REVIEW
ゲイの警官が主人公のセクシーなクライム・ラブストーリー『ボディ・ブロー』(レインボー・リール東京2026)
今年もレインボー・リール東京が開幕! オーストラリアからやってきた映画『ボディ・ブロー』は、ゲイの警官が主人公のハードボイルドなクライム・ラブストーリーでした

今年もレインボー・リール東京が開幕しました! 雨がザーザー降るなかではありましたが、会場のユーロライブには大勢の方たちが詰めかけ(カップルと思しき男性2人組も多かったです)、一緒に映画を楽しみ、最後には拍手も起こっていました。
場内には企業ブースなどはなく、上映前のCM映像なども全くなく(その代わり、キュートな「上映に際してのお願い」映像が新たにお目見えしました)、もしかしたら企業協賛がなかったのかな…と思ったのですが、もしチケット代だけで運営していけるのであればそれでも全然いいのでは?と思ったり(正直、過去には、目を覆うようなバイオレンスなCMが毎回入るのが苦痛だった年もありました)。映画祭が毎年継続的に開催され、ちゃんとお客さんもたくさん来てくれるのであれば、それがいちばんです。

20日(土)に上映された、今まであまり観たことのないタイプのハードボイルドなクライム・ラブストーリー『ボディ・ブロー』のレビューをお届けします。
ゲイの警官が主人公というと、漫画では羅川真里茂さんの『ニューヨーク・ニューヨーク』というものすごい名作がありますが、この映画は「ゲイの警官」というものが当たり前になった時代だからこその、もっとライトでセクシーでクィアな犯罪映画というか、ちょっと今までに観たことがないタイプの作品でした。
<あらすじ>
若き警官エイデンは、危険な潜入捜査に乗り出す。そこで彼は、麻薬王のドラァグクイーンに操られる魅力的な男性セックスワーカー、コディと出会う。エイデンは危険な世界に足を踏み入れ、警察の陰謀に巻き込まれていく…。





面白かったです。ついにこういうジャンルの映画が作られる時代になったんだなぁ、という感慨がありました。ゲイ先進国のオーストラリアだからこそ、ですね。
ご存じのように、オーストラリアのシドニーはマルディグラという世界一レベルの華やかさを誇るプライドパレードを毎年やっていて(日本からもツアーなどで行かれた方、結構多いと思います)、『プリシラ』という永遠の名作ドラァグクイーン映画を生んだりもしてきた本当に素敵な街です。パレードにはLGBTQの消防士や警官のフロートも出るのが恒例になっていて、観客の感動を呼んでいます。
世界有数のゲイフレンドリー・タウンとして認知されているシドニーですが、歴史を遡れば、第1回のマルディグラの時に警察がパレード参加者と衝突し、逮捕者を出したりしています。警察はもともと、ゲイを抑圧する側だったわけです。それがいつしかパレードに警官のフロートが出るようになり(つまり、ゲイやレズビアンの警官がPRIDEを持ってカムアウトするようになり)、今や「ゲイの警官」を主人公にした映画が作られるようになったのです。しかも、偏見や差別を恐れて署内でカミングアウトできないとかじゃなく、ゲイやレズビアンがすっかり当たり前になっていて、あまつさえ署内にLGBTQの部署が設けられてるのがスゴい!と思いました。
ゲイの警官・エイデンは、ちょっと怪しい性の自己啓発ビデオにハマっていて(解放系というよりは禁欲系? マスターベーションを我慢して性のエネルギーを充満させるべき、とかなんとか)いつも股間をギンギンにさせながら堪えているのですが、それはさておき、エイデンは署内のLGBTQの部署に配属されることになり、レズビアンの上司に制服を脱いでタンクトップ姿になるよう命じられたり(笑)、「ファット・フランキーズ」というゲイバーに連れて行かれてガンガン飲まされたり(上司ときたら、警官なのに車でお店に来て後輩を泥酔させるわ、クスリもやるわ、お店でイチャイチャするわで、実にオージーらしいおおらかさです)。その店でエイデンは、イケメンミセコのコディとデキちゃうのですが、自分でも気づかないうちに、とある陰謀に巻き込まれ、一方で真実の愛というか本気の恋に目覚めてしまい…というお話でした。ちょっとB級感もあるかもしれませんが、たいへんセクシーでゲイチックで予想以上にちゃんとした犯罪映画になってました。ラストシーンにキュンとくる方も多いと思います。こういう映画が観たかった!と興奮する方もいらっしゃることでしょう。
タンクトップの警官というとダイ・ハードのブルース・ウィリスを思い出す方も多いと思いますが(古い?)、エイデンはもっとゲイ的にセクシーで、よくこんな万人受けする俳優を見つけてきたなと感心しました(マッチョ好きな方もガチムチ好きな方もイケると思います)。ちょっと調べたところ、エイデンを演じたティム・ポーコック(カタカナで書くとちょっとエロい名前ですね)は、2009年の『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』のティーンエイジャー時代のサイクロプス役で映画デビューを果たしたんだそう。ウィキペディアの日本語ページもあるくらい、メジャーな俳優です。そんな方があんなことやこんなことを…スゴい!(ちなみにペニスケージ(男性用貞操帯)好きな方はきっとアガると思います。ぜひご覧ください)
シドニーのゲイタウン、オックスフォードストリートでロケが行なわれていて(レインボーフラッグが派手に飾られてます)、シドニー・サウナ(たぶん遠い昔に行ったことあります)とかも出てくるので、シドニーに行ったことある方は懐かしさも感じるかもしれません。
次回は7月11日、ウィメンズプラザ東京で上映されます。土曜の夜に観るのにピッタリなエンタメ作品ですので、ぜひご覧ください。(チケットはこちら)
英題:Body Blow
監督:ディーン・フランシス
2025|オーストラリア|99分|英語 *日本初上映
6月20日(土)16:20-
7月11日(土)19:00-
INDEX
- 性の多様性について子どもから大人まで理解し共感できる決定版的な良書『多様な性を生きる LGBTQ+として生きる先輩たちに人生のヒントを聞いてみた』
- ミニマムなのにとんでもなくスリリングでクィアな会話劇映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
- アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
- レポート:國學院大學博物館企画展「性別越境の歴史学-男/女でもあり、女/男でもなく-」
- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
SCHEDULE
- 06.20第33回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜
- 06.20Joy POP5
- 06.20ArcHじゃないと
- 06.20aikoナイト vol.15 三国駅
- 06.21第33回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜





