門家は「状況打開の一歩」と指摘(日テレNEWS)
https://news.ntv.co.jp/category/society/7bce53ce8a494701af942070dbb9da90
同性婚認める「画期的」判決を読み解いた 国の「自然生殖」説を否定し「婚姻の本質」に迫る緻密さ(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/363580
同性婚訴訟 東京高裁判決、判断のポイントは“婚姻制度の目的”(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241030/k00/00m/040/316000c
「早く同性婚認めて」同性婚訴訟・東京高裁判決に長崎県の同性カップルも喜びの声(長崎放送)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/1523954
「画期的かつ歴史的」 東京高裁 同性婚認めない規定「違憲」 全国で同性婚訴訟 “違憲”判断後の当事者「議論に移して」【news23】(TBS)
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1522251

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