REVIEW
歌川たいじ『ブレイクスルー』
歌川たいじさんが、またまたスゴい本を出しました。もちろん今までのゲラゲラ笑って読めるテイストはそのままで、歌川さんもツレちゃんも登場しますが、今回の主役はお友達のペロくんという人。彼の生き様のあまりのドラマチックさに驚かされる、奇跡の「ブレイクスルー」物語です。

歌川たいじさんが、またまたスゴい本を出しました。もちろん今までのようにゲラゲラ笑って読める漫画ですし、歌川さんもツレちゃんも出てくるのですが、今回の主人公はお友達のペロくんという人です。blog「【漫画】♂♂ゲイです、ほぼ夫婦です」でも連載されていたペロくんの恋愛物語の完結編ということなのですが、それだけにはとどまらない、スゴい本です。
ペロくんは「なんで僕にオトコができないの? 意味わかんない」と思ってる人で、友達にオトコができると「なんであんたみたいなブスに!」と言っちゃうようなタイプ。住んでるアパートの大家さんに男を連れ込んでるのを見られて「気色悪い」と言われて激怒し、「死ね!」と騒ぎ立てます。
一方、歌川宅と同じ建物に、昔の同僚だったむぽ子さんが、ダンナさんと男の子といっしょに引っ越してきます。男の子はどうやら女装に興味があるようですが、それが予想以上に大きなトラブルのもとに…
ペロくんは、歌川さんのアドバイスで、ゲイ団体の集まりに顔を出すようになります。そこでも最初はもめ事を起こしますが、運命の人に出会い、変わっていきます。また、険悪な関係だった大家さんとも、あることをきっかけに仲直りします。そして、この大家さんがペロくんの「事実は小説より奇なり」的なドラマの鍵を握る人になるとは、誰も想像できなかったのでした…
といったストーリーです。
ペロくんのドラマチックな恋をメインとしつつも、それだけじゃなく、いろんなお話がからみあい、クロスし、思わぬ方向にふくらんだりしていきます。(裏テーマは、ゲイの親子関係です。そこが泣かせどころでもあります)
ペロくんの身に起こった、ちょっと事実とは思えないくらいドラマチックな出来事、その展開を見届けるだけでも、十分楽しめる長編漫画です。
なのですが、各章の最後に歌川さんがちょこっとずつ文章で書いて捕捉しているように、この長編漫画には、ゲイとして生きていくうえでものすごく大事なことが、たくさん詰まっています。ペロくんの奇跡のような成長ぶり(ブレイクスルー)は、きっと読む人すべてに少なからず感銘を与えると思います。
僕らの人生(ゲイライフ)には、いろんな「答えのない問い」があると思います(伏見さんが『百年の憂鬱』で書いていたのもそうです。小説や漫画という形でしか表現できないことがあり、この作品もそうで、だからこそ傑作なのです)。ペロくんは、歌川さんの絶妙なアドバイスのおかげもあって、自ら体を張って、果敢にそんな問いに挑戦し、見事に、彼だからこその(そして誰もが共感するような)答えを得た人なのです。彼の情熱とか勇気、行動力には惜しみない拍手を贈りたくなります(その原動力が「好き」という気持ちだったところも素晴らしい)
ちなみに、漫画のタイトルになっているブレイクスルーとは、辞書で引くと「困難や障害を突破すること。また、その突破口。」と説明されています。ビジネスなんかでも使われる言葉みたいですね。僕はブレイクスルーと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、ミュージカル『RENT』です。家賃(RENT)もろくに払えないほど貧しい芸術家たちが主人公で、ゲイだったり、当時まだ死の病だったHIVに感染していたりして、ともすると絶望してしまいがちな状況のなかで、素晴らしくキラキラと前向きに生きる姿に世界中が感動しました。
この『ブレイクスルー』は、『RENT』と同様、明日が見えない人にとっての福音の書であり、幸せをつかむためのバイブルのような本になると思います。
それから、『ブレイクスルー』上巻には、今まで性悪キャラとして登場していたキミツくんと歌川さんの友情の秘密を語るエピソードも収録されています。(こちらもまた違う意味で、泣けるお話です。そして、歌川さんの人生の壮絶さがまたひとつ明らかにされる、衝撃的なお話でもあります)
ちょっと大げさかもしれませんが、東日本大震災と原発事故が日本の未来に暗い影を落とし、あるいは、ゲイシーンでもさまざまな悲しい出来事があり、思わず頭を垂れてしまうような…ついつい悲観的になりがちな今の時代、この本こそが、もしかしたら現状を切り開いていくヒントをくれる最高のテキストになるかもしれません。
PVがまた傑作!本当によくできています。今すぐ見てみてください!
ペロくんは「なんで僕にオトコができないの? 意味わかんない」と思ってる人で、友達にオトコができると「なんであんたみたいなブスに!」と言っちゃうようなタイプ。住んでるアパートの大家さんに男を連れ込んでるのを見られて「気色悪い」と言われて激怒し、「死ね!」と騒ぎ立てます。
一方、歌川宅と同じ建物に、昔の同僚だったむぽ子さんが、ダンナさんと男の子といっしょに引っ越してきます。男の子はどうやら女装に興味があるようですが、それが予想以上に大きなトラブルのもとに…
ペロくんは、歌川さんのアドバイスで、ゲイ団体の集まりに顔を出すようになります。そこでも最初はもめ事を起こしますが、運命の人に出会い、変わっていきます。また、険悪な関係だった大家さんとも、あることをきっかけに仲直りします。そして、この大家さんがペロくんの「事実は小説より奇なり」的なドラマの鍵を握る人になるとは、誰も想像できなかったのでした…
といったストーリーです。
ペロくんのドラマチックな恋をメインとしつつも、それだけじゃなく、いろんなお話がからみあい、クロスし、思わぬ方向にふくらんだりしていきます。(裏テーマは、ゲイの親子関係です。そこが泣かせどころでもあります)

なのですが、各章の最後に歌川さんがちょこっとずつ文章で書いて捕捉しているように、この長編漫画には、ゲイとして生きていくうえでものすごく大事なことが、たくさん詰まっています。ペロくんの奇跡のような成長ぶり(ブレイクスルー)は、きっと読む人すべてに少なからず感銘を与えると思います。
僕らの人生(ゲイライフ)には、いろんな「答えのない問い」があると思います(伏見さんが『百年の憂鬱』で書いていたのもそうです。小説や漫画という形でしか表現できないことがあり、この作品もそうで、だからこそ傑作なのです)。ペロくんは、歌川さんの絶妙なアドバイスのおかげもあって、自ら体を張って、果敢にそんな問いに挑戦し、見事に、彼だからこその(そして誰もが共感するような)答えを得た人なのです。彼の情熱とか勇気、行動力には惜しみない拍手を贈りたくなります(その原動力が「好き」という気持ちだったところも素晴らしい)

この『ブレイクスルー』は、『RENT』と同様、明日が見えない人にとっての福音の書であり、幸せをつかむためのバイブルのような本になると思います。
それから、『ブレイクスルー』上巻には、今まで性悪キャラとして登場していたキミツくんと歌川さんの友情の秘密を語るエピソードも収録されています。(こちらもまた違う意味で、泣けるお話です。そして、歌川さんの人生の壮絶さがまたひとつ明らかにされる、衝撃的なお話でもあります)
ちょっと大げさかもしれませんが、東日本大震災と原発事故が日本の未来に暗い影を落とし、あるいは、ゲイシーンでもさまざまな悲しい出来事があり、思わず頭を垂れてしまうような…ついつい悲観的になりがちな今の時代、この本こそが、もしかしたら現状を切り開いていくヒントをくれる最高のテキストになるかもしれません。
PVがまた傑作!本当によくできています。今すぐ見てみてください!
INDEX
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
- “怪物”として描かれてきたわたしたちの物語を痛快に書き換える傑作アニメーション映画『ニモーナ』
- 映画『怪物』レビュー
- 恋に翻弄されるゲイの愚かで滑稽で愛すべき姿態をオゾン流にキャムプに描いた大傑作メロドラマ『苦い涙』
- ドリアン・ロロブリジーダさん主演の素敵な短編映画『ストレンジ』
- クラシックの世界のリアルを描いた登場人物がクィアだらけの映画『TAR/ター』
- 僕らはこんな漫画をずっと読みたかったんだ…田亀源五郎『魚と水』単行本
- PrEPについて楽しく学べるポップでセクシーな映画『The PrEP Project』
- ゲイカップルが世界の運命を決める――M.ナイト・シャマランの最新作『ノック 終末の訪問者』
- レポート:『OUT IN JAPAN 2023 Spring 写真展 by LESLIE KEE』『アキラ・ザ・ハスラー 「Here’s Your Playground」』
- 高校生のひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画『あの夏のアダム』
- 中国で男娼として生きる主人公やその周囲の若者たちの群像をせつなく美しく描いた映画『マネーボーイズ』
- 50代以上のゲイの方たちの食事会の様子を通じて人生を映し出した映画『変わるまで、生きる』
- これまで見捨てられがちだった人々をも包み込んで慈しむような素晴らしいゲイ映画『老ナルキソス』
- 驚くべき魂を持った人間の崇高な最期を描いた映画『ザ・ホエール』
- ゲイと女性2人の美大同級生たちの人生模様を料理とともに描くドラマ『かしましめし』
- ゲイである父、娘たち、元彼の人間模様を描き、人間の「尊厳」や「愛」を問う映画『すべてうまくいきますように』
- レビュー:リン・モンホワン『同棲時間』公演記録映像上映+アフタートーク
SCHEDULE
記事はありません。








