PEOPLE
レインボーマーチ札幌の実行委員長・牧祐介さんにインタビュー
9月19日に開催された第14回レインボーマーチ札幌。この一大イベントを運営していたのは、弱冠20代の実行委員の方たちでした。実行委員をつとめた牧祐介さんに、パレードについてのいろいろをお聞きしてみました。
牧祐介さんは24歳の会社員の方。2008年、弱冠22歳にしてレインボーマーチ札幌の実行委員長をつとめ、今年でパレードを主催して3年目になります。その若さであんな大きなイベントを開催できた、そしてもう3年も続けてきたというのは、本当にスゴいこと。その小さな体のいったいどこにそんなパワーがあるんだろう…と思ってしまいます。牧祐介さんのパレードへの思いについて、インタビューしてみました。(聞き手:後藤純一)
——牧さんが初めてレインボーマーチに参加したのはいつですか?
牧:11回目(2007年)ですね。そのとき僕は21歳で、ゲイバーデビューした直後だったので「同じゲイの人がこんなにたくさん!」と衝撃を受けました。ものすごいパワーだなって、感動しました。
——その翌年、実行委員長になったわけですが、やろうと思ったきっかけは?
牧:12回目の実行委員会が発足するときに、他に誰もやる人がいなくて、このままでは札幌からパレードがなくなっちゃう!っていう状況で…だったら自分でやってみようと思ったのがきっかけです。それで、仲の良かった9人くらいの友達と集まって、無くなるのはさびしいよね、と話して、いっしょにやろうよ、と。
——パレードという公のイベントで代表を務めるということは、新聞やTVなどに取材されたり、表に出るということでもありますが、そういう意味での不安などはありませんでした?
牧:そういうこともあるかな、と思って、パレードの家族にもカミングアウトして、理解してくれてたので、よかったです。ちょうど『カミングアウト・レターズ』が発売されていたので、それを渡してあげて。もともと「好きなように生きなさい」というタイプの母親だったので、大丈夫でした。そして、当日、会場に見に来てくれたんです。
——それは本当にうれしかったですね! 初めてのときはいろいろ大変だったと思いますが…
牧:いろいろと相談に乗ってくれる方々がいて、かなり助けられました。関連団体と密にコミュニケーションを取って打ち合わせをしていかなければいけないので、時間を取ることが難しかったです。——ケンタさんはじめ、以前パレードをやってた人たちが周りにいてサポートしてくれるのはありがたいですよね。やっていく中で、どうしても意見の食い違いが出てきたり、ということもあったのかな?と思いますが…
牧:意見がぶつかって、ミーティングの最中に出て行ったり…ということもありました。でも、「パレードを成功させよう」という目標は同じですから、話し合って、妥協点を見つけて、またいっしょにやれるようになりました。
——青春ですね…もともと腹を割って話せる仲間だったということも、よかったんでしょうね。話は変わりますが、牧さんの代からミュンヘン市長がメッセージをくれるようになるという新しい展開があって、素敵だなぁと思ってました。何か新しいことをしよう、とみんなで話し合ったのですか?
牧:たまたま札幌の『Hearty Cafe』というゲイバーに来られたドイツのお客様がいらして。その方がレインボーマーチの話を聞いて、何かできることを、と提案してくれたんです。で、姉妹都市であるミュンヘンの市役所につないでくれて、メッセージをいただけるようになりました。そのとき、翌年がポートランドとの姉妹都市提携10周年だという話になって、じゃあポートランドにも働きかけてみよう、ということになったんです。市長のサム・アダムスさんがオープンリー・ゲイの方だったのも偶然です。
——なるほど、いろんな偶然が重なって…でもきっと、レインボーマーチの趣旨に共感したからこそ、その方も動いてくれたんですよね。ちなみに、札幌がこんなに継続的にパレードをやり続けられる、うまくいっている秘訣は何だと思いますか?
牧:札幌はもともと市も警察も協力的で、やりやすい土壌があると思います。前の方たちが築いてくれたパレードの財産を、次の世代が引き継いで、ということなんですが、僕らが相談に行くと、みなさん本当によく話を聞いてくれて。ありがたいことです。
――土地柄なんでしょうか、札幌の人たちってみんな人がいいですよね。気さくでオープンマインドだと思います。
牧:ありがとうございます。なんだかんだ言っても小さなコミュニティなので、仲良くしないとね、という気持ちもあるのかもしれません。
——あらためて、ですが、今年のパレードを終えての感想を聞かせてください。
牧:とにかく無事に終わったことにホッとしました。本当は、あのステージでもっと伝えたいことがあったのですが、いろんな思いがこみあげてきて、うまくしゃべることができなくなってしまって…。悔しかったです。——感極まった感じでしたね。よかったら、そのとき伝えたかったことを、教えてください。
牧:若い世代もやればできる!ということ、そして若い世代がもっと盛り上げていかないと、ということを言いたかったんです。決して誰かがやってくれるわけじゃない、自分で動かないと何も変わらないよ、ということとか。
——素敵なメッセージですね。では、来年、15回記念のレインボーマーチについて、何か抱負があれば教えてください。
牧:正直、僕らに代替わりしてからは、前の方たちがやってきたことの「つなぎ」のような、何とか続けてきた、という感じだったと思います。もっとメッセージ性というか、当事者からの要望を行政に伝えたり、プラスαのことをやっていかなきゃな、と思ってます。シンポジウムをやったりとか。
——パレード自体とか、イベント的なことに関しては、何かありますか?
牧:今年初めて「レッドリボン・フロート」を出すことができました。それは、身近な友人がHIVに感染したことをカミングアウトしてくれて…そのことがあって、何とか応援の気持ちを形にしたい、ということがあったんです。ある意味、友達へのプレゼントのような。気持ちから生まれてくるものかな、と思います。
——実は裏でそんなドラマがあったんですね…。きっとお友達も感激していたのではないかと思います。では最後に何かひとこと、お願いします。
牧:もっともっとレインボーマーチが大きなイベントになって、札幌がよりゲイフレンドリーな街になればいいな、と思っています。そのために自分に出来ることは精一杯やっていきたいです!
——どうもありがとうございました!
INDEX
- 映画祭の代表・宮沢英樹さんへのインタビュー
- 「Save the Pride」を終えて…実行委員長に再びインタビュー
- パレードへの熱い思い~「Save the Pride」代表のケータさんにインタビュー
- NLGR+2012で結婚式を挙げたお二人にインタビュー
- NLGR+2012の結婚式をプロデュースしたVALENTY WEDDINGにインタビュー
- NLGR+2012の共同代表の方たちにインタビュー
- 東京レインボープライドの広報担当・乾さんにインタビュー
- 舞台『AKA-TONBO!』に出演するゲイの役者さんにインタビュー
- 映画祭代表・宮沢英樹さんへのインタビュー
- 舞台『Lipsynca』の関係者へのインタビュー
- 日本初のゲイホリデー「G-TOUR JAPAN」主催者インタビュー
- 東京プライドの新代表になった門戸大輔さんへのインタビュー
- NLGR+の実行委員長をつとめたシンヤさんへのインタビュー
- 舞台『BENT』を上演する俳優の蓮池龍三さんへのインタビュー
- 新宿を変える、日本を変える。歌川泰司さんインタビュー
- 座談会「洋上の楽園・ゲイクルーズを語り尽くす」
- 映画『スプリング・フィーバー』チン・ハオ&チェン・スーチョンへのインタビュー
- 「Less Than Human」の星野泰一郎さんへのインタビュー
- レインボーマーチ札幌の実行委員長・牧祐介さんにインタビュー
- 日本初? ゲイによるゲイのための総合スポーツイベント
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