g-lad xx

NEWS

LGBT支援団体をX上で中傷していた投稿者に賠償命令が下されました

2024年11月20日

 LGBTQの若者を支援する一般社団法人「にじーず」が、X(旧Twitter)の投稿で名誉を毀損されたとして投稿者に約140万円の損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁(大竹貴裁判官)は11月20日、「被告の投稿が団体の社会的評価を低下させることは明らかだ」として投稿者に33万円の賠償を命じる判決を言い渡しました。LGBTQ支援団体への中傷をめぐる賠償命令は初めてとみられます。
 
 「にじーず」は2016年から自身が性的マイノリティ(かもしれない)と思う10代20代の人たちが、安心してセクシュアリティについて話したり友達をつくりたいという切実なニーズに応えるため、東京、京都、岡山など全国14都市(およびインターネットの仮想空間メタバース上)でオープンデーの開催(居場所づくり、セーフスペース開設)に取り組み、のべ4千人ほどが参加してきました。 
 しかし、2022年頃からTwitter上でいやがらせや中傷を多く受けるようになり、昨年のLGBT理解増進法成立前から悪化し、「子どもをグルーミングしている」「洗脳している」「搾取する気満々」などといった投稿が相次ぎ、Xアカウントは閉鎖に追い込まれました。今回の裁判の被告である投稿者は2023年10月、自身のXアカウントで「にじーずの目的 LGBTの子がいなければ、LGBTの子を作り出す。差別がなければ差別を作り出す」などと書き込んだり、その他の投稿でも「LGBTとは当事者不在の利益団体の政治運動」「差別のないところに差別を作り出す! 差別こそ利益! 差別こそ金!」などと主張していました。こうした投稿はにじーずだけでなく広くLGBTQコミュニティ全体に対して深刻なダメージを与えるものであることから、にじーずは支支援を募ったうえで法的措置を講じる決定をしました。プロバイダ責任制限法に基づく発信者情報開示請求を行ない、全件(現時点で41個の投稿)についての違法性が認定されています。また10月17日には、悪質な誹謗中傷を行った投稿者に対し、伊勢佐木警察署において名誉毀損罪での刑事告訴が受理されました。
 この投稿者は訴訟で、差別はないとする、ある当事者の話を元に「性的少数者であることを理由とした差別は存在しない」などとして投稿内容は真実だと主張したそうです。原告側は「投稿は明確に事実に反する」「それぞれの性を尊重し、差別をなくすことを理念としているのに、子どもの性的指向を誘導したり、新たな差別を生み出したりする活動を行なう団体だとの印象を与え、社会的評価を著しく低下させられた」と訴えていました。
 
 11月20日(奇しくもトランスジェンダー追悼の日)、横浜地裁は判決で「原告の社会的評価を低下させることは明らか」と指摘し、被告の主張についても「ごくわずかな人数の体験を基に性的少数者への差別が存在しないということはできない」「(団体に関する投稿内容が)真実だと信じる相当の理由があったとは認められない」とし、33万円の賠償命令を下しました。
 原告側代理人の田中健太郎弁護士は「社会全体がLGBTQに対する差別や偏見の現実を直視し、差別や偏見の排除に取り組むことの重要性を再確認させる判決だ」とコメントしました。
 にじーずは公式blogで「LGBTの子ども・若者を取り巻く環境はいまだ課題が山積みであり、誰にも相談できずに孤立を深める若年層も多い中で、実在の支援団体を名指しして事実に基づかない内容を書き込む行為は、弊団体だけではなく支援を必要としている人たちにとっても深刻な影響を与えかねません。活動に対する叱咤激励等の正当な論評に対しては貴重なご意見として賜りますが、弊団体だけでなくお取引様等の多くの関係者のみなさまを巻き込む悪質な誹謗中傷に対しては、今後もしかるべき法的措置を厳正に行っていく所存です」とコメントしました。

 なお、朝日新聞の記事では、にじーずが今月さいたま市で開いた交流会のレポートが掲載されています。19歳のときにゲイであることを初めてカムアウトした友人からアウティングの被害を受け、自死を考えたこともあったという大学生や、高3のときに父親にカムアウトしたところ「気のせいだ」「俺が直してやる」と言われ、大学入学とコロナ禍が重なって友人もできず、どこにも居場所がなかったというゲイの方などが参加していたそうです。こうした方たちにとって(特に地方の当事者にとって)、安心して参加でき、悩みを相談したり、友達ができたりする場所はとても貴重であり、にじーずが続けてきた活動の意義がよくわかります。
 


参考記事:
誹謗中傷に対する裁判勝訴および法的措置のご報告(にじーず)
https://24zzz-lgbt.com/blog/20241120_houkoku/

LGBT団体を中傷、X投稿者に賠償命令 支援者「若者に必要な場」(朝日新聞)
https://digital.asahi.com/articles/ASSCN1PX4SCNUTIL002M.html
LGBT支援団体へ中傷 被告に33万円支払い命令 横浜地裁(毎日新聞)
https://mainichi.jp/articles/20241120/k00/00m/040/259000c

INDEX

SCHEDULE