REVIEW
10代応援同人誌「IT'S OK!!」
10代を応援する同人誌「IT'S OK!!」。たくさんの人気ゲイ作家の方たちの作品が掲載されていますが、いずれもその思いが伝わってくるような名作ばかり。大人のゲイの方にもぜひ読んでほしい一冊です。

自分は男が好きなんじゃないか…そのせいで学校でいじめられたり、親に勘当されたり、世間に受け入れられないんじゃないか…そんな悩みを抱える10代の子たちのために、ゲイの漫画家・イラストレーターとして活躍する方たちが「IT'S OK!!」というインディーズ・コミック集(同人誌)を発表しました。この同人誌の製作を企画したのは、ワルダクミ★メガネーズ。10代ゲイ応援ウェブサイト「10スタート」を運営するNPO法人SHIP、HaaTえひめが賛同し、そうそうたる作家の方たちの協力を得て、実現しました。

子どもの頃からいつも一緒に柔道をやってきた守と巧。守は巧に特別な感情を抱くようになっていたが、いつしかすれ違うようになり…。
関西弁や柔道という、まるで『G-men』のような野郎テイストのなかに、胸をグッとつかれまれるような物語が展開します。正直、泣けました。

とある休日、カズオは親友の格(いたる)がカフェにいるのを見かけた。そこで格といっしょに過ごしていた年上の男の人はいったい…。
底抜けに明るい格くんというキャラクターは好感度大! カズオくんの親友としての距離感も自然で、いい感じです。

「好きなんだ。ずっとお前のこと、好きだった」と、謙太郎は親友の耕平に告白する。戸惑う耕平。二人はもう、元のように無邪気には遊べなくなり…。
少年たちの繊細な心情が綴られたこの物語は、大人になった「僕」が、あの頃の自分に贈るメッセージでもあります。村田ポコさんの挿絵が、この青春小説を印象深く彩ります。

中学に進学して以来、幼なじみの恵介に無視され続ける青海。理由がわからない恵介の行動は、青海の心をいらだたせていく…
中学生らしい純粋な感じが身悶えするほどかわいらしく、最後のページで思わず胸がキュンとなること間違いナシ。オススメです。

猛(たける)が通う高校に、ひとりの転校生がやってきた。なにかヤバいことをしたらしいと噂になっていた転校生は、なんと猛の小学校の同級生・ハム太郎だった…
独特の落ち着いた空気感のなかに思わず恋しちゃいそうなキャラクターと胸キュンなストーリーを盛り込んだ、野原さんらしさが光る作品です。ゲイなのかそうじゃないのか…どっちともとれる終わり方もイイと思います。
おくらさんと野原くろさんは今回が同人誌初参加だそう。ファンの方は見逃せません!
それから、市川和秀さんの「オトナノ世界」というセクシーなイラスト作品(市川さんのメッセージも添えられています)、ゲイテイスト満載なSUVさんの「ありのままの私を」というマンガ、龍谷尚樹さんの圧巻のイラスト「夏の銀木犀」で締めくくられます。
こうして実際に手に取って読んでみると、「IT'S OK!!」は、それぞれの作家の方たちの思いが詰まった本当にいい本だなあと思います。誰もが思春期の頃(あるいはもっと遅くに)、自分は他の人と違うんじゃないか、家族にも受け容れられず、学校でいじめられたりするんじゃないか、誰も自分の気持ちを理解してくれないんじゃないか…というような思いを抱いたことがあると思います。同性が好きな気持ちを必死に押し殺したり、絶望的な気持ちになったり。そんなとき、誰かが救いの手を差しのべてくれたり、応援のメッセージをくれたりしたら、どんなにうれしいだろう。そういう思いで、心をこめて、書いてくださっているんだと思います。もしかしたらそれは、悩んでいた10代の頃の自分へのエールかもしれません。
そして、同じように思春期の頃の悩みや苦しみを経験をしてきた僕らにとっても、この本を読むことには特別な意味があると思います。「あの頃、こういう本があったらどんなによかっただろう」「人生が変わっていたかもしれない」そう思えるのではないでしょうか。
10代の子たちに読んでほしいのはもちろんですが、大人になったゲイの方たちにもぜひ、読んでいただきたいと思います。
新宿二丁目のコミュニティーセンター「akta」で11月13日~25日(会期中月曜休館)、展覧会「IT'S OK!! EXHIBITION!!」が開催されます。そちらにもどうぞ、足をお運びください。

ワルダクミ★メガネーズpresents 企画同人誌「IT'S OK!!」
B5サイズ
フルカラー表紙、モノクロ本文96P
1,000円(収益の一部が10代ゲイ応援ウェブサイト「10スタート」の運営に寄付されます)
「BIGGYM」で販売中。さらに、11/18に東京流通センターで開催の第15回文学フリマ内の「SUMMER CAMP」ブースでも販売されます。
INDEX
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
- “怪物”として描かれてきたわたしたちの物語を痛快に書き換える傑作アニメーション映画『ニモーナ』
- 映画『怪物』レビュー
- 恋に翻弄されるゲイの愚かで滑稽で愛すべき姿態をオゾン流にキャムプに描いた大傑作メロドラマ『苦い涙』
- ドリアン・ロロブリジーダさん主演の素敵な短編映画『ストレンジ』
- クラシックの世界のリアルを描いた登場人物がクィアだらけの映画『TAR/ター』
- 僕らはこんな漫画をずっと読みたかったんだ…田亀源五郎『魚と水』単行本
- PrEPについて楽しく学べるポップでセクシーな映画『The PrEP Project』
- ゲイカップルが世界の運命を決める――M.ナイト・シャマランの最新作『ノック 終末の訪問者』
- レポート:『OUT IN JAPAN 2023 Spring 写真展 by LESLIE KEE』『アキラ・ザ・ハスラー 「Here’s Your Playground」』
- 高校生のひと夏の恋と成長を描いた青春ドラマにして最高のクィア・コメディ映画『あの夏のアダム』
- 中国で男娼として生きる主人公やその周囲の若者たちの群像をせつなく美しく描いた映画『マネーボーイズ』
- 50代以上のゲイの方たちの食事会の様子を通じて人生を映し出した映画『変わるまで、生きる』
- これまで見捨てられがちだった人々をも包み込んで慈しむような素晴らしいゲイ映画『老ナルキソス』
- 驚くべき魂を持った人間の崇高な最期を描いた映画『ザ・ホエール』
- ゲイと女性2人の美大同級生たちの人生模様を料理とともに描くドラマ『かしましめし』
- ゲイである父、娘たち、元彼の人間模様を描き、人間の「尊厳」や「愛」を問う映画『すべてうまくいきますように』
- レビュー:リン・モンホワン『同棲時間』公演記録映像上映+アフタートーク
- レビュー:リン・モンホワン『赤い風船』『アメリカ時間』






