REVIEW
マンガ『ムチャチョ―ある少年の革命』
第16回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門の優秀賞に輝いた『ムチャチョ―ある少年の革命』をご紹介。ゲイの修道士が主人公で、物語の魅力もさることながら、1コマ1コマが精彩に描かれた美しい作品です。

第16回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門の優秀賞に輝いたのが、エマニュエル・ルパージュのバンド・デシネ『ムチャチョ―ある少年の革命』です。
バンド・デシネとはアーティスティックなタッチのフランス語圏のマンガで、一枚一枚が映画のワンシーンのように繊細に描かれているのが特長です。『ムチャチョ―ある少年の革命』も、最初のページから一気に作品世界に引き込まれていきます。


ガブリエルは村人たちの中でも異質な、浮いた存在です。それはお坊ちゃん育ちの修道士だからというだけではなく、彼がゲイだからです(彼が壁画のために人々の姿をスケッチしていた、そのスケッチブックには、彼が想いを寄せる男の子の裸体も描かれていました)。ゲイであるがゆえに荒々しい(男性的な)村人たちにもあまり溶け込めず、また、カトリックの修道士であるがゆえにゲイであることに罪悪感を覚えながら、独り悶々と絵を描く日々なのです。
後半、この国の矛盾や政府軍の横暴に怒りを覚えていたガブリエルは、傷だらけの体でジャングルを這い回るなかで出会ったゲリラ軍の闘士たちと行動を共にします。時には「ホモ野郎」と罵倒されたりもしますが、ガブリエルは自身の信念を曲げずに行動し、かよわい少年(ムチャチョ=坊主)から立派な青年へと変貌していきます。そして、闘士の一人への愛が芽生えます。二人が愛しあうシーンは、この作品のなかでも最も美しく、幻想的です。
ラテンアメリカのゲイ作品と言えば、映画『蜘蛛女のキス』が有名ですが、政治なんかには全く興味のない(自分を着飾ることに余念のない、お気楽な)モリーナとこの「ムチャチョ」のガブリエルは一見、対照的に見えるかもしれません。が、ゴトウは、ガブリエルの正義感の強さや真っ直ぐな生き様もまた、とてもリアルな(典型的な)ゲイの姿だと感じました。
正直、マンガというよりは画集並みのお値段になっているのですが、見ていただければきっと納得がいくハズ。なぜ作者が主人公をゲイにしたのかがわかるインタビューも掲載されています。

「ムチャチョ―ある少年の革命」
エマニュエル・ルパージュ/訳:大西愛子/飛鳥新社/2835円
INDEX
- 1920年代のベルリンに花開いたクィアの自由はどのように奪われたのか――映画『エルドラド: ナチスが憎んだ自由』
- クィアが「体感」できる名著『慣れろ、おちょくれ、踏み外せ』
- LGBTQは登場しないものの素晴らしくキャムプだったガールズムービー『バービー』
- TORAJIRO 個展「UNDER THE BLUE SKY」
- ただのラブコメじゃない、現代の「夢」を見せてくれる感動のゲイ映画『赤と白とロイヤルブルー』
- 台湾映画界が世界に送る笑えて泣ける“同性冥婚”エンタメ映画『僕と幽霊が家族になった件』
- 生き直し、そして希望…今まで観たことのなかったゲイ・ブートキャンプ・ムービー『インスペクション ここで生きる』
- あらゆる方に読んでいただきたいトランスジェンダーに関する決定版的な入門書『トランスジェンダー入門』
- 世界をトリコにした名作LGBTQドラマの続編が配信開始! 『ハートストッパー』シーズン2
- 映画『CLOSE クロース』レビュー
- 映画『ローンサム』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『ココモ・シティ』(レインボー・リール東京2023)
- FANTASTIC ASIA! ~アジア短編プログラム~(レインボー・リール東京2023)
- 映画『マット』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『秘密を語る方法』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『クリッシー・ジュディ』(レインボー・リール東京2023)
- 映画『孔雀』(レインボー・リール東京2023)
- クィアな若者がコスメ会社で働きながら人生を切り開いていくコメディドラマ『グラマラス』
- 愛という生地に美という金糸で刺繍を施したような、「心の名画」という抽斗に大切にしまっておきたい宝物のような映画『青いカフタンの仕立て屋』
- “怪物”として描かれてきたわたしたちの物語を痛快に書き換える傑作アニメーション映画『ニモーナ』
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