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【グラミー賞】レディ・ガガがトランスジェンダーの権利についてパワフルにスピーチしたほか、チャペル・ローン、ドーチー、セイント・ヴィンセント、マイリー・サイラスらが受賞を果たしました

2025年02月03日

 現地時間2025年2月2日に米ロサンゼルスのクリプト・ドット・コム・アリーナで開催されたグラミー賞授賞式(R)。今年は過去最多のクィア・アーティストがノミネートされていましたが、チャペル・ローンが最優秀新人賞を受賞したほか、レディ・ガガやドーチー、St. Vincentなどが受賞、ビリー・アイリッシュなどもステージ・パフォーマンスで授賞式を盛り上げました。

 
 先日開催されたチャリティ・コンサートにも出演していたLA出身のビリー・アイリッシュは、年間最優秀レコード賞と年間最優秀楽曲賞にノミネートされた「バーズ・オブ・ア・フェザー」を歌いました。ステージには晴天の下に広がるLAの自然が再現され、ビリーは兄のフィニアスやバンドメンバーとともに透き通った歌声を披露し、観客を魅了しました。

 レディ・ガガとブルーノ・マーズもパフォーマンス・アーティストとして登場し、LAの復興を願ってママス&パパスの代表曲「夢のカリフォルニア(California Dreamin')」をカバーしました。「カリフォルニア、愛しています」というガガのメッセージでパフォーマンスは終了し、司会者のトレヴァー・ノアからは山火事の影響で被害を受けた方への寄付や救済のお願いもなされました。

 チャペル・ローンはステージ・パフォーマンスで大きなピンクのポニーに乗って「Pink Pony Club」を歌いました。この歌は、LAのゲイタウン・ウェストハリウッドに憧れて南部のテネシー州から出てきた少女を主人公にした歌で、ウェストハリウッドの有名なゲイクラブ 「The Abbey」での体験が基になっています。
 Rolling Stone Japanの記事では、「最高:チャペル・ローンのプライド讃歌」と題して、「もしチャペル・ローンがグラミー賞で「Pink Pony Club」をひとりで歌っていたら、それはそれでパワフルなパフォーマンスになっただろう。しかし、最優秀新人賞を受賞した彼女はそれ以上のことをしてみせた。タイトルにもなっている子馬に乗って、ロデオ・ピエロたちと一緒に歌ったのだ。ピエロたちは楽しそうで、まったく怖くなかった。ピエロが一人だけだったら、そうはならなかっただろう。彼女は、このパフォーマンスを、クィアの権利と歴史への歓迎の意を示すものへと変えた。ピエロたちが踊るなか、ウェスト・ハリウッドについて歌い、かつてデヴィッド・ボウイがミック・ロンソンとそうしたように、彼女は四つん這いになってパフォーマンスのギタリストのもとに這い寄った。パフォーマンスの終わりには、彼女の仲間がトランス・プライドの象徴であるピンク、白、青の旗を振った。これで終わりではない、彼女たちはこれからも踊り続けるつもりだ」と評されています。
 『Entertainment Tonight』がこのパフォーマンスの様子を一部報じています。

 
 それから、何人ものクィア・アーティストが見事、受賞を果たしています。
 チャペル・ローンは期待通り、最優秀新人賞を受賞しました。プレゼンターは、昨年の受賞者であるヴィクトリア・モネが務めました。
 チャペルは授賞式前のレッドカーペットでトランスジェンダーコミュニティへの連帯を表明しています。GLAADのインタビューで「第二次トランプ政権による一連の反トランスジェンダー政策に関してLGBTQコミュニティに伝えたいメッセージは?」と尋ねられたチャペルは、現状が「残酷」であることを認めた後、「トランスジェンダーの人々は常に存在してきたし、これからも永遠に存在し続けます。何が起ころうとも、トランスジェンダーとして生きる喜びが奪われることは決してありません」と力強く語り、さらに「トランスガールズたちがいなかったら私はここにいなかった」「ポップミュージックがあなたたちのことを思い、気にかけているということを知っておいてください。私はできる限り全てを尽くして、あらゆる方法でトランスジェンダーコミュニティとともに立ち上がります」と語りました。GLAADのインタビュアーが「あなたがクィア・ポップをメインストリームに押し上げてくれた」と感謝すると、チャペルは「私が(この道を)走れるように、多くの人が先を歩いてくれた」「マドンナ、ディスコシーンから2000年代のリアーナ、ニッキー・ミナージュに至るまで、何十年にもわたり、多くの女性たちがセクシュアリティをポップミュージックで表現してきた」「多くの人たちの過去の苦しみや犠牲があって、私はここにいられると思う」と、先人たちに敬意を表しました。

 ドーチーは『Alligator Bites Never Heal』で最優秀ラップ・アルバム賞を受賞した史上3人目の女性となりました。壇上に登り、トロフィを手にしたドーチーは、1989年にこの部門が導入されて以来、受賞した女性はたった2人であることを指摘し、すぐにそれを訂正して「ローリン・ヒル、カーディ・B、そしてドーチー」と自身が3人目であることを涙ながらに語り、会場は歓声に包まれました。その後このアルバムが彼女にとってどんな意味を持つかということに触れ、次世代の黒人女性たちに向けて「今、私を見ている多くの黒人女性たちへ、あなたなら何だってできると伝えたいです」と語りました。「あなたはここにふさわしくない、肌の色が黒すぎる、十分に頭がよくない、大げさすぎる、うるさすぎる、といったステレオタイプを許してはいけません。あなたはあなたが今いる場所にふさわしい人物であり、私がその証人です」と述べました。

 それから、レディ・ガガ&ブルーノ・マーズの「Die With A Smile」が見事に最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)を受賞しました。ガガは「Die With A Smile」が全米1位を獲得したことで、3つの年代で複数曲の首位を記録した史上3人目のアーティストという快挙を達成しています。
 一緒に登壇したレディ・ガガとブルーノ・マーズはお互いに賛辞を送り合いました。最後にガガは、「今宵、みなさんのために歌うことは大きな名誉です。一言だけ。トランスジェンダーは透明な存在ではありません。トランスの人々は愛に値します。クィアコミュニティは敬意に値します。音楽は愛です。ありがとう」とトランスジェンダーの権利についてのパワフルなスピーチをして、観客のスタンディングオベーションを得ました。

@varietymagazine Lady Gaga: "Trans people are not invisible. Trans people deserve love, the queer community deserves to be lifted up. Music is love. Thank you." #GRAMMYs ♬ original sound - Variety


 セクシュアル・フルイディティであることをカムアウトしているグラミー常連アーティストのセイント・ヴィンセントは今回、最優秀ロック・ソング(「Broken Man」)、最優秀オルタナティブ・ミュージック・パフォーマンス(「Flea」)、最優秀オルタナティブ・ミュージック・アルバム(『All Born Screaming』)の3部門で受賞を果たしました。

 パンセクシュアルかつノンバイナリーであることをカムアウトしているマイリー・サイラスは、昨年「Flowers」で年間最優秀レコード、最優秀ポップ・パフォーマンス(ソロ)に輝きましたが、今年はビヨンセの「II MOST WANTED」でのコラボで最優秀カントリー・パフォーマンス(デュオ/グループ)を受賞しています。

 それから、レナード・バーンスタインに同性の恋人がいたことを描いた映画『マエストロ:その音楽と愛と』のサントラである『Maestro: Music by Leonard Bernstein』が最優秀映像作品サウンドトラック・アルバムを受賞しました。このアルバムは、ヤニック・ネゼ=セガンというカナダのゲイの指揮者がロンドン交響楽団を指揮して録音されたものです。  


 今回のグラミーは、年間最優秀レコードと年間最優秀楽曲をケンドリック・ラマーが、年間最優秀アルバムをビヨンセが、最優秀新人賞をチャペル・ローンが獲り、主要4部門が黒人(人種的マイノリティ)とクィア(性的マイノリティ)で占められる結果となりました。
 また、音楽界に貢献した黒人ミュージシャンに贈られる「グローバルインパクト賞」を授かったアリシア・キーズが「多様な背景や視点を持つ才能豊かで勤勉な人々を見てきました。(トランプ大統領が攻撃する)DEIは脅威ではなくギフトです」とスピーチしたり、ガガがトランスジェンダー支援のスピーチをして満場の拍手を浴びたり、トランプ大統領の反動的政策に抗い、多様性と包括性、マイノリティの擁護を積極的に支持する姿勢を示すものとなりました。2021年にグラミーの白人優遇を批判し、ボイコットを宣言したザ・ウィークエンドが今回、パフォーマンスを披露し、和解を演出したのもその象徴と言えます。
 先日のアカデミー賞のノミネーションが「急速に変化する米国に対する、現実的かつ重要な反論」であったように、今回のグラミー賞授賞式も、音楽を愛し、音楽の力を信じる人々が手を携え、トランプ政権の横暴に抗していこうと確認し合うようなイベントだったのではないでしょうか。


参考記事:
【第67回グラミー賞授賞式(R)】ビリー・アイリッシュがトップバッター、LA復興を願う(Billboard JAPAN)
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/146065/2

【グラミー授賞式まとめ】最高の瞬間、最低の瞬間、「?」な瞬間(Rolling Stone Japan)
https://rollingstonejapan.com/articles/detail/42249/3/1/1

【第67回グラミー賞授賞式(R)】チャペル・ローンが<最優秀新人賞>受賞(Billboard JAPAN)
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/145997
チャペル・ローン、グラミー賞2025で「トランスジェンダー女性たちなくして私はここにいない」と連帯を表明(Vogue Japan)
https://www.vogue.co.jp/article/grammys-2025-chappell-roan-trans-rights

ドーチー、グラミー賞2025最優秀ラップ・アルバム賞を受賞。涙ながらに「黒人女性は何だってできる」とスピーチ(Vogue Japan)
https://www.vogue.co.jp/article/doechiis-grammys-2025-speech

【第67回グラミー賞授賞式(R)】レディー・ガガ&ブルーノ・マーズ「Die With A Smile」が<最優秀ポップ・パフォーマンス(デュオ/グループ)>受賞(Billboard JAPAN)
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/145996
Lady Gaga Declares ‘Trans People Are Not Invisible’ in Grammy Speech(Rolling Stone)
https://www.rollingstone.com/music/music-news/lady-gaga-grammy-2025-trans-rights-1235254844/

【第67回グラミー賞授賞式(R)】全受賞アーティスト&作品リスト
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/145991/2

A・キーズさん「多様性はギフト」 レディー・ガガさんも擁護 グラミー賞授賞式(時事通信)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025020300768



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