REVIEW
田亀源五郎『童地獄・父子地獄』
田亀源五郎さんの最新作品集『童地獄・父子地獄』がポット出版から発売されました(店頭に並ぶのは14日からです)。『バディ』誌に連載されていた作品を集めた作品集で、表題作(加筆)のほか短編が3本収められています。世界の田亀源五郎作品の重みを、ゲイ・エロティック・アートの素晴らしさを再確認しましょう。

田亀源五郎さんの最新作品集『童地獄・父子地獄』がポット出版から発売されました(店頭に並ぶのは14日からです)。『バディ』誌に連載されていた作品を集めた作品集で、表題作(加筆)のほか短編が3本収められています。世界の田亀源五郎作品の重みを、ゲイ・エロティック・アートの素晴らしさを再確認しましょう。(後藤純一)
日本を代表するゲイコミックの巨匠であり、ゲイ・エロティック・アートの第一人者である田亀源五郎さんが、『禁断』に続き、ポット出版から作品集を発表しました。
田亀源五郎さんは『バディ』誌でゲイ漫画史に残る金字塔『銀の華』を連載し、『G-men』誌の表紙絵や『プライド』などの連載を手がけただけでなく、パリで個展が開催されたり、作品がフランス語版で発売されたり、ニューヨークやシドニーなどでも作品が展覧されるような世界的なアーティストです。また、ゲイ雑誌で活躍してきたアーティストたちの歴史を解題した『日本のゲイ・エロティック・アート』の編纂を手がけ、村上隆さんとも対談するなど、以前はアンダーグラウンドでしかなかったゲイ・エロティック・アートの社会的地位を高める仕事にも携わっています。
『禁断』と同様、函入りになっており、表紙絵はこの本のために田亀さんが描き下ろしたもの。そして、この表紙絵に合うよう、和紙のような手触りの「きぬもみ」という紙が使用されています。本を愛する人たちの手になるこだわりのクオリティが感じられます。
表題作の『童地獄・父子地獄』は、『バディ』らしく、若くて締まった体の男の子が主人公。戦国時代、母親を領主(殿様)に奪われた恨みから復讐しようとするも捕われの身となり、ありとあらゆる陵辱を受ける、それだけでなく、彼の父親もまた捕われ、あろうことか父子で嬲り者にされるという、この世の生き地獄を描いています。果てしない苦行に思えたその地獄が終焉を迎えるとき…時代絵巻的な芸術作としての極みに達し、深い感動を喚び起こします。
後藤は巻末に収められた現代モノの『告白』がとても好きでした。チンピラに呼び出された熊系の刑事が、気づけばベッドに手を縛られ、身動きできない状態に…というストーリーですが、シブい男の世界に萌えつつ、チンピラの不器用な愛の表現に思わず共感させられます。『仁義なき戦い』的な映画に入っていてもおかしくない、ホロリとさせられる名作でした。
この『童地獄・父子地獄』がいたずらに劣情をそそるだけのゲイSM漫画ではないということは、読んだ人たちにも伝わるはずです。
東京都知事が青少年健全育成条例の名の下に同性愛作品をも規制しようとする意図を仄めかした今(そして青少年健全育成条例改正案が可決されようとしている今)、この本を読む感慨はひとしおです。
世界の田亀源五郎作品の重みを、ゲイ・エロティック・アートの素晴らしさを再確認しようではありませんか。
この作品集を世に送り出したポット出版のみなさん(ノンケの方たちです)の心意気にもまた、拍手を贈りたい気持ちです。(ポット出版はこれまで伏見さんの著作やパレードの本など、同性愛に関するたくさんの書籍を発行してきた、素晴らしくゲイフレンドリーな出版社です)
田亀源五郎blog
http://tagame.blogzine.jp/tagameblog/
ポット出版
http://www.pot.co.jp/
INDEX
- すべての裸は素晴らしい――ブロードウェイミュージカル『フルモンティ』
- セクシーさもありつつ胸が締め付けられるような映画『君の見る世界をなぞる』
- マーティン・シャーマンが『BENT』より前に書いたラブリーなゲイカップルの演劇作品『パッシング・バイ』
- 性的指向とは何か?という根源的な問いに迫る目からウロコな本:『パンセクシュアル宣言』
- CBC「ハートフルワールド」第22話「東京・新宿二丁目編」がなかなかよかったです
- アート展レポート:西村宏堂展「Cells - 細胞 -」
- かつてこんなにゲイゲイしいバレエがあったでしょうか…ベルリン国立バレエ『ヌレエフ』レビュー
- メキシコから届いたハッピーでキラキラなトランス・ドキュメンタリー映画『きっと青春大革命!カルラ8年の記録』
- 涙、涙の真実の物語:映画『シークレット・オブ・ミー』(レインボー・リール東京)
- バンパイアというマイノリティの悲哀と愛をクィアになぞらえて描いた異色作:映画『シレンシオ』(レインボー・リール東京)
- 奇想天外にしてノンジャンルな、まったく新しいクィア(ゲイ)映画『ユースフル・ゴースト』
- マレーシアで奮闘する人たちの姿を追った感動のドキュメンタリー映画『クィア・アズ・パンク』(レインボー・リール東京)
- 最高にパンクでエロティックなBruce LaBruce版『テオレマ』:映画『来訪者』(レインボー・リール東京)
- 恋する男子たちの姿に胸キュン…心に残る名作映画『せき止められた水』(レインボー・リール東京)
- ゲイの警官が主人公のセクシーなクライム・ラブストーリー『ボディ・ブロー』(レインボー・リール東京2026)
- 当事者でなければ作り得ない、トランスジェンダーのリアルに迫った傑作短編映画『トランジット・デイズ』
- アート展レポート:2人展 男たちの昼と夜
- 最高に素敵な国⺠的ドラァグクイーン“パンティ”の生き様を描いたドキュメンタリー映画『クイーン・オブ・アイルランド』
- アート展レポート:Queer Art Exhibition
- 日本のLGBTQの運動史が初めて一冊の本になりました:『LGBTヒストリーブック日本編 平等を求めて声をあげた人々の闘い』
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