REVIEW
『母さんがどんなに僕を嫌いでも』
歌川たいじさんが、子ども時代のつらいつらい体験を、そして母親からの虐待をいかに乗り越えてきたか、を描いてくれました。世の中のすべてのサバイバーたちに贈る、涙なしには読めない名著です。

『じりラブ』『ツレちゃんに逢いたい』『ブレイクスルー』でツレちゃんとのほのぼのした日常(パートナーシップ)やお友達のこと、そしてゲイプライドというものを、実にラブリーに、感動的に描いてきた歌川さん。マンガのタッチはそのままに、最新刊『母さんがどんなに僕を嫌いでも』では、歌川さん自身の子ども時代のつらいつらい経験が描かれていました。どんなに言葉を尽くしても、その渾身の作品に見合う紹介文なんて書ききる自信がありません…ぜひみなさんに読んでいただきたい、と願うばかりです。(後藤純一)
肥満児ってだけで学校でいじめられるのに、家では親に虐待され、どれだけつらかったか…
しかも、思春期になるとゲイだということが学校中にも親にもバレて、「気持ち悪い」とまで言われ…
ふつうだったらグレたり、いじけたり、心を病んだりしかねない境遇だと思うのですが、歌川さんは違いました。ときどき頭の中で幻聴を聴いたり、過去の記憶がフラッシュバックしたりしながらも、周りの人たちのあたたかさ・友情を糧にして、少しずつ、前向きに生きていきます。そして、周りの人たちを魅了しながら、素敵なミラクルをいろいろ起こしていくのです。
たぶん、虐待というほどではなくても複雑な家庭環境で育ち、苦労した方もいらっしゃるでしょうし、ゲイであるがゆえにつらい思いをしたり(自死を考えたり)、心に傷をもつ方は、本当に多いと思います(この本はそうした「サバイバー」たちへのエールであり、癒しの書です)。そこから傷をこじらせていくのではなく、どうしたら自分とうまくつきあい、幸せへと向かっていけるのか、具体的に描かれているところが素晴らしいと思います。誰もが歌川さんのようなスーパーマンではありませんから、同じように奇跡を起こすことはできないかもしれないけど、きっと前向きに生きていくための勇気が得られるはずです。
いま、失恋や、友人関係や、職場での人間関係や、家族との関係など、何かでつまずいたり悩んだりしている方にとって、大きな力になる本じゃないでしょうか。そして、パートナーや友達、実家の家族…大切な人たちのことをあらためてギュッと抱きしめたくなるような、そんな本です。ぜひ、読んでみてください。
それから、歌川さんだけでなく、ツレちゃんも子どものときに苦労したというエピソードがコラムにさらりと書かれていました。今は愛情あふれる、みんなに祝福されるカップルになって、本当によかったと思います。(ツレちゃんがステージで一生懸命踊る姿には思わず感動させられます。みなさんも機会があればぜひ、見てください!)
INDEX
- ミニマムなのにとんでもなくスリリングでクィアな会話劇映画『アバウトアス・バット・ノット・アバウトアス』
- 異国情緒あふれる街で人と人とが心通わせる様にしみじみと感動させられる名作映画『CROSSING 心の交差点』
- ワム!のマネージャーだったゲイの方が監督した真実のドキュメンタリー『ジョージ・マイケル 栄光の輝きと心の闇』
- アート展レポート:ネルソン・ホー「鏡中花、水中月 - A Mere Reflection of Flower and Moon」
- レポート:グループ展 “Pink”@オオタファインアーツ
- アート展レポート:東京都写真美術館「総合開館30周年記念 遠い窓へ 日本の新進作家 vol.22」
- レポート:國學院大學博物館企画展「性別越境の歴史学-男/女でもあり、女/男でもなく-」
- 実は『ハッシュ!』はゲイカップルに育てられた子どもの物語として構想されていた…25年目の真実が明かされた橋口監督×田辺誠一さんによる映画『ハッシュ!』スペシャルトークイベント
- レポート:短編集「Meet Us Where We’re At」上映会
- レビュー:BSSTO「世界の・周りの・私のジェンダー」を見つめるショートフィルム特集
- たとえ社会の理解が進んでも法制度が守ってくれなかったらこんな悲劇に見舞われる…私たちが直面する現実をリアルに丁寧に描いた映画『これからの私たち - All Shall Be Well』
- おじさん好きなゲイにはとても気になるであろう映画『ベ・ラ・ミ 気になるあなた』
- 韓国から届いた、ひたひたと感動が押し寄せる名作ゲイ映画『あの時、愛を伝えられなかった僕の、3つの“もしも”の世界。』
- 心ふるえる凄まじい傑作! 史実に基づいたクィア映画『ブルーボーイ事件』
- 当事者の真実の物語とアライによる丁寧な解説が心に沁み込むような本:「トランスジェンダー、クィア、アライ、仲間たちの声」
- ぜひ観てください:『ザ・ノンフィクション』30周年特別企画『キャンディさんの人生』最期の日々
- こういう人がいたということをみんなに話したくなる映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』
- アート展レポート:NUDE 礼賛ーおとこのからだ IN Praise of Nudity - Male Bodies Ⅱ
- 『FEEL YOUNG』で新連載がスタートしたクィアの学生を主人公とした作品『道端葉のいる世界』がとてもよいです
- クィアでメランコリックなスリラー映画『テレビの中に入りたい』
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