REVIEW
田亀源五郎『エンドレス・ゲーム』
田亀源五郎さんの新刊『エンドレス・ゲーム』が発売されました。いつもの田亀さんの作品とは少し異なり、「ハード」ながらも「セーフ」で、感情移入しやすい作品になっています。ぜひお読みください。

世界的なゲイ・エロティック・アートの巨匠である田亀源五郎さんの新刊『エンドレス・ゲーム』が発売されました。いつもの田亀さんの作品とは少し異なり、「ハード」ながらも「セーフ」な、それでいてとてもエロティックな作品になっています。レビューをお届けします。(後藤純一)
最近、田亀さんの作品の外国語版の出版が相次いでおり、今回の表題作「エンドレス・ゲーム」は、初めから海外出版を意識して描いたものだそうです。内容も海外(特にアメリカ)の基準に合わせた「ハード」ながらも「セーフ」なものにしようということで、非合意のセックスも、合意のうえでのSMも登場しない、それでいてとてもエロい、SM者でなくても楽しめる「ゲイ・ポルノグラフィの最大公約数」的な作品を描きたかったんだそうです。
一読した感想は「超エロい!」。「淫乱上等!」という前向きさが前面に出ている「気持ちのいい」作品でした。
主人公のアキラは坊主でマッチョ、ちょっとイモ入ってるやんちゃな感じで、この世界ではとてもモテそうな風貌。そしてセックス大好きな体育会系の学生です。よく通っているハッテン場で「ガサ入れだ、裏口から逃げろ」と店主に言われ、ケツ割れ一丁の姿で外に出ると、そこには警察官が。しかしその警察官も実はお仲間で…
警察官とハッテン場の店主は実はグルで、アキラはある人物の策略にハマり、どんどんエロ業界にどっぷり漬かっていきます。見方によっては、汚い裏社会。なのですが、アキラは、(今回の『エンドレス・ゲーム』に併録されていた「転落の契約」や、名作「銀の華」などのように)借金のカタに性奴隷となったりするのではなく、純粋にキモチいいから、誘われるがままに何でもやっていくのです。「そこに山があるから登る」的なノリでチャレンジし、軽々とクリアしていきます。セックスが大好きで、天職だからセックスワークに就く。絵面はハードですが、潔いし、清々しい。そこが今までの作品と決定的に異なっています。
田亀さん自身、ポルノグラフィにおけるセックスというもの「批評性」をもって描いている、とあとがきで書いています。物語の構造としては、主人公が「堕ちていく」というものですが、田亀さんは彼を「罠にはまっていく愚かな若者」として描いたつもりはない、としています。
たぶん今の時代、ちょいエロイベントやハッテン場に足を運んでみたことがある方はとても多いと思います。初めは恐る恐るだったとしても、「なんだ、意外と大丈夫だった」と思ったり、キモチよかった、楽しかったと感じてハマったり。そうしてだんだんと、人前で脱ぐのが平気になったり、その場限りのセックスをするのが平気になっていく(ハマっていく)のです。そういう意味で、この作品を読んで違和感なくアキラに共感したり、「これは自分のことだ」と思える方も多いでしょう。
逆に、この本を読んで、自分もアキラのようになりたい!と思う方すら、いらっしゃるかもしれません。
性の探求は実に奥深く、アキラという求道者も、そのうちSMやフィストにハマっていくでしょう。
そしていつか、アキラ自身も、一周して新しいアキラを発掘し、育てていくのです。まさにエンドレス・ゲームです。
この純粋にポルノやセックスを楽しむ世界では、誰も傷つきません(傷つけるのは性を嫌悪する社会です)。ただ歓びだけが広がっていきます(お金は介在するにしても)。そういう世界を「エンドレス・ゲーム」はまるごと肯定しています。そこがイマドキだし、イイ!と思いました。

『エンドレス・ゲーム』
田亀源五郎:著/ポット出版/希望小売価格:2400円+税
INDEX
- Netflixで今月いっぱい観ることができる貴重なインドのゲイ映画:週末の数日間を描いたロマンチックな恋愛映画『ラ(ブ)』
- トランスジェンダーのリアルを描いた舞台『イッショウガイ』の記録映像が期間限定公開
- 宮沢賢治の保阪嘉内への思いをテーマにしたパフォーマンス公演「OM-2×柴田恵美×bug-depayse『椅子に座る』-Mの心象スケッチ-」
- 絶望の淵に立たされた同性愛者たちを何とか救おうと奮闘する支援者たちの姿に胸が熱くなる映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』
- スピルバーグ監督が世紀の名作をリメイク、新たにトランスジェンダーのキャラクターも加わったミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』
- 同性愛者を含む4人の女性たちの恋愛やセックスを描いたドラマ『30までにとうるさくて』
- イケメンアメフト選手のゲイライフを応援する番組『コルトン・アンダーウッドのカミングアウト』
- 結婚もできない、子どももできないなかで、それでも愛を貫こうとする二人の姿を描いたクィアムービー『フタリノセカイ』
- 家族のあたたかさのおかげで過去に引き裂かれた二人が国境を越えて再会し、再生する様を描いた叙情的な作品――映画『ユンヒへ』
- 70年代のゲイクラブ放火事件に基づき、イマの若いゲイと過去のゲイたちとの愛や友情を描いた名作ミュージカル『The View Upstairs-君が見た、あの日-』
- 何食べにオマージュを捧げつつ、よりゲイのリアルを追求した素敵な漫画『ふたりでおかしな休日を』
- ゲイの青年がベトナムに帰郷し、多様な人々と出会いながら自身のルーツを探るロードムービー『MONSOON モンスーン』
- アウティングのすべてがわかる本『あいつゲイだって ――アウティングはなぜ問題なのか?』
- ホモソーシャルとホモセクシュアル、同性愛嫌悪、女性嫌悪が複雑に絡み合った衝撃的な映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
- 世紀の傑作『RENT』を生んだジョナサン・ラーソンへの愛と喝采――映画『tick, tick… BOOM!:チック、チック…ブーン!』
- 空を虹色に塗ろう――トランスジェンダーの監督が世界に贈ったメッセージとは? 映画『マトリックス レザレクションズ』
- 人種や性の多様性への配慮が際立つSATC続編『AND JUST LIKE THAT... セックス・アンド・ザ・シティ新章』
- M検のエロティシズムや切ない男の恋心を描いたヒューマニズムあふれる傑作短編映画『帰り道』
- 『グリーンブック』でゲイを守る用心棒を演じたヴィゴ・モーテンセンが、自らゲイの役を演じた映画『フォーリング 50年間の想い出』
- ショーや遊興の旅一座として暮らすクィアの生き様を描ききったベトナム映画『フウン姉さんの最後の旅路』
SCHEDULE
- 10.18九州レインボープライド






