REVIEW
田亀源五郎さんの新連載『雪はともえに』
田亀源五郎さんの待望の新連載『雪はともえに』がwebアクションで始まりました。大正ロマン薫る、新たな田亀作品の誕生です。ぜひご覧ください

第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞、第47回日本漫画家協会賞優秀賞、第30回アイズナー賞最優秀アジア作品最優秀賞を受賞し、NHKでドラマ化もされた『弟の夫』のあと、『僕らの色彩』『魚と水』といった素晴らしい作品を生み出し続けてきた田亀源五郎先生。その待望の新連載『雪はともえに』がwebアクションで始まりました。第1話「大正十年/大正十一年・春①」のレビューをお届けします。
<あらすじ>
時は大正、激動の20世紀初頭を生きた二人の男がいた。小説家・松永春光と画家・一柳翠帳。二人の人生に、激動の時代が容赦なく襲いかかる――。
田亀先生は一般向けにはこれまで現代を舞台にした作品を描いてきたわけですが、今回初めて大正時代を舞台にした作品を手がけました。もともと『銀の華』で明治時代を、『君よ知るや南の獄』で終戦期を描いたり、時代モノも得意とされている方ですが、今回(鬼滅がそうであるように)大正というある種のロマンや凜とした美しさを感じさせる時代を選んだことで、新しい田亀作品に出会えるという期待が高まります。
主人公の松永春光は端正な顔立ちの優男といった雰囲気の作家です。冒頭、スペイン風邪で愛する人を失くし、だからといってご両親に真実を打ち明けて葬儀に参列したり遺骨を分けてもらったりということもできず、悲しみに暮れます。(ちなみに大正時代は西洋の影響で同性愛を“異常”で“変態”だと断じる風潮が強まった時代です。世間がそのような関係を認めるはずがなく、カミングアウトなど考えられませんでした)
もう恋なんてしないと心に決めていた松永ですが、ふとしたことから髭面のゴツい男に出会い(運命的な出会いです)、新たな恋の始まりを予感させ――というところで、1話が終わります。次を読むのが楽しみです。
個人的にとても素晴らしいと感じたのは、『弟の夫』でマイクが家に来たことで弥一が自らの差別心(ホモフォビア)に気づかされるシーンが描かれていたように、松永がマイクロアグレッション的な内なる女性蔑視に気づかされるシーンが描かれていたことです(大正時代は家父長制が法的に制度化され、女性の権利が著しく制限されていた時代ですし、松永なんて婦人雑誌に女性向けの小説を書いていた人ですから、全然女性寄りなのに…というか、そういう人だからこそ自覚できたんでしょうけど)
もしまたNHKでドラマ化されたら(気が早すぎ)『虎に翼』を引き合いに出して讃えられる名シーンになるだろうな、と思いました。
時代はこれからどんどん暗く、厳しくなっていきます。松永春光と一柳翠帳がこれからどうなっていくのか、ハラハラしながら見守りたいと思います。
(後藤純一)
INDEX
- 決して同性愛が許されなかった時代に、激しくひたむきに愛し合った高校生たちの愛しくも切ない恋−−台湾が世界に放つゲイ映画『君の心に刻んだ名前』
- 束の間結ばれ、燃え上がる女性たちの真実の恋を描ききった、美しくも切ないレズビアン映画の傑作『燃ゆる女の肖像』
- 東京レインボープライドの杉山文野さんが苦労だらけの半生を語りつくした本『元女子高生、パパになる』
- ハリウッド・セレブたちがすべてのLGBTQに贈るラブレター 映画『ザ・プロム』
- ゲイが堂々と生きていくことが困難だった時代に天才作家として社交界を席巻した「恐るべき子ども」の素顔…映画『トルーマン・カポーティ 真実のテープ』
- ハッピーな気持ちになれるBLドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(チェリまほ)
- 僕らは詩人に恋をする−−繊細で不器用なおっさんが男の子に恋してしまう、切ない純愛映画『詩人の恋』
- 台湾で婚姻平権を求めた3組の同性カップルの姿を映し出した感動のドキュメンタリー『愛で家族に〜同性婚への道のり』
- HIV内定取消訴訟の原告の方をフィーチャーしたフライングステージの新作『Rights, Light ライツ ライト』
- 『ルポールのドラァグ・レース』と『クィア・アイ』のいいとこどりをした感動のドラァグ・リアリティ・ショー『WE'RE HERE~クイーンが街にやって来る!~』
- 「僕たちの社会的DNAに刻まれた歴史を知ることで、よりよい自分になれる」−−世界初のゲイの舞台/映画をゲイの俳優だけでリバイバルした『ボーイズ・イン・ザ・バンド』
- 同性の親友に芽生えた恋心と葛藤を描いた傑作純愛映画『マティアス&マキシム』
- 田亀源五郎さんの『僕らの色彩』第3巻(完結巻)が本当に素晴らしいので、ぜひ読んでください
- 『人生は小説よりも奇なり』の監督による、世界遺産の街で繰り広げられる世にも美しい1日…『ポルトガル、夏の終わり』
- 職場のLGBT差別で泣き寝入りしないために…わかりやすすぎるSOGIハラ解説新書『LGBTとハラスメント』
- GLAADメディア賞に輝いたコメディドラマ『シッツ・クリーク』の楽しみ方を解説します
- カトリックの神父による児童性的虐待を勇気をもって告発する男たちの連帯を描いた映画『グレース・オブ・ゴッド 告発の時』
- 秀才な女子がクラスの男子にラブレターの代筆を頼まれるも、その相手は実は自分が密かに想いを寄せていた女子だった…Netflix映画『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
- 映画やドラマでトランスジェンダーがどのように描かれてきたかが本当によくわかるドキュメンタリー『Disclosure トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』
- 人生のどん底から抜け出す再起の物語−-映画『ペイン・アンド・グローリー』
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