REVIEW
メキシコから届いたハッピーでキラキラなトランス・ドキュメンタリー映画『きっと青春大革命!カルラ8年の記録』
素晴らしい家族や友達に恵まれ、のびのび、自分らしく成長していくトランス少女の8年間を、自身もトランス男性である監督が友達のように見つめ続け、世界で称賛を浴びたドキュメンタリー映画です

Normal Screenが配給する映画『きっと青春大革命!カルラ8年の記録』は、トランス男性の映画監督/研究者であるカニ・ラプエルタが、現代のメキシコを生きるトランスジェンダーの小学生がティーンへと成長していく8年間を共に紡ぎ、完成させた青春映画。監督は様々な“移行”の途中にあるカルラの日々と並走し、コミカルな演出と魔法を交えながら、ジェンダーの固定概念が強い小さな町で成長する思春期の葛藤と揺らぎを喜びに満ちた映画として結実させました。50以上の映画祭で上映され、モロディスト・キーウ国際映画祭、ラ・セレナ国際映画祭、子どもと若者映画祭で最優秀作品賞を受賞、メルボルン・クィア映画祭では最優秀デビュー・ドキュメンタリー賞に輝き、NYやミラノのクィア映画祭で特別表彰されています。
<あらすじ>
メキシコシティの南にある町テポストラン。15歳のカルラが秘密のコクーンで監督のカニと話し合っている。「この映画をどんな作品にしたい?」2人はカルラの人生を小学生だった頃から時系列に振り返り始める。男子と女子のどちらの列にも並べなかった校庭、永遠にメイクの練習をしたベッドルーム、コロナ禍で学校が再開した朝、名前を正式に変更した市役所、プライドマーチで叫んだスローガン、憧れたバトン部。パンクでヒッピーだった料理人のママとパパ、友だち、監督のカニ、そしてクィアコミュニティと聖なる岩山に見守られながら、カルラがいろんな自分に出会っていく。交換日記のように心のうちを少しずつシェアしながら、カルラと本作を作った監督のカニ・ラプエルタ。トランスジェンダーの彼は、トランスの映画の作り手を見る機会が少ないことに気づき、自らも映像に登場することにした。




カルラ自身が「どんな映画がいい?」と聞かれて、今までみたいなトランスジェンダーが死んだり悲劇的な結末を迎えるのじゃなくて「笑って観れるような映画がいい」と答え、本当にその通りにつくられた映画でした。
監督のカニと、トランスの少女・カルラとの8年間の友情のお話でもあるし、カルラをとりまく優しくて素敵な人々のお話でもありました。ふつうのドキュメンタリーは被写体がいて、観察者・記録者としての撮影者・監督がいるわけですが、カルラは友達のようにカニに接して画面の前に呼び込んだり、冒頭のシーンでは二人が並んでベッドに横たわってこの映画をどんな始まりにする?とか話してたりするし(それぞれにトランスカラーの服を着ています)、カニがカルラのお母さんと抱き合うシーンも入ってるし、フィクションじゃない、リアルな映画だからこその垣根がない感じの作品になってて面白かったです。
カルラの周りの人たち、特にお父さんとお母さんが本当に素晴らしくて、拍手モノでした。お母さんが性別についてすごく進んだ考えを持っていることや、お父さんがホルモン治療に賛成してくれたり、役所に付き添って性別変更してくれたり。学校の先生が「憲法で人権が保障されている」と熱弁をふるって全面的に味方になってくれたのも素晴らしかったです。弟(トランス男性)もキュートだし、友達の女子もヤバい。トランス女性の先輩(メンター)のような人も登場します。カルラが(一時期は落ち込んだりもしたけれど)おおむね自分らしくハッピーに過ごしてこれたのは、こういう周りの人たちのおかげだと思います。
ちなみにカルラはある時期からバトンガールに憧れて、練習を始めるんですが、子どもの頃の僕と同じだ!と思って観てました(違いは、本当にバトンガールになれたかどうか)。マーチングバンドの行進にバトンガールとして参加したときの晴れ姿、素敵でした。
テポストランはもともとの住人もいるけど、世界中からヒッピーが集まる街でもあるそうで、そういう自由でフリーダムなところもよかったのかも。プライドパレードもやってました。
やっぱり国が法律や制度が守ってくれるかどうかは重要だと、あらためて実感しました。メキシコは中南米では最も早い時期から(州単位での前進ではありましたが)同性婚を承認してきたし、プエルトバジャルタのようなゲイリゾートもあるし、フチタンみたいな街もあるし、本当にいい国です。
ところどころ夢のような遊びのようなシーンも混ざってて、それも素敵でした。ぜひ映画館でご覧ください。
きっと青春大革命!カルラ8年の記録
原題:Niñxs
2025年/メキシコ・ドイツ合作/84分/監督カニ・ラプエルタ
7月18日(土)より渋谷・シアター・イメージフォーラムにて公開。今秋、大阪・シネ・ヌーヴォでも上映予定
INDEX
- 獄中という極限状況でのゲイの純愛を描いた映画『大いなる自由』(レインボー・リール東京2022)
- トランスジェンダーの歴史とその語られ方について再考を迫るドキュメンタリー映画『アグネスを語ること』(レインボー・リール東京2022)
- 「第三の性」「文化の盗用」そして…1秒たりとも目が離せない映画『フィンランディア』(レインボー・リール東京2022)
- バンドやってる男子高校生たちの胸キュン青春ドラマ『サブライム 初恋の歌』(レインボー・リール東京2022)
- 雄大な自然を背景に、世界と人間、生と死を繊細に描いた『遠地』(レインボー・リール東京2022)
- 父娘の葛藤を描きながらも後味さわやかな、美しくもドラマチックなロードムービー『海に向かうローラ』
- 「絶対に同性愛者と言われへん」時代を孤独に生きてきた大阪・西成の長谷さんの人生を追った感動のドキュメンタリー「93歳のゲイ~厳しい時代を生き抜いて~」
- アジア系ゲイが主役の素晴らしくゲイテイストなラブコメ映画『ファイアー・アイランド』
- ミュージシャンとしてもゲイとしても偉大だったジョージ・マイケルが生前最後に手がけたドキュメンタリー映画『ジョージ・マイケル:フリーダム <アンカット完全版>』
- プライド月間にふさわしい名作! 笑いあり感動ありのドラァグクイーン演劇『リプシンカ』
- ゲイクラブのシーンでまさかの号泣…ゲイのアフガニスタン難民を描いた映画『FLEE フリー』
- 男二人のロマンス“未満”を美味しく描いた田亀さんの読切グルメ漫画『魚と水』
- LGBTQの高校生のリアリティや喜びを描いた記念碑的な名作ドラマ『HEARTSTOPPER ハートストッパー』
- LGBTQユースの実体験をもとに野原くろさんが描き下した胸キュン青春漫画とリアルなエッセイ『トビタテ!LGBTQ+ 6人のハイスクール・ストーリー』
- 台湾での同性婚実現への道のりを詳細に総覧し、日本でも必ず実現できるはずと確信させてくれる唯一無二の名著『台湾同性婚法の誕生: アジアLGBTQ+燈台への歴程』
- 地下鉄で捨てられていた赤ちゃんを見つけ、家族として迎え入れることを決意したゲイカップルの実話を描いた絵本『ぼくらのサブウェイベイビー』
- 永易さんがLGBTQの様々なトピックを網羅的に綴った事典的な本『「LGBT」ヒストリー そうだったのか、現代日本の性的マイノリティー』
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
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