REVIEW
ゲイの青年のひと夏の冒険を描いたセックス絵巻:映画『ドランクヌードル』
ひっそりと上映されていますが、結構スゴい映画です。いろんな男性とのハッテンが描かれています。幻想的なセックス絵巻のような、それでいて、心が潤い、何か忘れていたものを取り戻せたような気がするような作品です

この映画は、ゲイのデザイナーであり映画監督のルシオ・カストロが、伝統的なニードルポイント技法でゲイセックスを描く刺繍アーティスト、サル・サランドラに興味を持ち、ドキュメンタリーを撮ろうと思って彼に会って話しているうちに、ドキュメンタリーではなくその作品にインスパイアされたフィクションを撮ることにして、という、ちょっと変わった経緯で誕生した作品です。ほとんどゲイの出会いやセックスしか描いていませんが、日常と記憶、幻想が混ざり合う、詩的な作品です。
タイトルの「ドランクヌードル(酔っ払い麺)」は、酔っ払いの目を覚ますほど強烈な辛さのタイ料理「パッキーマオ」の英語名に由来しています。
<あらすじ>
夏の間、叔父の洒脱な家で留守番をするためブルックリンにやって来た美大生の青年アドナン。同時にギャラリーでインターンとして働きはじめるが、そこに展示されるのは、去年の夏に彼が出会った奇抜な刺繍アーティストの作品だった。過去と現在が交錯するなか、官能と創造の出会いの連なりが、アドナンの日常の輪郭を曖昧にしていく。





ゲイの青年・アドナンのひと夏のセックスをめぐる冒険譚です。と言うと、『君の名前で僕を呼んで』を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、もっと奔放で、いろんな男性とのセックスが当たり前のように日常の一コマとして描かれています。ある意味、ハッテン絵巻ですが、そのハッテン絵巻のインスピレーションのもとになっているのがサル・サランドラの刺繍作品で、サルおじさん自身も本人役としてこの映画に登場し、とても素敵な役柄を演じていて、という感じで、現実とフィクション、日常と非日常が曖昧に混ざり合って(誰も境目がわからない、分けられないと思います)奇妙な心地よさや美しさやエロスを感じさせます。
ハッテンとかセックスのことを、1ミリも後ろめたさを感じさせず、当たり前に(あるいはunapologeticallyに)描いているところがとてもよかったです。それでいて、セックスのシーンは(リアルなのに)抑制が効いていて、ポルノというよりは、関係性とかシチュエーションとかで萌えさせるような、ちゃんとそこに人間がいて物語があるようなセックスで、心が潤い、遠い昔にどこかに忘れてきてしまった何かを取り戻せたような気がしました。
これまで何百と作られてきたゲイ映画の中で、もしかしたら初めてなんじゃないかと思うのですが、「お年寄りのどういうところに魅力を感じるのか」についてのシーンがあって、とてもよかったです。(サルおじさんに寄せているのかもしれませんが)お年寄りへの欲望をめぐるエピソードが、この映画のキーというか、マジックの一つになっています。いわゆる“フケ専”の方は絶対観たほうがいいです。
詳細は伏せますが、ハッテン場で出会ったヤリエルって人が、意外性のあるとても素敵な人で、見た目はタイプじゃないのですが、惚れました(彼のお友達は全員タイプでした。もっと脱いでほしかったです)
サルおじさんもとても素敵な人でした。自分の老後が見えたというか、こういうおじいちゃんになりたいと思いました。
次にどういう展開が待っているか全く予測ができないという意味で、目が離せない、とてもエキサイティングな作品でした。とても好きです、こういう映画。
森とか山の中のハイパーリアルで神秘的な体験という点では、『クィア』とか『ブンミおじさんの森』を彷彿させるものがあったりも。
NYが好きな方もぜひご覧ください。ブルックリン、行ってみたいと思うはず。
レインボー映画祭でやりそうな映画なのに、これがBunkamuraル・シネマっていう(確かにゲイ映画びいきではあるけれども)格調高い作品を上映している映画館で上映されているところも素晴らしいと思いました。火曜日は1200円で観られますので、みなさん会社帰りにでもぜひ。
ドランクヌードル
原題または英題:Drunken Noodles
2025年製作/アメリカ・アルゼンチン合作/82分/R15+/監督:ルシオ・カストロ/出演:レイス・カリフェ、ジョエル・アイザック、エズリエル・コーネルほか
INDEX
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