REVIEW
当事者でなければ作り得ない、トランスジェンダーのリアルに迫った傑作短編映画『トランジット・デイズ』
河上リサ監督による新作短編映画『トランジット・デイズ』。当事者の方だからこその、トランスジェンダーが直面する問題を鋭く抉りつつ、温かさも感じさせるような作品になっています

『鏡をのぞけば~押された背中~』の河上リサ監督による新作ドラマ映画『トランジット・デイズ』が完成しました。
『トランジット・デイズ』は、トランスジェンダーが周りの人たちと関わるなかで立ち止まり、成長していく物語です。当事者の多様な想いや在り方、周りの人たちとの関係にスポットを当てて、当事者やその家族、友人をめぐる何層にも重なった問題を浮き彫りにしています。前作は手作り感が前面に出ていましたが、今回はキャストや技術スタッフにプロの方たちをお招きし、映像作品としてのクオリティが大幅にアップしています。前作同様、企業や学校、官公庁、当事者団体をはじめとする各種団体での勉強会や研修などで上映・活用していただけるような作品になっています。
<あらすじ>
真由と朔太郎がおつきあい1周年を祝っている最中、真由の父から「ばあちゃんが危篤だからすぐ帰れ」と電話があり、真由は急いで実家に向かう。祖母は幸い無事で、ひさしぶりに家族が揃った一家団欒の席で、奥さんを連れた弟はもうすぐパパになろうとしていることがわかり、両親も孫ができると喜んでいる。一方、真由はまだ彼氏を紹介することもできていない。たまらず真由が外に出ると、偶然、友達のやーたんと会い、お茶をすることに。すると、ロングのウィッグをかぶって女物の服を着て、酒を飲んでやさぐれている人と出会う。それは友達のすーさんだった。すーさんは真由に向かって「裏切り者!」と言い放つ…。



前作に比べて、驚くほど映像やなんかがクリアというか見やすくなっています(さすがはプロの仕事)。友達や家族、周囲の人との温かな人間関係が何よりも大切という基本姿勢は貫かれていながらも、今回は「性別適合手術も受けて戸籍性も変えて一般の会社で働いて恋人もいる」主人公と、地方に暮らし、親からも職場の人たちからも差別され、時に“変質者”扱いされ、そんな状況から抜け出せず、やけになってしまっている友人との対比、そして、男性か女性かしか許容しない社会にハマれる人と、そうじゃない人との対比がシリアスに描かれます。役者さんの頑張りもあって、とてもドラマチックな映画になっています。
「“性別適合手術を終えたら急に態度が冷たくなる”って聞いたけど、本当だな」など、当事者の方じゃないと書けないセリフが随所に出てきて、ハッとさせられます。トランスジェンダーの監督だからこその作品です。当事者が作ることの大切さをまざまざと思い知らされます。(今回は前作と対照的に、役者さんがプロの方たちなのですが、監督さんの思いや、複雑でセンシティブなテーマを頑張って演じていると思います)
地方の生きづらさもそうですが、じゃあ、東京に行けばみんなハッピーになれるかというと、そうとは限らない、LGBTQ施策を行なっている職場はいくらでもあるけれど…といった話も出てきます。
早くから性別移行を行ない、家族にも受け容れられてきた主人公が、同じジェンダーマイノリティの友人をジャッジし、傷つけてしまうという、ある意味「悪者」として描かれているところが、ドラマとしてスゴいと思いますし、誰も取り残さないぞ、という監督さんの強い意志、その根底にある温かさを感じさせます。大切なのは支え合えるトランスジェンダーの仲間、コミュニティの存在だというメッセージも、その人間らしい温かさから生まれています。
ラストは素敵なシーンがいろいろあって、ウルっとさせられます。アライってどういうことなのか、イメージが掴めることでしょう。
監督を務めたのは島本町議に当選した河上リサさん(誹謗中傷を受け、裁判を闘っています)。TPで初めてお会いしましたが、庶民的で親しみやすい方でした。
ほかにも「総務部長はトランスジェンダー 父として、女として」の岡部鈴さんが製作陣に加わっていたり、何人ものトランスジェンダーの方が参加して作りあげた作品です。
この『トランジット・デイズ』のプレミア上映会が、プライド月間の、NYをはじめ世界中でレインボーフラッグが翻る28日に都内で開かれることになりました。江東区の都営新宿線沿線・駅から徒歩5分程度の会場で、13時の部と16時の部があるそうです。1000円でご覧いただけます。詳しくはこちらをご覧ください。

トランジット・デイズ
2026/日本/監督・脚本:河上リサ/出演:加藤睦望、小日向春平、金沢涼恵、柴田公彦、小林武親、結城駿、佐慈音色、森下亮
INDEX
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SCHEDULE
- 07.25ノーパンスウェットナイトIN大阪25
- 07.26巨デブ上等 -Fat Superior-





